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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
327.run away

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『済まなかった…… 真なる聖女と真実を語る魔王よ、我は己の愚昧ぐまいさを他者に問う事で何者かになった気がしていたのだ…… 許して欲しい……』

「碓井さん?」

「馬鹿め、又間違っているぞ…… 事実は一つだが、真実は見る者の数だけあるのが道理、私が言って聞かせた事は私の真実に過ぎない、お前にはお前の真実があるのだ…… いつか拘りこだわりを捨て事実だけを見れる様になれば良いだけだ…… そこに至る前は少しふざけてみるのも良かろうよ! 言ってみろ、ポロッポーでもキョロロンでも」

『分かりました…… 今回は約束を果たす為、お仕えすることは叶いませんが、運よく生き残りましたら是非私の忠誠をお受けください聖女様、カイム様、えっとポロロン』

「ははは、オリジナルじゃないか…… ガクッ!」

『カイム様ぁ!』

グーグースヤスヤスヤ

コユキは言った。

「眠ったようね……」

『あ! そうなんすね? ポロロン』

「んでアンタどうすんの? まだ続けるってんなら相手になるわよ?」

貞光は大きな体をすくめながら答えたのであった。

『いいえ、お手数お掛けしました、短いお付き合いでしょうが…… ポロロン、どうぞ!!』

カタンっ!

 一瞬で姿を消した碓井貞光の代わりに中空から落下してきたのは一本の腰帯であった。
 ずっと黙って成り行きを見守っていたライコー、源頼光が説明してくれる。

『これで、麿と仲間達、源頼光とライコー四天王全てのアーティファクトはそなたの物じゃ…… 物理攻撃力を倍加する『鬼切丸』、魔法攻撃力を倍加する『蜘蛛切り』、属性攻撃を無効化する『闇夜の打ち掛け』、精神攻撃を打ち消す『滅魔の腰帯』、そして、物理攻撃に対する我慢強さ、所謂いわゆるガッツを数倍に高め、更に朝夕の冷え込みからお腹を守る特性を持つ『キンタロの腹掛け』、この世に二つと無い聖遺物を手にしたのじゃぞ、コユキ…… 麿たちを装備すれば悪魔どもは兎も角、人間の中ではそなたはホボホボ無敵な存在じゃ! どうじゃ、このまま幸福寺に帰ろうではないか? いやなら、麿たちをここに残して逐電ちくでんしてしまえ! のぅ? そうせぬかぇ?』

貞光の腰帯を拾い上げながら答えるコユキ。

「そうだねぇ、それで八方丸く収まるんならそれも楽しいかもね? んでも『世界最強の女、その美しさに迫る』的に騒がれても世の中の飢えた狼達に好奇の目で見られるだけだろうし…… それにねぇ」

『それに?』

「アタシが訪ねて来たらクラックから連れ出されるようにアンタ等に指示したえっと、神様だっけ? やむにやまれぬ事情が有るんじゃないの? じゃなきゃ良く知らないアタシと善悪が死んじゃうとか一々みんなに説明しないでしょ? 黙っといたって良いんだからさっ! ってことはアタシ達が死ぬことが何かの為に必要な条件って事なんじゃないの? だから皆に教えておいてアタシ本人の耳に入れるようにしたんだと思うのよね、今回は卜部っちがゲロったけどさっ! ライコー様だって結構匂わせてたわよ? んでそれを知ったアタシや善悪が自分達の死を受け入れなければ目論見通りに行かないんじゃないの? つまり只死ぬんじゃダメなのよ、納得して協力する為に積極的に死ぬ事が必要なのよね、きっと! んまあ、生きてる限り死は誰も免れないしねぇ、どうせなら何か意味が有りそうな方がマシじゃない? その点で言えばアンタ等の主、神様って位だから立派な目的でも有るんだろうし、良い方なんじゃないかな? 第一もうずっと前に死んじゃってる皆から死ぬなって言われてもネェ~、説得力ゼロよ? でしょ!」

『むうぅ』

返す言葉を失ったように唸るライコーに代わって卜部の声が届く。

『だがなコユキ…… 我等の主はこう言ったのだ『可哀想だがお主等を連れ出した聖女と対なる聖戦士は消滅する』とな…… この言い方だと単純な状態としての『死』ではなく、魂または存在自体の消失を意味しているのかもしれないのだぞ! それは、人間の死生観では理解できない事だろう? 勿論元々人間だった我等にも皆目見当が付かないのだが……』

つなも追随する。

『魂の消失なんて如何にも苦しそうで辛い事なんじゃないかな? おばさん、考え直そうよ!』

『させない……』

「え?」

 聞きなれない声に驚きの声を上げるコユキだったが、一瞬後、それが誰の物であるか理解できたのであった。

 その声は頭の中で無く、リュックの中の派手目の腹掛けから聞こえて来ていたからだ。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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