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詩)水槽

狭い水槽を行ったり来たり
照明が鱗に反射して万華鏡みたいで
陽の当たらない部屋の昼夜を逆転させる

広い世界を閉ざして
生かされる姿を歪んだ目で見つめ
指先一つで変えられる生を
片手に握り悦に浸る

意味の無い問いを投げてみては
自分勝手な解釈に口元を緩める
水槽の中では息をする事さえ苦しさを伴う
口をパクパクさせて
与えられる餌を胃に流し込む

見ているのか見られているのか
そんな疑問を投げ出して
腹を天井に向けて水面に浮かぶ

水槽は狭すぎたのか広すぎたのか
窓の向こうに灰色の雪が舞っていた
水槽の水はずっと生温いままだというのに




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