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『優しい河原 初夏の影』

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恋愛小説。 偶然出逢ったサイコとサトルの物語。 『いえ。偶然などなく、全ての事象は必然なのです』 宇宙のみが知る、ツインソウルとの出逢い。 少々15禁描写ありの、ノスタルジーな…
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2020年8月の記事一覧

13.そして。-最終章-

13.そして。-最終章-

再び夜に待ち合わせたサトルとわたしは、
田舎の居酒屋に入った。

昼間何回もキスをした唇が、
まだサトルの感触を残している。

「これが最後。自分で決めた未来。」

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12.優しい河原

12.優しい河原

初夏。
気持ちの良い日差しに澄んだ空気。

わたしは、数ヶ月後。
この土地を離れて都会のオトコに嫁ぐことになっていた。
結婚を、決めてしまった。
そのオトコと結婚すると、決めてしまった。

この世界の何が本当なんだろう。

今、こうやって決めた未来を自分は歩いていく。
こうやって未来を決める時に、
「それでいいの?」
と問う、もうひとりの自分がいる。 
「あの人への想いはいいの?」
「都会に住むで

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11.まやかしの中にある日常

11.まやかしの中にある日常

夏の初めの昼下がりの休日。
わたしは夫と中学生の息子のために、遅めの昼食を作っている。
何気ない家族の日常。
その「何気なさ」を守るために
わたしは随分普通?の人間らしくなってきたなと、少し自分を笑った。

何気なく出会ったオトコ。
子犬のように震えていた夫は、
世界を諦めの眼差しで見つめていたわたしに、

「結婚して欲しい」

と言った。
夫は、親とも疎遠で、友人も少なかった。
今まで恋人がいた

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