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結局、”Well-being” って何よ?

こんにちは。
空間デザイン会社でプランナーをしているオカモトユウガと申します。

いきなり本題ですが、
ここ数年、"Well-being"(ウェルビーイング)という言葉を耳にすることがグッと増えました。
仕事柄、オフィスなどをプロデュースすることも多いので当たり前かもしれませんが、それでも数年前から比べるとかなり認知は広がってきていると思います。

今回は、そんな新たな価値評価の基準である“Well-being"についてお話しできればと思います。

Well-beingとは

Well-beingとは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」「健康」などと翻訳されることも多い言葉です。
1946年の世界保健機関(WHO)憲章の草案の中で、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(=well-being)にあることをいいます」と用いられています。
もともとは、社会福祉の分野で利用される専門用語でしたが、先述したように、近年ではビジネスの場でも使われるようになりました。
特に働き方改革などが推し進められる現代社会において、この”Well-being"は、企業としての経営の方向性や組織のあり方、環境を考えるときのひとつの目安となる概念だといえます。

ビジネスにおける"Well-being"

ビジネスにおいてWell-beingが注目され始めた理由は、上記のように、働き方改革の流れや社会の価値観の多様化など様々だと思います。
ざっくりいうと、世の人々が「お金よりも健康や心が大事でしょ!」と声を揃えて言い始めたんですね。
つまり、どんなに大きな会社でも労働環境が劣悪だと誰も入りたいなんて思わないし、家族や恋人との時間が奪われて心が削られるくらいなら辞めてやる!みたいなことになっているワケです。

考えてみると、先進国における大抵の人の場合「ビジネス」は1日におけるほとんどの時間を占めているので、社会の価値観の変化の第一波がビジネスの場に当たるのは、至極当然の話かもしれません。

しかし、Well-beingが難しいのは「目に見えないこと」です。
どれだけ大事だと叫ばれても、目に見えない心の充足や健康を第一に考えて経営や意思決定を進めるのは至難の業かもしれません。
というわけで今、分かりやすく企業が注目しているのがオフィスです。

心に優しい経営は難しくても空間なら簡単に作れるだろうということで、働き方改革のなかでもオフィス改革が真っ先に挙げられることもしばしばです。

空間×Well-being(WELL認証)

2014年にアメリカで新たな空間評価システムが発表されました。
それが、WELL認証です。
WELL認証は空間のデザイン・構築・運用に「健康」という評価軸を加え、心身共により快適な空間の創造を目指すことを目的としています。そのため、従来の空間評価システムに比べて、建物内で過ごす人々の心身の健康や快適さに重きを置いています。

下記がWELL認証の主な評価項目です。(改訂版などもあるので参考までに)

これらの分野がさらに細分化されたものが評価基準となり、GBCI(Green Business Certification Inc.)の職員による書類評価、実地調査を経てWELL認証を獲得していきます。
例えば、【空気】だけでも空気質基準、禁煙、効率的な換気、VOC低減、空気ろ過、微生物とカビ制御、建設段階の汚染管理、健康に配慮した入口、清掃手順、農薬殺虫剤管理、基本的な製品の安全性、湿気の管理、エアーフラッシュ、気密性管理、換気量の増加、湿度制御、発生源の直接的換気、空気質のモニタリングとフィードバック、開閉可能な窓、外気システム、置換換気、害虫防除、高度な空気浄化、燃焼の最小化、有害物質の低減、強化された材料安全性、表面の抗菌、清掃しやすい環境、清掃用具など、29項目も存在します。

世界でWELL認証の登録・認証が最も多いのはイギリスで数千件。次いでアメリカ、中国となっています。日本は未だ数十件で、それらの足元にも及んでいません。

Well-beingのあり方は国ごとに違う

これが一番大事な考え方です。
WELL認証など、世界基準での指標ができたからといって他国と同様の方法で空間を改善していっても何一つ意味がありません。

その国の文化や暮らし方、考え方など国民性や雰囲気によって「Well-being」が指し示すものは大きく異なります。
アメリカ人とインド人と日本人で、幸せの定義が全く同じなわけありませんよね。
なので、大切なのは日本人、ひいてはその県民、ひいてはその会社の社員にとって”Well-being”とは何を指すのかを考え抜くことです。

様々な人が往来する普遍的な場所であればWell-beingを広くとらえればよいし、オフィスのように特定の人しか訪れない場所であればもっと思考を深めてより精度の高いWell-beingを実現する場所をつくることができます。

見出しでは国といいましたが、この考え方は国から地域、会社と、コミュニティーの大きいところで重要視されていっています。しかし、ひょっとしたら「自分の家族にとってのWell-beingって何だろう?」なんて考える日もそう遠くないのかもしれません。

つまり大切なのは、「自分がどんな状態を幸せと思うか、何を一番重要視しているのか」を持つことです。
それを意識して持つだけで共感するコミュニティや歩を進める向きはこれまでと大きく変わるかもしれません。

こんな大きなことを言いながらも私は空間デザイン会社のプランナーなので、世の中の皆さまが「幸せ」を感じられるような空間を用途やターゲットに合わせて必死に作っていくのみです(笑)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。