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詩)冷たく静かな雨

暗くなった世界に冷たい雨が降る
道路を行き交う車は同じ音を残して
形を保つ事なく小さな点に変わる
雨が悪戯に人工の光を歪めては
淡くぼやけて辺りを包み込んだ

静かな雨はこちらに何かを語る事もなく
私は一人で自問自答を繰り返す
深く沈み込んだ意識の中に光を探すも
滲むような思考を放棄した心が
景色の中にゆっくりと溶け込んでいく

絶望に打ちひしがれるでもなく
生暖かい空気の中で
真綿に締め付けられていく日々を
自暴自棄になりそうな
赤とも青とも分からぬ種火を
冷たい雨が仄暗い煙へと変える

律動を変える事なく降り続く雨が
この先の案内人の様で
諦めにも似た希望を何度も叩いた
雨はまだシトシトと振り続ける
いつか止むその日まで

仄暗い…ほのぐらい
律動…りつどう(リズムの事)



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