見出し画像

起業5回目!アフリカの連続起業家Etop Ikpe氏の中古車スタートアップ、Autochekとは

アフリカのスタートアップ市場には、エコシステムを牽引する起業家が存在します。今回紹介するEtop Ikpe氏は、5回の起業経験があり、ナイジェリア初のeコマース企業Kongaの元社員でもあったスタートアップ界隈の猛者と言えます。その彼が、コロナ禍の2020年10月に新しくAutochekを立ち上げました。今回の記事では、アフリカの中古車市場を概観した上で、Autochekの革新的なビジネスモデルついて迫りたいと思います。

店舗によって品質も値段も異なるアフリカの中古車

アフリカの自動車市場は中古車が大半を占めており、年間の中古車市場は約4兆5,000億円にものぼります。さらに、アフリカにおける1人当たりGDPが1,720ドルに対し、中古車の平均価格は5,000ドル。平均してGDPの3年分の買い物であるように、中古車はアフリカにおいて非常に重要かつ高価な買い物であることが分かります。

しかし、中古車には決まった価格が存在していませんでした。そのため、中古車を買うために何軒もの店を歩き回り、いざ購入しても欠陥のある車だったということは後を絶ちません。売り手側は、中古車の走行距離や製造年月日などを誤魔化して売ることができてしまうため、買い手側にとって、中古車の品質と価格の不透明性が高く、売り手と買い手との間で、情報の非対称性が甚だしいのです。

画像3

銀行にとっても情報の非対称性が甚だしいため、車の適正な価格が分からず、自動車ローンはほとんどつけられません(普及率は1%未満)。平均一人当たりGDPの3倍という高価な買い物にもかかわらず、アフリカでは、ローンを使わずに中古車を買わざるを得ない状況にあるのです。

さらに、購入後の修理点検、パーツ交換、下取りに関しても、信頼できる標準化されたサービスへのアクセスは、非常に限定されていました。

そこで、ナイジェリアにおいて5社の起業経験がある連続起業家であり、中古車スタートアップの起業では2社目であるEtop Ikpe氏が、Autochekを立ち上げました。

顧客ファースト!中古車ライフサイクルのワンストップショップの実現

2020年にEtop Ikpe氏が創業したAutochekは、価格透明性が担保され、購入からアフターサービス、下取りまで全て一つのプラットフォームで完結するサービスを開発しました。まさに、中古車ライフサイクルのワンストップショップです。

Auutochekのアプリを使えば、顧客はオンライン上で様々な条件から車を選択して値段を確認でき、その車を保管している傘下のディーラーもも記載されているため、実際に見に行くこともできます。

スクリーンショット 2021-02-07 23.52.53

「Autochekアプリ上での画面」

Autochekが優れている点は、中古車にまつわる全てのステップを単一のプラットフォームで完了できることに加え、統一された値段で車を販売&下取りできる仕組みを作ったという点にあります。これによって、買い手は、Autochekのアプリを見るだけで、店舗一軒一軒を回る必要もなく満足に購入できるのです。

DMS(ディーラ―マネージメントシステム)の導入

では、どのように値段の価格透明性を担保しているのでしょうか?それは、DMS(ディーラ―マネージメントシステム)をきちんと導入しているからです。Autochekが厳しく審査した既存の中古車ディーラーに対してDMSを提供し、 買取から販売、アフターセールスまでのオペレーションをデジタル化・標準化した上で、Autochekのオンラインマーケットプレイスに繋ぎこみます。

ディーラーには、非効率なオペレーション(査定、在庫、販売、アフターサービス)、資金不足、細分化されたサプライチェーンといった深刻な問題が存在していました。

しかし、DMS上では、在庫の管理、価格の管理、売り上げ等を管理できるソフトウェアも提供しているため、非効率なオペレーションが改善されます。また、ディーラーはAutochekを介して多くの新しいユーザーを獲得できるため、まさにwin-winの関係にあるのです。

ちなみに、Autochekのプラットフォームには中古車の取引データがどんどん蓄積していっているため、使えば使うほど標準化された情報と適切な価格を提示できる仕組みになっています。

ローンをつけて中古車が購入できるように

Autochekに登録されている中古車は、銀行にとっても価格と品質の透明性が担保されているため、車の残存価値に基づいてローン残高を管理できます。これにより、Autochekの顧客はローンを付けて中古車を購入することが可能となり(すでにナイジェリアの大手銀行とは数社提携済み)、ローンの査定もオンラインで完結できます。

しかし、なぜ2020年に創業したばかりであるにもかかわらず、Autochekはこのようなことができるのでしょうか?それは、Etopが連続起業家として幾多のスタートアップを経営してきて、中古車スタートアップの起業は2社目という経験豊富な人物であったからです。

Etopにとって1社目の中古車スタートアップ、Cars45とは

Etopは、2016年に中古車スタートアップ、Cars45を創業しました。Cars45は中古車マーケットプレイスを運営し、自社で中古車の在庫を持ちながら、査定センター/店舗も展開するモデルでした。同社はその後、ドイツのFrontier Car Group(FCG)傘下に入った後、2019年にFCGは南アNaspers傘下のOLXから$400 millionの出資を受けています。EtopはすでにCars45は退社し、2020年に同じく中古車スタートアップのAutochekを創業しました。

一般的には、中古車事業のオペレーションを知らないと、既存ディーラ―向けのDMSを開発し、顧客とディーラ―をオンラインで繋いでサービスを提供する事は難しいでしょう。しかし、EtopはCars45の創業者として、中古車事業において右に出るものは誰もいないほどの圧倒的な経験があったからこそ、Autochekは革新的なビジネスモデルを構築することができました。

加えて、Cars45の経験から、在庫や店舗を持たない、よりアセットライトなモデルを展開できているのです。立上げからまだ数か月にもかかわらず、Autochekにはすでに138のディーラ―が参画しています(2020年12月末時点)。

本来であれば、既存のディーラ―をゼロから新しいプラットフォームにオンボードさせるのはたやすいことではありません。Autochekの秘策は何だったのでしょうか?

Chekiの買収とOMO(Online Merges with Offline)の実現

Autochekは、ナイジェリアとガーナで最大の中古車クラシファイドサイトであるChekiを買収済みです。元々、Chekiには月間アクティブユーザーが23万人おり、250社以上のディーラーが中古車を掲載していましたが、Autochekはその中で基準を満たしたディーラーと顧客基盤をすでにAutochekに移行しています。これにより、立上げから一気にマーケットプレイスを構築することができたのです。

また、各ディーラーはAutochekのDMSを導入してオペレーションを標準化する一方、顧客はアプリを通じてAutochekのサービスにアクセスできます。これにより、顧客体験をオンラインとオフラインでシームレスに繋ぎ、OMO(Online Merges with Offline)を実現しているのです。

スクリーンショット 2021-02-08 0.00.50

「Autochekに登録されたディーラーが提供している中古車」

こうして、Autochekは自社で店舗も在庫も持たずに、アフリカで最も信頼できる方法で、顧客の好みや予算に合った中古車の検索から、ローン、購入、保険、アフターサービス、パーツ、そして買取までのあらゆるサービスをワンストップショップで提供できるのです。

アフリカでは、日本の中古車が大量に走っていますが、日本から輸出された中古車をアフリカの顧客が安心して購入し、安全に使用するための仕組みをAutochekが提供していることから、今後、日本企業との連携や協業も大いに期待されています。

——————————

最後までご覧頂きありがとうございました。今後ともKepple Afrifa Venturesのnoteでは、下記のようにアフリカスタートアップ紹介やスタートアップトレンドを発信していきます。フォローやいいねをしていただけると幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?