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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
465.巨人と小人 ①

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆


 グシャっ!

 話し方をガラリと変えてコユキに向けて凄んだバアルは、次の瞬間巨大な足に踏み潰されていた。

 巨人に変じたコユキの身長は大体八メートル半位であり、横にはいつも以上に悪い笑顔を浮かべる相棒、善悪がゲルドの『巨人化の小槌』を握る姿があった。

 大体五倍の大きさになったコユキの胸と大事な所は、伸縮性に優れたニットの下着にしっかりと隠されていた事も併せてお伝えして置こう。

 編目が限界まで伸び切ってしまっている為、多少変な物が見えたりするかもしれないが、好んで見たがる物好きもいないと思うので、ミッドナイトへのお引越しの必要は無いと思う、良かった。

 一メートル以上の足の平を持ち上げて覗き込むコユキは思わずえずくがまだ声は出なかったので、ここも私が読唇して通訳するとしよう。

『おえっ! 漫画みたいにペッタンコかと思ったのに、うわあ、内臓とか脳漿のうしょうとかもあんのね…… きもっ!』

 だそうだ……

 プレスされクラッシュした、バアルだったグロ物質は見る見る間に元の少年の姿へと戻り、コユキ巨人をめ付けながら言うのであった。

「フン! こんな攻撃が魔神に通用するとでも思ったか、馬鹿め、僕の再生速度を舐めるなよ! どうやってスキルを使っているかは――――」

 グシャっ!

 再度潰されるバアル、そして再生からの言葉。

「何度やっても同じ事だ、とは言っても貴様らの様な凡庸ぼんような――――」

 グシャっ!

「まだ話している途中――――」

 グシャっ!

「おい――――」

 グシャっ!

「ば――――」

 グシャっ!

「」

 グシャっ!

 ……

 グシャっ! グシャっ! グシャっ! グシャっ! グシャっ! グシャっ! 

 ……………………

 十数秒と聞いていたのだが、幸福寺で本体のゲルドの魔核が少し赤みを取り戻し始めている効果だろう、数分間の巨人化に成功していたコユキがシュゥ~と縮まって大切な所も確りしっかりと隠れた、本当に良かった♪

「どういう訳か貴様は、魔力を相殺しスキルの為の発声を阻害するこの領域内でも自由自在に魔法やスキルを使えるらしいな! やはりわらわがまだ知らなかった魔神、それも小惑星クラスであったか…… ふふふ、中々恐ろしい力を持っている事は認めよう」

 復活したバアルは元々のサイズに戻ったコユキに言ったが、その姿や声は最初の美少年、ロビー君だったか? とは似ても似つかぬ亡者っぽい感じになっていたのであった。

 具体的には、やせ細った顔に眼球や歯、眉毛の類は見当たらず骸骨に薄い皮が張り付いているだけになっていて、頭髪の消えた部分には短い角のような突起が幾つも生えていた。

 最早、衣服の類と地肌の区別はつかず、全体に灰色ばかりになった全身の中で、穴だけになった両目の奥に赤い光だけが不気味にこちらへ向けられていた。

 総入れ歯を外した老人の様な口には既に唇も無くなっていたが、その状態でモゴモゴする事も無く流暢に話を続けるバアル。

「だが、お前の仲間は果たしてどうかな? お前に比肩ひけんするような能力があるだろうか? 魔神である愚弟ぐていアスタロトならば反射の力を持っているが…… お前の仲間には、いたなぁ~、人間の小僧がっ!」

 言い終えると同時に善悪に向かって一気に距離を詰め、襲い掛かろうとしたバアルであった。

 次の瞬間痛みに悶える声が広間の中に響き渡ったのである。

「痛いっ! 痛い痛い痛い痛い痛い! やめろ! 痛い痛い、何だ! まるで針で刺された様な、痛い痛い痛い」

 言いながら広間の反対側まで走っていったバアルは荒い呼吸で全身を擦りながら、何かしたであろう相手、『一寸法師の針』のお椀を頭に被った善悪を睨みにらみ付けたのである。 

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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