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見える化と具体化

私たちは、思っている以上に頭の中にある構想を具現化することが苦手です。

それは、図解や言語に落とし込む過程で、霧がかかったように自分のイメージを見失ってしまうからです。

例えば、経営者が事業を立ち上げる際に、理念やビジョン、バリューやフィロソフィーといったものを掲げますが、言葉に込められている創業者の想いを社員一同が共有しているかといえば、そのような会社ばかりではありません。

誰しもが、頭の中に何らかのイメージがあるにも関わらず、それを他者に伝える手段に苦心している方も少なくないでしょう。

「語彙力」という言葉がありますが、どれだけの言葉を知っていても、それだけでは他者には伝わりません。

大切なのは、伝わる言葉で伝えること。

ということで、今回は他者のイメージを第三者に伝える方策について書いてみようと思います。

最後までお付き合いいただけると幸いです。

書道・毛筆・文字を書く

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日本語には、非常に多くの言語表現があります。

例えば、上記の「非常に」には、いくつかの類語があります。

たいへん/とても/はなはだ/大いに/きわめて/すこぶる/ごく
(小学館類語例解辞典より)

…これらには、「正しい使い分け」が存在しますが、誰もが共通の使い分けをしているワケではありません。

他者に伝える技術で最も難しいのは、「他者の言葉のニュアンスを掴むこと」だと私は考えています。

どう言うことかと言うと、「非常に」を「めっちゃ」や「ごっつい」など、方言的な用語に置き換える方がいるとします。

「めっちゃ」と「めっさ」と「めちゃめちゃ」と「どえらい」と「ごっつ」という言葉を使う方が、どのような場合にどの言語をチョイスするのかを把握することで、はじめて「非常に」の「度合い」が伝わるのではないでしょうか?

見える化とは、企業や組織における財務、業務、戦略などの活動実態を具体化し、客観的に捉えられるようにすることである。
(Wikipediaより抜粋)

「見える化」という言葉が認知されるようになって久しいですが、「客観的に捉える」ことの難しさは、あまり注視されていません。

「客観的」には「特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま」という意味がありますが、人が人である限り、特定の立場に捉われているのが平常なのです。

イラスト・男性・二人・ミーティング・会議・数値・データ・ビジネス・相談

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私たちが客観的に捉えられるものとは何でしょうか?

一つの解として「数値化」という方策がとられています。

例えば「あの人は優しい」という定性的で主観的な見解を「すごく優しい/優しい/ふつう/優しくない」という4つの項目で複数人にアンケート調査を行い、「すごく優しい」や「優しい」と回答した人が母数に対してどの程度存在するのか?といった統計データなどが挙げられます。

つまり、100人中70人が「すごく優しい/優しい」と回答したり、「優しくない」という回答が数人程度だった場合は、「客観的に、あの人は優しい」とみなすことが出来るということです。

…あまり上手な例示ではありませんでしたが、「見える化」の一例として「数値化」や「図式化」を用いるのは一般的に有効な手段と言えそうです。

ですが、忘れてはならないことは「数値化」や「図式化」をしたところで伝わらない人がいるということです。

伝わらないことで相手を見下すような真似は御法度です。

伝わらないことが悪いのではなく、伝え方に改善の余地があると考えを改めることが肝要だと私は感じています。

「見える化」とは、自己満足ではなく他者に伝えるツールなのですから。

ビジネス・契約

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「具体化」も「見える化」同様に自己満足の域を脱するのに苦労するモノの一つです。

例えば、あなたが新入社員の教育係に任命されたとします。

マニュアルが存在する部分は、言葉をかみ砕いて説明したり、違う言葉に置き換えることで伝えることが出来るかも知れません。

ですが、感覚的に行っている作業を、他者に伝えることに難しさを感じる経験はあるのではないでしょうか?

私は以前、製造業で金属製品を精密グラインダーで削ったり整えたりする作業をしていたのですが、自分の感覚を他者に伝えるとき、毎回相手に合わせて異なる説明をしていた経験があります。

それは、スタートとゴールが同じでも、人によって進み方が違うと教えながら気づいたからです。

私が進めやすい作業工程が、ある人はやりにくいと感じ、私が無意識に行っている作業が、ある人は十分に留意しなければいけないこともありました。

「見える化」「具体化」は、着手した人間の主観が必ずどこかに隠れています。

全社的な一つのツールを創り上げるのも効率的ですが、個々人によってニュアンスに変化をつけられる余白のあるツールも、ときには必要なのだと思います。

使う側の思考までも反映させた策を講じること。

面倒な側面もありますが、多角的な視点を養う良い訓練になると思うので、機会があれば、自分なりに作ってみて、他者のフィードバックを受けてみてはどうでしょうか?

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ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。

今回の投稿は以上です。

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