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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
364.耳をそばだてる

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 幸福寺の門をくぐってすぐに誰かが話している声が聞こえてきた。
 境内の開けた場所はまだ先だし、参道から脇に入った墓地へと続く木立の中から聞こえて来るようである。

「? 誰だろ?」

 何となく気になったコユキは念の為に足音や気配を消すためにスキルを使って接近する事に決めるのであった。

加速アクセル

話し声にほど近い太めの木の陰に身を隠したコユキは耳を澄ませる、どうやら声の主はアスタロトの様だ。

「それでな、自分達を慕う人間のために何をしていいのか分からなかったルキフェルは我に頼るしかなかったのだ、まあ、今のコユキや善悪を見れば想像に易いだろうがな、闘いや魔力量なんかでは抜きんでていても如何せん知識が足りないだろう? ほら、我と比べてさっ! バアルに至っては議題すら分かっていない感じのマニャック野郎だろ? 仕方なく我が教えてやったわけだよ、『倒した巨獣達の体から宝石を集めてオゾン層を再生しよう!』ってな、結果は目論見通りになり、今現在多くの命が日中でも屋外を闊歩かっぽ出来てるって訳なんだぞ!」

もう一つの声が答える、この声は『努力の徳』アセディアだろう。

「はあ、そうなんですね? しかし何故その話を私たち三人に?」

「おかしいよね! それもわざわざこんな所まで呼び出したりして、怪しいよ!」

こっちは『慈善の徳』アヴァリティアらしい、さらに聞こえてきたのは女性の声音に男喋り、考えるまでもなく『慈愛の徳』インヴィディアの物であった。

「遠回しな言い方は性に合わねーんだ、アスタロトの旦那よぉ、言いたい事があるんならはっきり言ってくんねーかな?」

 うん、この意見には私も同意だ、多分コユキも同様だろう。
 アスタロトはニヤリと悪そうに微笑むと、答えを話し出すのであった。

「流石に元大罪の中でも頭の切れると言われた三人だな、話が早い! ほら、一昨日の座学でさ、良い所をルキフェルとスプラタ・マンユに持って行かれちゃったじゃないか我…… 最後はバアルの話と格好良いぞトシ子、って感じだったしさ~、だから、まだ続きがあるよって、アスタが賢かったよって、何て言うの? 好感度上げて欲しいな、とか思ったんだけどね、三人なら協力してくれるかな? って思ったんだけどね、ダメかな?」

 何かアスタロトがらしくないセコイ依頼をしている…… 幻滅だ…… アヴァリティアもそう感じたのだろう、疑問をそのまま口にするのであった。

「何からしくないっていうか変でしょ、それ? ムスペルヘイムでの見た目なんか考えたら、好感度とか気にしないタイプだったと思うんだけど? それに何でこの三人?」

「うむ、そこら辺は説明するけど、その、断った場合でもこれから話す内容は、えと、内緒にしてくれないか?」

「? うん、良いけど、良いよね? アセディア、インヴィディア?」

「まあ、いいですけど」

アセディアが答え、インヴィディアが首肯しゅこうして見せ、それを確認したアスタロトが説明を始めた。

「実はな、我とトシ子の仲なんだけどな、まだはっきりと家族から認められていないんだよ、これが。 特に長男、ヒロフミがさ、ゲームばっかりやっててロクに口もきいてくれない有様でなあ、せめて他の家族の好感度を上げて置きたいんだよ、だけどさ、女性陣にこんなの聞かれたら『ダッセ! マジかよ? キモイわぁ』とか言われそうだろ? その点お前らだったら見た目は兎も角男同士じゃないか、分かってくれるんじゃないの? グラとかイラとかガチ真面目だからこういうの嫌がりそうだろ? なあ、頼むよ~、協力してくれよ~」

 なるほど、そこそこダサい話だな……
 こそこそ相手を選んで相談するのも当然と言えよう。

 選ばれた男性陣、うち二人は肉体的には女性化しているが、可哀そうなアスタロト君の依頼に応じて今後協力してくれるらしい。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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