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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
417.反省

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 コユキと善悪を中心にアスタロトとトシ子、新生スプラタ・マンユのオルクスとアジ・ダハーカの六人は、他の『聖女と愉快な仲間たち』メンバー、ゼパル、カイム、ベレト、ガープ、シロクロチロ、うっすらとした蟹のカルキノスも床下からハサミだけだが参加した状態で本堂でのパーティーミーティングを続けていた。

 因みちなみに新たに設立された『聖女と愉快な仲間たちセピア』に所属する、元スプラタマンユの五人は本堂の中では無く広縁で正座して会議の終わるのを待つのである、無言のままで……

 体験入部的な立場の五人に発言権など無いのである。

 新参者で敵とも味方とも判断できないスカンダは、父親のシヴァに命じられた作業、境内の掃除に汗を流していた。 

 シヴァ曰く、

「信用されたければ口先の謝罪では無く、行動で示せ! この未熟者が!」

という、どこでも聞いた覚えの欠片かけらもない、シヴァオリジナルのありがたい指導を受けた結果である。

 せっせと休むことなく境内の玉砂利を均しならし続けていると、昨晩自分が狼達から逃げる為に駆け回り荒らしてしまった結果だという事が、ひしひしと感じられ、己の行いが様々な影響を他者に与えると言う至極一般的な事を再認識させられる……

 恐らく父シヴァはその事を伝えたくて、この作業を命じたのだろう。

 スカンダはそう考え、心中で自らの父親の深慮遠謀しんりょえんぼうを感心していたのだが、本当の所は只の八つ当たりなのであった、ままならない物だなあ。

「こんちわー! って、あれれ? 新しい人だね、あれ、どっかで?」

 境内に入ってきたリエがスカンダに気が付いて何やら不思議そうな表情を浮かべていた。

 しかし現在進行形で行動で示し中であるスカンダに抜かりはない、両手を胸の前で合わせて柔和にゅうわな笑顔を浮かべて言うのであった。

「これはこれは、お参りの方ですかな、信心深くて結構結構、ご先祖様も喜んでおられる事でしょう」

 多少派手ななりではあったが本来なら拝まれる側の仏神の一人である、中二病の親父に爪の垢でもあげればいいのに……

 対するリエはまだ首を傾げて何か思い出そうとしていたが、スカンダの顔を見つめながら口を開くのである。

「も、若しかして、お地蔵さん?」

「へ? まあそうですが、この格好で良くお分かりになりましたね、どこかでお会いしたかな?」

 その言葉を聞いたリエの表情はパアァと明るくなったが、その笑顔はまるで少女の様に輝いており、続いて発せられた言葉も子供の物の様であった。

「やっぱり! もう一度会ってお礼を言いたいと思っていたんですよぉ! 覚えてませんか、三十年位前迷っているのを助けて貰って、足まで速くして頂いたリエです!」

 地蔵はほんの少し考えたが直ぐすぐに思い出したようで手を打って答える。

「おお、あの時のわらべかあ! 大きくなって、いやいや大人になったのですね、これはこれは嬉しい驚きだ! そうかそうか、あの時の…… ふふふ、でどうだったのですか? マラソン大会は?」

「はい! お陰で一位でした! 高校の時はインターハイの一万メートルで女子の日本記録も出せました! 今では結婚して娘も授かったんですよ!」

「おお、おお、それは良かった良かった、はははは、愉快愉快、それにしてもあんなに小さかった童が母親になったか…… 時の経つのは、早いねぇ」

「本当ですねぇ」

 このまま放置すると長めの回想に入ってしまいそうであった。

 私の観察にいてリエ大叔母さんはあくまでも脇役であり、そんなに長尺で扱う訳にはいかないのである、よって私自身が二人から聞いた話を掻い摘ませて頂く事としよう。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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