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幼かった僕の恋。

  「面白くて優しくて、いつも笑わせてくれる、そんな○○が好きです。」
 それが僕の人生史上初めての告白であり、唯一、僕が心から幸せを願っている元恋人からの告白文句だ。今日はそんな僕の恋の話をしたいと思う。

 それは中学2年の5月。2時間目の授業が終わった後の休み時間に渡された手紙を、男子トイレの個室で読んだ。「なんでそんな所で読むんだよ。」なんてツッコミが聞こえてきそうだが、手紙の折りたたまれたところに書かれていた「誰もいないところで読んでね」の文字を見た当時の僕の頭に浮かんだ場所はそこしかなかった。元々、仲が良かった友達だったあの子からの告白を断る理由などなく、二つ返事で告白をOKした。そこから僕たちの恋人関係が始まった。
 とはいっても、中学生の恋愛。変わったのは「異性の友達」から「カップル」という肩書きだけで、中身は何も変わらなかった。休み時間になったら廊下に出て話して、帰りは二人の部活の終わる時間が同じ日だけ待ち合わせして帰る。そんな毎日が続いた。特に口に出して思いを伝えたりはしないけど、どんな時も楽しそうに笑ってくれる彼氏思いの素敵な女の子だった。

 その一方で、僕が子供すぎた。考えが幼すぎた。ましてや周りは思春期真っ盛りの中学生。茶化しは日常茶飯事だった。それでも、自信をもって彼女を好きだと言い切れる強さがなかった。「○○のこと好きなの?」「...いや、別に。」そう答えることしかできなかった。好きともいわない。手も繋がない。僕のガキさと、「友達」という壁が二人を終わりへと導いていった。

 トイレでラブレターを読んだあの日から8か月後、あの日と同じような手紙を、あの日と同じように渡され、あの日と同じ場所で読んだ。

 僕たちは終わった。交際期間8か月という期間は、中学生にしては長かったのかもしれない。「別れよう。」という提案に、僕は強がって「別にいいよ。」なんて答えた。全くダメージのないふりをして。それからあの子とは、なんとなくお互い気まずくて、交わす会話もほとんどなく、やがて僕らは卒業を迎え、別々の高校へと進学した。

 つらい思いをさせてしまった申し訳なさと、自分への情けなさでいっぱいだった。「未来の恋人に絶対同じ思いはさせない」―。そう心に誓った。

それから僕は、「言葉にすること」をとにかく大切にするようになった。人間は超能力者じゃない。言葉にしなければ伝わらない。「言わなくても気持ちなんてわかってるだろうから」なんて考えは慢心でしかない。「好きだよ」「ありがとう」「ごめんね」その言葉が、「この人はちゃんと私を想ってくれている」という安心感になる。新鮮さというのは月日が経てば薄れていくものだが、どれだけ月日が経ってもこれだけは忘れずにいたい。「一緒に居られていること」を当たり前だなんて思わないようにしたい。

 ―あの時の君へ。たくさん悲しい思いをさせちゃってごめん。でもあなたがいたおかげで、僕は大切なことを学びました。もう僕らがこの先一緒になることなんてないけど、僕よりも素敵な人を見つけて絶対に幸せになってね。

 最後まで読んでくださったこと、感謝します。この文章を読んだあなたに、幸せな恋が訪れますように。それではまた、どこかで。


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