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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
143.ハートフルビート

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 あれれ? おかしいな?
 確かにこのフェンスの上に置いた筈なんだけど……? あっ!
 
 コユキは見つけてしまった!
 今まさにここから離れようとダッシュしているオッサンの背中を!

 ん、んんんんん? あれれ、あれってさっきのレゲエのオッサンじゃないの?

 それがコユキの正直な感想であった。
 確かにぶっ倒れて前後不覚に陥っていたオッサンに見えた、一瞬は!
 しかし、意外に鋭いコユキは見抜いていたのだ、故に思ったのだ、

────ち、違う! さっきのレゲエとは別の個体? そう別のホームレ…… 自由人だった、か、くっ! 最早、時既に遅かった、のか!

 コユキが目にした、元色が何色だったか判別不可能なオベベに身を包んだ、レゲエ(二号)は、トンズラ~宜しく、遥か遠くにバックレようとしていた。
 万事休す!(残念)

 そうコユキですら諦観ていかんした瞬間、彼女の脳裏に慣れ親しんだ、安心できる声が響いた。

即時配達ウー○ーイーツ

 直後、絶望しかけたコユキの両手の中に、別個体の、ホームレ…… グフングフン! 自由人が持ち去ったはずのツナギと、キャップ(大事)、スマホと財布が戻って来ていたのである。

「うひょぉぅ! やるじゃない善悪エ~ンドオルクス君!! グッジョブ! 」

 喜び勇んでコユキはツナギを着込み、キャップを被って装備を整えるのであった。

「オエッ! ケエセッ! 」

ん? なんだ? このおっさんは?

「ゾベ、おらブ服だドゥ、ボモ、ドーボーが、ぼい、ぼばべ、ドーボーだろ! ゴノビャボォ! 」

 うん、ドーボーってのが何の事かは分かんないけど、切れるよね、だってコユキだモン、何より…… 臭いし!! ってか、茨城大丈夫なのかよ?

「うるさいっ!! アタシの服だろがっ! おい、オッサン! ドーボーじゃ無ーだろ! ド・ロ・ボ・ウ! だろっ? んで? あんだって? アタシがドロボウ? ざけんじゃねえっぞこのジジイ! 」

 あ──あ──、大人げ無いなあぁ~、そういう方って、そんな感じで言ってくるもんなんだよ、こゆきちゃん!
 自分に自信の無い中年男性とか、運動苦手な弱虫君だって、車に乗ると強気になっちゃって、根拠もなくあおっちゃったりするじゃんねぇ? 弱虫に正論言っても伝わらないんだってぇばよっ!
 
 そんな観察者の声は当然聞こえる訳もなく、コユキの迫力にビビッた、二人目のレゲエは、

「オ? オェ! ンゴンゴ! アイウエラ! ゥ! ゥッ! 」

「もう良いよ! ……去ね! 」

「ひっ! ひいぃっ! アンボアンボ、ヒゥアエラ! ドンヴィっダンっ! 」

 とか、訳ワカメなハートフルビートを刻みながら、リズムに合わせて去っていったのであった、ふうぅ~う、一件落着、かな?
 ブラックバスが異常繁殖なのは聞いていたけど、令和の時代にあんなおっさん達が繁殖しているとはチト、ヤバくないかね? 知らんけど…… な私、観察者であったが、コユキは違っていたようだ。

「あんた! 市役所とか行って相談してみなさいよ! 」

 去っていくレゲエの背に声を掛けていた。
 対岸のレゲエもその声に反応したのかこちらを見ている。

「よしっ! さて、帰るかね♪ 」

 胸元の隠しポケットの中で、赤い石が緑に光って同意を主張しているようだ!
 やる事は全てやったと言う満足感を満面に浮かべ、コユキは霞ヶ浦を後にするのであった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!



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