私たちは自分を偽っているのではなく、知っているように振舞っているだけ
「知ったかぶり」という言葉をご存知ですか?
それは良い言葉ですか?悪い言葉ですか?
そして、あなたは「知ったかぶり」をする人間ですか?
【知ったかぶり】
本当は知らないのに、いかにも知っているようなそぶりをすること。また、その人。知ったぶり。
(デジタル大辞泉より抜粋)
日本では、自分のキャリアについてプロに相談するという文化がありません。
厚生労働省は、2024年度末までに10万人のキャリアコンサルタントを養成する計画を打ち出していますが、2016年に国家資格化したにもかかわらず、わずか5年で減少傾向に転じました。
これは、それまでのキャリアカウンセラーやジョブ・カード講習を受講・修了して、厚生労働省に登録された者(登録キャリア・コンサルタント)に対してキャリアコンサルタント試験の免除をした結果、5年間の間に更新をしなかった人数が、試験合格者数を上回ったために起こった現象です。
正直なところ、キャリア相談のプロ、つまりは現行制度の「キャリアコンサルタント国家資格保有者」にメリットはありません。
なぜなら、資格がなくてもキャリア相談に応じることが出来ますし、なにより、有料のキャリア相談が日本に根付いていないからです。
例えば、あなたが離転職や職業観について相談するとき、「キャリアコンサルタントに相談しよう‼」と思いますか?
多くの人は、親しい友人や知人、家族に相談すると思うのです。
なぜなら、キャリアについての相談には正解がなく、自分の素性を把握している人物に相談するのが手っ取り早く、なによりお金がかからないからです。
そうして、漠然と将来について考え、悩み、迷ったところで、正解のない命題ですから、どのみち、進んだ先でどうにかするのが人生だ…と自己完結するのです。
では、キャリアコンサルタントとは何なのでしょうか?
社会的に認知されてきている「自己理解」。
あなたは本当に「自己理解」できていると言えるでしょうか?
ということで、今回は個人的見解ではありますが、なぜ日本で専門家によるキャリア相談が広まらないのかについて、書いてみようと思います。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
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まずは「キャリアコンサルタント」の資格保有者について考えてみましょう。
もしよろしければ、あなたも「キャリアコンサルタント」で検索してみてください。
「役に立たない資格」として、常に上位に位置しています(笑)。
これにはいくつかの理由があるので、その理由を挙げてみることとします。
キャリアコンサルタントの資格を取得するためには、ある程度の実務経験を有している必要があります。
実務経験がない場合の措置もありますが、こちらは養成講座を受講しなければなりません。
学習時間は通学80時間(講習10日間)を含め150時間程度を必要とし、養成講座の料金は30万円前後となります。
料金については「専門実践教育訓練給付金」を利用すれば、最大で70%の受講料が戻ってきますが、最寄りのハローワークで相談員によるキャリアコンサルティングを受け、なおかつ、決められた期間内で合格しなければなりません。
…改めて確認しておきますが、キャリアコンサルタントは業務独占資格ではありませんので、資格がなくてもキャリア相談が可能です。
このような煩雑でありながら割に合わない制度設計であることが、キャリアコンサルタントという専門家になるための「最初のハードル」です。
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次に、キャリアコンサルタント資格試験に合格した人の意識レベルが低いことも問題として存在していると思います。
ここからは、あくまでも個人の見解ですので、その旨ご了承ください。
キャリアコンサルタントの資格を取得した人の中で、実際にキャリア相談などの実務に従事している割合は40%にも満たない状況です。
また、資格保有者が大都市に集中しており、地域によっては認知すらされていないところもあります。
さらに、2018年のデータですが、各都道府県の人口比率に対してキャリアコンサルタントが充足している地域がわずか6都府県しかないという報告もあります。
資格を取得しても仕事がない資格。
だからこそ「役に立たない資格」と烙印を押されるのですが、これは職場環境のせいだけではありません。
キャリアコンサルタントが活躍している現場はどこだと思いますか?
一つはハローワークなどの職業安定所です。
そして、もう一つは資格養成講座の講師です。
…個人的な意見ですが、資格取得者が「未来の身内」とも言うべき受験希望者と接する割合が、あまりに多い気がするのです。
つまり、資格の普及や価値創出といった広い領域へ進むのではなく、一定の狭い領域に生息し、自分の仲間を増やしているだけだと私には映るのです。
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基本的に、都市部は人口が集中すると同時にさまざまな職業も存在しています。
ですから、大都市においてはキャリア相談の需要があることは必然ですが、過疎地などでは、進路に悩んでいる人は居ないのでしょうか?
