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君とカメラと花火。

消しゴムはんこ

終わった。
全てを失った気分だ。
大好きなカメラにも触りたくないくらい、喪失感にかられていた。

シャッターを切る。
そんな一瞬さえも君に使えばよかったと思えるほど大切だった君は、僕のカメラには映らないくらい遠い存在になってしまった。


                            ***


外でなにやら大きな音がする。
「あぁ今日花火だったか」
それまではなにも頭になかったのに、急に切なさが僕の頭の中を埋めつくした。
「一緒に見ようって言ってたなぁ」
気づけば君との会話がよみがえってきた。


                             ***


「ねぇ、あそこの花火見に行こうよ」
僕が言ったのは地元で1番大きな花火大会。
「いいよ!浴衣着るね!」
そう言って、ぱぁっと音がしそうな笑顔を咲かせる君を心から愛おしいと思った。
「心躍る」とはこの事かと、眠れないくらいの期待で胸がいっぱいだった。
「君の浴衣姿かぁ。目に焼き付けなきゃね」
「またこれから何回でも見れるよ?」
そう言って君は楽しそうに笑ってたね。

でも何回でも見れるどころか、1回もその姿を目にすることは出来なかった。


「なにがだめだったんだろう」
そう自分に問いかけてみたけどわからなかった。
君の気持ちも、きっとこんな風にわかっていなくて。
それがなによりもの理由なんだろうと、そう思った。


                            ***


棚の上に置いたままのカメラにふと目をやった。
あのカメラの中には君との思い出が詰まっている。
「当分見れそうにないなぁ」
そう呟いて、鼻の奥がつんとした。

色んな君を撮してきた。
笑顔の君。目を輝かせた君。嬉しそうな君。
でも映せないものがあったんだ。
それがふたりの仲を引き裂いてしまったんだ。


                            ***


「ねぇ、言いたいことあるなら言いなよ」
「言いたいことなんて…ないよ」
「あなたはいつもそう!私ばかり言ってるみたいじゃない!」
「ごめん…」
「ほら!また謝る!そればっかり!」
「…ごめん」 


                            ***


何も考えぬまま立ち上がり、カメラを手に取った。
君との思い出を、君との関係を壊さないように。そればかりを考えていたような気がする。マイナスにならないようにやり過ごそう。いつしかそんな思いが生まれていたのかもしれない。


どんなに綺麗な景色も、宝石みたいに輝く思い出も全部君がいなければ意味はない。
そんな君も、そう伝えたい君も今はもうここにいない。

全ての時間を君だけに使えばよかったと思えるほど大切だった君はもういないんだね。

                           *** 


忘れようとした。
僕の心のアルバムは君でいっぱいだった。
何ひとつ、消すことはできなかった。
放っておいたらそのうち頭から飛び出していかないかななんて、考えてるようじゃだめか。 


                           ***


シャッターが落ちるくらい一瞬で君に恋をした。
シャッターを切るみたいにたくさんの君を切りとった。
たくさんの君を心に刻んだ。
でも、僕のカメラは二度と君を映すことはない。

だからせめてもう少しだけ。
君をアルバムから消さずにいさせて。


君がいない時間も、考えるのは君のことばかりで。その空間は2人でいるみたいだ。

もう少しだけ。君とふたりの空間にいさせて。

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