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[すこし詩的なものとして]0085 光をまたぐ影のよう

月明かりがまぶしくて
なんだかまぶたが下りない
少し湿った空気が
どこか心地よい

月明かりの夜
なぜかやさしさとはなんだろうと考えた
それを想うと
あの人の顔が浮かび上がった

やさしさとは
やさしさとは
いくら考えても
どこかの誰かの
ズル賢いロジックに
組み込まれるような気がして
いやだった

だから
やさしさを考えて
思い浮かぶあなたのことを考えよう
ただ目の前の表情に
右往左往した方が幸せだ

月明かりは
まだまだぼんやりと
いつもより少し明るい光を
浴びせてくれる
まだ寝るなよ
もう少し待ちなさい
そう言っているようだ

きっと月の方が
僕たちを見ている
ゆっくりと
じっくりと
光をまたぐ影のよう
戻れない記憶に
やさしい光を
照らしてくれる

——————————————
以前、月刊誌の編集の仕事をしていた。
今の時期はもう来年の仕事をしていた。
先を、未来を生きること。
ただただそれが苦しかった。
事実と虚偽の狭間で、何を指針に生きるかは、
自分自身しか頼れない。
時を追わせるより、時を追いかける人生の方が、
よっぽど摩擦のない生き方ができるのかもしれないと、
ふと思った。

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