…間違いなく居るはずです。
いくつか解決策はあると思うのですが、個人的に驚くべきデータがあります。
「認定特定非営利活動法人 育て上げネット」が2020年に、若者を支援するキャリアコンサルタントなど626人を対象に、IT業界への理解度について調査を行いました。
その調査結果には、魅力的な就労先であるIT業界について「人より知っている」と答えたコンサルタントは28%にとどまり、約70%が「よく知らない・まったく知らない」、または「どちらともいえない」と答えていることが分かったのです。(下記参照)
…他の資格保有者にも当てはまることですが、ニーズのある地域に供給者(この場合はキャリアコンサルタント)が不足している場合、課題解決にITの技術は必要不可欠です。
簡単な話、キャリアについてのオンライン相談受付を行えば、距離をゼロにすることが可能です。
しかし、そういったビジネスチャンスに対して二の足を踏んでしまう供給者が、あまりにも多い気がしています。
「せっかく取得したのに使えない」「時間とお金のムダだった」…キャリアコンサルタントの本懐は、「学生・求職者・在職者等を対象に職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門職」であると、厚生労働省は位置付けています。
にもかかわらず、己の研鑽をせずに「資格を使う場所がない」と嘆くのはおかしいと思います。
使う場所がないのなら、使う場所を作ればいいのです。
そして、それこそが誰にも届かない声を飲み込んだまま、悩みや迷いを抱えているクライアントに手を差し伸べる活動なのではないでしょうか?
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さて、これまではキャリアコンサルタントについて述べてきましたが、「なぜ日本で専門家によるキャリア相談が広まらないのか?」の問いにクライアント(相談者)側の視点でも考えてみましょう。
先に述べた通り、キャリア(職業人生)には正解がありません。
ですから、極論として、悩みや迷いを打ち明けられる人がいればいいと考えている方が多いのではないでしょうか?
「なるようにしかならない」
確かに、自分以外の人的要因だけでなく社会情勢や環境要因など、人生には予測できない要素があります。
しかし、「なりかた」という視点をお忘れではないでしょうか?
選択肢を増やし、納得できる決断をせずに「なるようになった」のでは、まるで「井の中の蛙大海を知らず」といった状況と同義なのではないでしょうか?
思考の幅を広げることの重要性は、実際に広がる経験をしないと気づかないモノです。
コーチングがエグゼクティブ(上級管理職)層に人気なのは何故でしょうか?
それは、当たり前だと思って凝り固まっていた思考をプロによって拡張された経験が、対価を支払ってでも得るべき経験だと感じているからではないでしょうか?
人間は未知に対して無知です。
保守的な文化圏である日本でキャリア相談が増えない理由の一つは、以上のことが考えられます。
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もう一つの理由は、一部のキャリアビジネスが「代行型モデル」だからです。
「履歴書や職務経歴書の書き方を教授し添削します」という有料キャリア相談を例に考えてみましょう。
この手のキャリア相談のゴールは明確です。
「企業に採用される人の履歴書を模倣して、職に就きましょう」というもの。
レントゲン写真のように、正しい(採用される)状態と、あなたの履歴書の状態を照らし合わせて、「ここが悪いです」と示すようなものです。
もちろん、ニーズのあるビジネスですし、多くの人が望むものだと思うのですが、個人的には専門性の低いビジネスだと思っています。
なぜなら、「履歴書や職務経歴書の書き方」とネット検索すれば、お金を払わずともある程度の情報は自分で得ることが出来るからです。
「履歴書や職務経歴書の書き方」で示す専門性とは、添削人数や前職の肩書がほとんどであり、キャリアコンサルタントでなくともデータや統計を調べるのが得意な方なら誰でも専門家になれます。
キャリアをコンサルティングするうえで重要なのは、クライアントの就職活動を「代行」するのではなく「伴走」することだと私は考えています。
「伴走型モデル」は成果報酬を取りにくいモデルです。
共に走る信頼関係を築き、ともに汗をかき、ときには転びながらも、クライアント自身がスタートからゴールまでを自走する、そのお手伝いをするが「伴走型モデル」であり、キャリアコンサルタント…というよりも人としての資質が問われるビジネスモデルです。
熱意だけでも知識だけでもなく、人として接することのできるキャリアコンサルタントは非常に少ないと思います。
就転職の煩雑さから解放されたい人に「煩雑さを楽しめ‼」など、信頼がなければ言える言葉ではありませんし、受け取る側も納得できないでしょう。
ともに「楽をしたい」関係性があるうちは、質の高いキャリア相談は浸透しないと思っています。
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では、まとめに入りたいと思います。
タイトルの「私たちは自分を偽っているのではなく、知っているように振舞っているだけ」とは、事故理解について述べているものです。
私たちが、他者に対して自己開示する際、嘘をつくようなことはしないと思いますが、必ずしも自分を完全に表現しきった言葉にまとめることは難しいのではないでしょうか?
「あなたは自分をどのように捉えていますか?」
キャリア(職業人生)と同様に、この問いも正解はありません。
「代行型モデル」を利用すれば、万人受けする言葉を得ることは出来るでしょう。
しかし、それは本当にあなたという人間を表現するに値する言葉でしょうか?
私たちは、他者よりも自分自身のことを理解していないモノです。
自分を受け容れるトレーニングをしたことがないからです。
では、そのトレーニングは、どうすれば出来るのでしょうか?
それがキャリアコンサルタントの存在意義だと私は考えていますし、そのような存在でありたいと思っています。
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かなりの長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の投稿は以上です。
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