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【文献】カオスに関連する研究文献をざっと読んだのでシェア1

今回は脳波とか生体とか関わらずカオスについてざっとあれやこれや読んだのでよかった文献やフレーズ等をまとめます.ではどうぞ〜

1.経済とカオス

久留米大学の原田康平さんの書いたものですね.1994年に書かれていますが実はすごい面白いのです.前回の記事で一度「循環的であるが,周期的ではない」の短いブログを書いたのですがこの論文で出会いました.

この「経済とカオス」の著者である原田さんも実は脳波信号のカオス解析をやってらっしゃるということで,ちょいちょい生体関連の話が出てきますし,読む際に親近感を覚えました(おいらだけですね.)

論文の目的は,経済を予測するときの問題点や今後の経済を表すモデルについて検討をすることです.論文が出されてすでに25年が経とうとしていますが,カオス解析の根本(フラクタル次元やリアプノフ指数など)は全く変わってないことに少し身震いしますが...

実はこの頃からカオスを含んだ低自由度モデルはいくつかありました.
本文で紹介されているものでは例えばDayのマクロモデルや,Lorenzが出したKaldorモデルなど,所得や資本,消費,投資などが含まれるモデルですが資本や投資は逓減性が考慮されて非線形(=カオス)と仮定されていたりします.

また,非線形振動子のうちで有名なDuffing方程式がありますが,太陽活動の周期変動を入力とした経済のケオティックな変動というユニークなアイデアも紹介されています.(桜井邦明さん,鳩中雄二さんの本より)
興味があれば読んでみてください.

実際に,マクロな経済現象というのは低自由度のカオスでモデリングができるらしいのですが,ミクロな問題やゲーム理論などの複雑なものに関しては中間自由度系のモデリングの方が現象に対してフィット率上がるようです.

その他,やはり相関次元の考察もあり,データを解析する時に扱うデータ数どうするんだ問題やフィルターかけていいの問題など読んでいて面白いです.

また解析結果に関しても面白いことがありました.
たえば相関次元で,この現象は次元が4.2です.などと言われても...具体的にこの数字は何を表しているのか説明ができないものであるので著者は掻痒感に苦しんでいるそうなのだが,残念ながらこれは25年たった今でも変わっていないのです.

変わったことといえば人工知能が吐き出す出力結果が,人間にはなぜそうなったのかわからないけど正しい!みたいな一種の超常現象が生まれたくらいですよね.

2.多項式カオス法を用いた不確かさを持つロボットアームの先端位置精度解析

兵庫県立大学の高谷秀明さん,荒木望さん,佐藤孝雄さん,小西康夫さんの論文です.
2017年に出たので新しいです.
25年も経つとロボットアームの位置推定など広く深くカオスは適用されて行くのですね.

そもそもの発端はロボットアームの動きの不確かさですね.不確かさというのは操作時のアームの挙動です.何かを操作するという際には,必ずしも操作者の意図する場所にミリのズレもなく毎回動くというのは極めて実現が難しいのです.なのでだいたいは誤差を許容した設計(ズレる範囲を認識して作る)にしたりします.

そこでこのカオス界隈においてニッチな需要が生まれるのは不確かさ解析です.

そして不確かさ解析に用いるのが多項式カオス法です.

でもこの多項式カオス法は確率的モデルらしいんですよね.
カオスって確率的な要素がなくて全て決定論的に記述できちゃうので,そもそも名称がちょっとおかしいのでは...と思ったりもしてます.

適用の際にはコンピュータ上での計算になるのですが,今回の多項式カオス法の解析精度は著者らは十分に満足している様子でした.実際にロボットアーム実機に適用して制御までやって欲しく今後の活動が気になります.


ランダム力学系と確率カオス

北海道大学の佐藤譲さんの研究になりますが,とても興味深く読みました.

なぜか.

それはラムダムカオスだからです.

つまりカオスの決定論的ダイナミクスランダムの確率論的ノイズを合わせて現象を見るということをされているからです.

著者が示すランダム力学系理論で言えば,分岐現象として勾配系の確率共鳴,振動系のノイズ同期などの雑音誘起現象など調べられるそうです.

ランダム力学系理論で扱う基礎方程式はこちらのようです.

f(x)の方はカオスの関数でしょうか.実際にこの系はランダムアトラクターと呼ばれるアトラクタ構造を振る舞うようです.

本文中では,あの天気予測のカオスを記述することで超有名なLorenz方程式ならぬ確率Lorenz方程式を使ってすごいものを見せてくれました.

こちらが確率Lorenz方程式です.さて,この方程式が示すランダムストレンジアトラクターはというものの,,,,

こちらです!!!

もう外見が蛾みたいで美しいですね.なんだかこれがランダムネスに従っているとはあまり思えないような,,,

以下本文引用します.

確率 Lorenz 方程式は気象の予測不可能性を考えるために考案されたモデルである[15]. 時空間的に局所的な天候変動だけに興味があり,全系の予測に興味がない場合などを考えれば,この観点の有効性が理解できる.決定論カオスの予測不能性は,我々が現象の初期値を完全に測定できないために生じる.例えばBernoulli写像の軌道は,初期値を任意精度で測定できるのなら,その情報が消失しない限り完全に予測可能である.一方で実現象では系に外部から撹乱が加わることにより,ときにその振舞いが質的に変化する.こういった非自励力学系あるいはランダムカ学系における非線形現象の予測可能性については, 広範囲の応用があるにもかかわらず,概念的に明確化されていない.この問題の古典的な研究としては例えば [20] を参照.流体の実験時系列からランダムストレンジアトラクターを構成し、集団運動を確率カオスとして解析する,という研究も最近著者らによりなされている [21].  ー本文より抜粋

確かにカオスの挙動って初期値の微小なズレですごく予測困難になるので,こういった確率的な要素を入れてその挙動を補うのは至極当たり前のような気がしてきました.

おいらも非線形モデルを使ってますが参考にしてモデルの改良をしてみようかなとか思ったりしてます.


まとめ

はい.
今日はこんな感じで3本シェアしたが,2本目のロボットアームは少し違いましたね.モノを動かすまでいったら面白いのですが今後期待です.明日も多読して自分の知識吸収と研究へのフィールドバックがんばります!では


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