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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
309.スキル名

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「うむ、大分使いこなせるようになったのぅ、訓練やって良かったじゃろ? 善悪」

「うん、うるせぇなぁとしか思っていなかったのでござるが、こうしてはっきり結果が出ると感謝しかないのでござる! 薦めてくれてありがとう、クソババア!」

「ああっ?!」

「し、師匠でござったぁ、ゴメンなさい、言い間違えました」

 君臨する魔神になっても、まだまだトシ子の事は恐いらしい、トラウマってヤツだろう。
 プンプンしているトシ子の前で、大きな体を屈めて何度も頭を下げている善悪、そんな二人を笑顔で見つめながらアスタロトは言うのであった。

「何はともあれ、これで善悪とコユキの魔力、聖魔力と言ったか? そのアンバランス問題は解決だな。言ってみればコユキは巨大な石油タンカーに直結された火炎放射器、善悪は海から直接吸い上げ続ける放水ポンプって所だな? 元の単一な存在だった時には遠く及ばない力ではある物の、生命溢れるこの星の上では無敵に近い能力と言えるだろうな、もちろん二人力を合わせてだがな」

善悪が興味津々な様子でアスタロトに聞いてみた。

「なあアスタ、某とコユキ殿がルキフェルだった時って、その、どんな感じだったのでござるか? スキル名とかあったの?」

アスタロトが答えてくれる。

「ん? 捻りひねりも何にも無く『中性子星ニュートロンスター』だったぞ? 因みちなみに格好良い我は『氷炎の支配者ヒートルーラー』だぞ? ふふふ」

「バアルは? やっぱ神殺しだったでござるか?」

「いや、その呼び名は周囲が勝手にそう呼んでいただけだな、あいつ自身は『魂の牧童ソウルシェパード』と名乗っていたな」

善悪はやや不機嫌そうな顔を浮かべて言った。

「むうぅ、みんな格好良いのでござる…… オルクス君が『神速グリゴリ』だしあの馬鹿(アヴァドン)でも『蹂躙カリンマ』とか言ってるのに、僕チンは『変成器トランスフォーマー』か…… なんかなー、トホホでござるよ」

アスタロトは納得の笑みを浮かべながら善悪の肩に手を置いて言う。

「確かに通り名みたいな物だからなあ、いっそ自分で新しく名付ければ良いじゃないか? 無意識でやっていた以前より格段成長したんだから良いんじゃないか?」

「え、良いのでござるか?」

意外な提案に嬉しそうに聞き返す善悪に対してアスタロトは悪魔らしいニタリとした笑みを一層深くして言うのであった。

「良いに決まっているだろう? 何しろ我々は?」

善悪はハっとした表情を浮かべた後、アスタロトと同じ様に微笑みながら呟く。

「『神』、だったでござるなぁ」

 頷いたアスタロトは、隣で早速新通り名、スキル名しくは自身の本質を表す呼び名を考えている善悪を見つめつつ待つのであった。

 暫ししばし目を堅く閉じ腕を組んで『はっちゃけ~はっちゃけ~』とやっていた善悪は、やがてハッとした表情で叫んだのであった。

「決まったでござる! 僕チンの新たなスキル名、いいや二つ名は『持続可能魔力エスディージーズ』! 君に決めた! でござるっ!」

シ――――ン…………

 トシ子がやや心配そうな顔で聞いている。

「善悪や、あの、本当にそれで良いのか、ぇ?」

善悪は自信満々で答えるのであった。

「勿論でござる! 最近流行の言葉でござろ? テレビで良く聞くし格好良いのでござる!」

「ああー、そうかねぇ…………」

アスタロトが場の空気を一転させるように笑顔で大きな声を出す。

「まあ、そのエジデースーズが何だか分からんが、善悪本人がそれで良いなら良いじゃないか! なあみんな、共に善悪の新たな二つ名の誕生を喜ぼうではないか! ほら拍手、拍手!!」

パチパチパチパチ

 みんなに祝福されて少し照れながら善悪が言った。

「いやいや、一所懸命考えていたら朧気おぼろげながら浮かんできたのでござるよ、エスディージーズという言葉が。 今のままではいけないと思ったんです、だからこそ、通り名、今のままではいけないと思ってます! 的に? この難題を如何にクールに解決するか、ハッピーにセクシーに、そうやって頑張って考えたでござるよ。 名前って一生ついて来るものでござろ? 僕チンも今年四十歳でござる、だから三十年後の自分は何歳なのかな? って想像したんですね! 言わば三十年後の約束を守れる様にって、見届ければその可能性がある聖魔騎士だと思うと、だからこそ、果たせる責任もあると思うのでござる! おっと長くなってしまいそうなのでここらで終わるのでござる、I keeps time!(ドヤ顔)」

 もう支離滅裂、無茶苦茶で意味不明であったが、そこにドブに落ちた子供みたいに沈み切ったコユキが帰還を果たした事により、善悪の理解不能なポエムの真意は解き明かされること無く迷宮入りを果たしてしまうのであった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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