掌編小説)猫と私
私から見た猫
朝起きると足下にいるので『おはよう』と声をかけて頭を撫でる。
『ニャー』と挨拶を返してくれるのだが、機嫌が悪いと噛まれる日もあるので要注意だ。
私がタバコを吸いに行くと後をついてきて、玄関を開けた拍子に飛び出していく。
玄関前でコロコロして、その後は共同駐車場に並んでいる車の匂いを嗅ぎに行く。
大抵は名前を呼べば直ぐに帰ってくるのだが、
たまに、なかなか家の中に入らない日もある。そんな時は仕方がないので迎えに行って抱きかかえて家の中に入れる。
朝の支度もすんで仕事に出る時は、寂しいのか『ニャーニャー』と何やら鳴いているので、『バイバイ』とか『行ってきまーす』と一声かけてから出る様にしている。
私が帰宅すると玄関まで迎えにきて、『ニャーん』と猫撫で声でお出迎えをしてくれる。
その後は即作と自分の餌入れの前に行って皿を見ながら餌を催促をしてくる。
私がこのタイミングで餌をあげても、嫁が帰宅したら、また催促をするのでこのタイミングでは餌を与えない事にしている。
遊んで欲しそうな時は構ってやると嬉しそうにじゃれてくるが、最初はお遊びでも、結局、最後はムキになって、噛んだり引っ掻いたりで、手が傷だらけになるので程々に遊ぶようにしている。
私が寝る時はだいたい先にベットにいるので一緒に寝ている。1匹で寝るのは寂しいのだろう。
こんな毎日だが、猫のいない生活は考えられない程、溺愛している。手の傷は日に日に増えるものの、傷の数と比例して、どんどんと仲良くなっているのだろう。
猫から見たアイツ
寝起きに何やら声をかけられたので『こっちは2時間も前から起きているんだぞ』と言ってやった。ついでに、『お前の嫁はとっくに出かけたぞ』と教えてやったのだが、伝わっていないのか何故か無意味に頭を触られた。朝っぱらからガシガシと頭を触られるのはかなりウザい。
アイツがタバコを吸いに行くので一緒に外にでると何かとすぐに戻るように急かされる。
ぷかぷかと一服しているお前と違い、こっちは大切な情報収集をしていると言うのに。
この事に対してアイツが出かける前に一言、二言のお小言を言ってやったが、聞いているのかどうか怪しい感じだった。
何やら返事はしていたが、話が全て終わらない間に何処かへ行ってしまった。
アイツが帰ってきた時に、朝の小言の続きを言ってやったが、わかっていないのか生返事だった。馬鹿に説教をしてやっても疲れるので、とりあえず自分の皿に何も入っていないと伝えたのだが、アイツは食事の用意すらできない本当に使えない奴だ。仕方がないので嫁の帰りを待つ事にした。
気が向いた時にかまってやると適当にあしらわれて苛立ちを覚えることが多い。
そのくせ、あいつの気まぐれで鬱陶しい程にちょっかいを出してくる事もあるので困る。
口で言ってわからなければ実力行使に出る事もあるが、程々にしといてやっている。
アイツは自分が寝るときに、必ず後からベットに入ってくる。でかい図体は邪魔だが床で寝かせるのも可哀想なので一緒に寝かしてやっている。
そんな毎日の繰り返しだが、まぁこれはこれで良しとしよう。アイツにはいつまでたってもコチラの気持ちは伝わらないが、いつかはわかるようになるだろう。