見出し画像

堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
323.碓井貞光の迷宮

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 その後カイム経由でオンドレとバックル、虎大コダイ竜哉タツヤ兄弟の分かり易すぎる特徴を動物達に伝えたコユキは、発見した際に彼らに渡すべき連絡先として、念のために持って来ていたチラシの切れ端に幸福寺の住所を記すとウサギ、ヤマネ、リス等の、可愛らしさ担当の小動物たちに渡していくのであった。

 一連の作業を終えると、獣や鳥達は一旦整列し、ビッシィ! と姿勢を正した後、三々五々、八方に散って行くのであった。

 満足気なコユキの横にはキンピカキンのカイムが、目の前には三頭の巨大月の輪熊が残されたのであった、そろいも揃って三メートル前後の化け物達だ。

コユキは呟いた。

「そっかぁ、確かにアンタ等の図体じゃぁ人の生活圏での探査任務なんて出来ない、いや困難よねぇ、んじゃ一緒に来るかね? 碓井ウスイさん所に?」

「「「ガフォォゥ」」」

 嬉しそうに答えた若いオスと少し年上っぽいリボン付きのメスを先触れのように先行させながら、コユキとカイムの二人は、ボス的な『弾喰らい』、命名コユキの『タマちゃん』の背に揺られて優雅に次のクラック『碓井ウスイ貞光サダミツの迷宮』を目指して進んでいくのであった。


「ふぅ、ここが碓井さんなわけね……」

「ガウ!」

 コレ位ならコユキでも理解できる。
 タマちゃんが答えたのは肯定の意味であろう。
 もう五回目とは言え、やっぱりわずかな緊張を表に浮かべながらコユキは言った。

「うん! じゃぁ行こっか! 皆覚悟は良いわよね?」

「「「ガウ…………」」」

 つい今しがた元気に返事を返したタマちゃん含む三頭が、らしくない素振で後退るあとずさるのであった。
 小刻みに震えて腰なんか引け捲くっている。

「? どうしたのアンタ等、若しかして恐いの?」

「ガゥ……」

「ほえ~、恐いんだそうですよコユキ様! デカイ図体してんのに情けないねぇ! キョロン」

「ふぅん」

コユキが不思議そうな顔で考え込んでいると、ここん所静かにしていたライコーの声が届いた。

『なぁ、コユキ! サダミツは麿達と違って『神』たるあの御方に仕える前から、オヌシん所にいるような、悪魔と契り合って力を得た、そのぉ、結構邪悪なヤツじゃぞぃ…… 気を付けて行くのじゃぞぃ?』

『そうだよ! それで危険察知能力の強い熊さん達が恐れてるんだよ、きっと! おばさんも気をつけてね!』

『アイツは考えている事が判らない所がある! コユキ! 慎重に、な?』

『…………』

 公時きんとき以外の皆は貞光の変態性(悪魔属性)にビーケアフルとか言っている……
 コユキは不安を振り払うよう様に宣言するのであった。

「りょっ! 任しときなさいっ! んじゃタマちゃん達はここらで待っていれば良いわよ」

 そう言ってカイムとアーティファクトだけを供にして出発するのであった。
 テクテクテクテク、歩き続けた道程には罠の類など一切無く、只々真直ぐな一本道が続いていたのである。

 長いような短いような、時間間隔が狂わされるような暗い通路を歩き続けてきたコユキは、漸くようやく辿りついた社を前にして、思わず愚痴めいた言葉を口にしてしまうのであった。

「はぁあ~、今回ってヤケに長かったわねぇ! 何か飽きたわ、こいつ速度感とか判ってないわよネェ? どう? 同意を求むんだけどぉ?」

『『『その通り! 同意しますよ!』』』

『…………』

 速度感の無さにすら沈黙を守り続ける公時。
 他のアーティファクト勢はイエスマンの様相を隠す気も無いようであった。

「んじゃ行こっか?」

『『『リョッ!』』』

『…………』

 いつまでも、無言を貫いている金時に業を煮やしたコユキは無視する事にして、社の扉をガツガツ叩き続けながら声を大にするのである。

「コンチャー、誰かいますかぁー! コンチャー! コンチャーアァァ!!」

***********************
拙作をお読みいただきありがとうございました!

この記事が参加している募集

スキしてみて

励みになります (*๓´╰╯`๓)♡