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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
385.一筋の光明

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「なるほどね~、この羽、『鶴の尾羽』でねえぇ」

 感心したのか未だに信じられないのか、意識を取り戻した善悪は居間の座卓の上に置かれた一枚の羽をしげしげと見守りながら言うのであった。

 コユキが答える。

「そうなのよ、それ持って帰ってきたら誰にも気づかれなくてさ、アタシ怖くなっちゃったのよぉ、おお、ぶるる、よぉ!」

 善悪が眉間の二本皺をより深くして聞いてきた。

「それで、さっき言っていた僕チンにも話し掛けたのに気が付かなかったってのは本当なの? でござる!」

 コユキは慌てて先程し終わった話を重ねて肯定するのであった。

「そうよ、帰ってきたら善悪がお掃除してたんだもん、大きな声で言ったわよぉ、ただいまって! でも気が付かなかったわぁ、ショックだったわよ……」

「えっ? ショックだったの?」

「そりゃそうでしょぉ! 苦労して帰ってきてさ、目の前にアンタがいたから元気いっぱいに帰還報告したのに無視されたんだから…… 大好きな相手によ、考えても見てよ! あっ!」

「だ、大好き? い、今大好きって、い、言ったの? コユキちゃん」

 善悪は聞き逃してはいなかった、焦燥しょうそうしきったコユキの本心と思われる一言を……

 しかし、コユキはコユキである、即座に『言い間違い』を糾すただすのであった。

「あ、いや、そうだ、大スケベな相手に、よ! 言い間違えっちゃったわ、勘違いしないでよね! 大スケベな善悪ぅ!」

 善悪は単純馬鹿であった。

「なんだ、言い間違いか…… シュン」

 単純馬鹿のワザとらしいシュンはどうでも良いとばかりにトシ子が言った。

「まあ、その話はその話として、なんか凄いのが出てきたのう? この、アーテハクト…… ちょっと格が違うんじゃなかろうか? のう?」

 この言葉にシュン太郎こと善悪が、復活を果たして答えるのであった。

「ゴホンっ! 他、確かに…… 正直ライコーシリーズ以上の効果でござるよ、これって! んでもこれって朗報でござろ? 最高だと思っていたライコー様たちよりエグイアーティファクトがまだまだあるって事が証明されたのでござるから…… こりゃ色々捗るはかどるでござろ? どう? どう? 今どんな気持ち? って事でござろぉ?」

 アスタロトがいった。

「それな!」

 コユキも続いた。

「アタシ明日図書館行って、『日本の昔話』借りて来るわね!」

 その他のメンバーも勝ち目の見えなかったバアル戦、背後に見え隠れするスプラタ・マンユでさえ見紛う偽ルキフェル戦に一筋の光明を見出したのだろう、嬉しそうな顔をしていた。

 何日か前、何の気なしにコユキの言った言葉、今できる事に集中する、それが今、突破口に繋がりそうになった瞬間であった。


 近所で檀家の工務店さんと、サッシ屋さん、何故か四桐シキリ鯛男タイオも交えた本堂修繕の打ち合わせを終えた、善悪の横に歩み寄ったコユキは勇気凛々で声を掛けたのであった。

「んじゃあ、行ってくるわよ善悪! 猿蟹合戦のアーティファクト…… 必ず持って帰るわ!」

 善悪も期待を込めたどこか緊張した顔で答えるのであった。

「了解! 無事任務を果たして、無傷の帰還を遂げる事を心より願う物である!」

 ビッシィと敬礼を交わし合った二人は最早、再び視線を交わす事無く、それぞれの仕事に戻っていくのであった…… また逢う日まで……

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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