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ショートショート#3 感覚鈍麻

この小説は友人のボカロの曲「セルフネグレクト」に影響を受けて書きました。
他薦ですが私の一押しです。
もしよろしければめっちゃかっこいいんで聴いてほしいです。


私はシングルマザーだ。
旦那とは昨年末に離婚した。
現在はスーパーのレジ打ちのアルバイトで生計を立て、娘と暮らしている。

旦那の暴力は壮絶なものだった。
よくキレると家の中の物を投げ、娘を守るのに必死だった。
中には包丁やら、はさみやら、命の危険を感じるものさえもあった。
その関係で小さい頃から、娘は刃物に興味を持ってしまった。
それくらい激しい喧嘩が行われていた。
喧嘩ではない。最早、児童相談所案件だ…。
なのに、児相は対応してくれない...。

私は思っていた。
誰も自分や娘のことを大切に思ってくれていない…。
それは愛した旦那であっても...。

ある日、私のもとへ、市役所からソーシャルワーカーが来た。
「生活でお困りのことはありませんか?、と名刺を渡された。

遅い!もう娘は取り返しのつかないところにきている!

あなたに私の気持ちがわかるのか、子どもを育てたことはあるのか!

愛した存在、旦那が恐ろしい存在に変わる落差を味わったことがあるのか!

娘も何をしでかすかわからない恐ろしい存在であるのに!

何をするかわからない、包丁やら、はさみやら…。

加えて、生活保護など、他人様のお世話になってまで生活するべきではない!

この子は自分一人の手で育ててみせる!

無言で名刺を受け取った後、その日は帰ってもらった。


そんな怒りとも悲しみともとれない感情が渦巻きながら、「ママ」との声で我に返り、食事の準備を始めた。

スーパーで残った野菜の端材のスープにご飯という質素なものだが、二人にとっては十分なごちそうだ。

ランチが始まる2秒前。
また手首に怪我をした後がある…。
それが怪我なのか。
包丁やら、はさみやらで何かをしたのか…。
もう自分の娘なのに、何をするのかわからない。

怖い。

どれだけ自分の身体を傷つけるの...?
感覚が鈍ってきているの...?


翌日はシフトは遅番だったので、午前中にソーシャルワーカーのもとを訪ねた。
今後もこの生活を送るために、どういった支援制度があるのか、熱心に耳を傾けた。

きっと救いはあるよね...。きっと...。

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