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散らばった顧客情報を集約せよ!「カミナシ カスタマーカルテ」ができるまで

お疲れさまです!
カミナシでCS(カスタマーサクセス)をしている石井といいます。

入社エントリと見せかけて謎解き愛をぶちまけただけの前回noteから打って変わって、今回は真面目にCSの話をします。

このnoteは何?
CSであれば誰もが一度は悩んだことがあるであろう「顧客情報の集約」。
カミナシCSが現在進行系で取り組んでいる施策「カミナシ カスタマーカルテ(CS特化型の簡易アカウントプランのようなもの)」について、その内容と制作過程を記したnoteです。

誰に向けたnote?
・THE MODEL間で顧客情報が分断されることに悩んでいる方
・担当変更の度に議事録をイチから全部読み返すことにうんざりしている方
・新たにCS組織を立ち上げようとされている方
・顧客情報まとめたいけど、CRM難しそう…という方
などなど



背景

多くのSaas企業と同様、カミナシでは現在THE MODELの体制をとっています。

インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、そして22年7月に新設されたカスタマーセールスと、それぞれの部門でお客様とのやり取りが発生するわけですが、その中で得られた情報は以下のような形で各メンバーがそれぞれ管理をしていました。

「現場ドリブン」「外向きベクトル」をバリューに掲げるカミナシですから、お客様との接点は非常に多く、その内容をまとめたドキュメントも日々大量に生まれています。
それ自体はとても素晴らしく、いち社員としてもたいへん誇らしいことなのですが、情報の格納先が複数あることで、次のような問題も起きていました。

起きていた問題

①顧客情報の確認工数がハンパじゃない

前述の状態で顧客情報を確認しようとすると、以下のような形になってしまいます(矢印=閲覧先)。

やばい

え、閲覧先が多すぎる…。
もちろん、契約状況やコンタクト先といった基本情報はCRM(カミナシではHubSpotを使っています)の中に一括管理されているのですが、「お客様とどんな話をしたのか」「どんな特徴を持ったお客様なのか」「どなたがキーマンなのか」「どれくらいカミナシにご満足いただけているのか」といったお客様と向き合うために大切な情報は、上記をひとつずつ確認して取りに行かねばならない(場合によっては都度まとめ直さねばならない)状態でした。

これでは案件を渡す側も受け取る側も大変ですし、意図せず大事な情報が漏れてしまうことも考えられます。情報を一箇所にまとめられるような仕組みが必要でした。

②どこまで顧客理解ができているか?がわからない

情報の格納先も形式もバラバラだと、顧客理解の粒度にも幅が出てきます。
引継ぎの段階で「このお客様は導入目的とゴールについて確認できているが、キーマンがわからない」「このお客様はキーマンは把握できているが、カミナシに対する満足度がわからない」といったことが発覚するケースも考えられました。
加え、さらに問題になりそうだったのが「そもそも顧客の何を理解しておくことが大切か?」という指標がわかりづらかったことです。今後カミナシが組織拡大していくことを想定すると「これが聞けたら顧客を理解できているって言えるよね!」という共通基準を決めておいた方がCSイネーブルメント的な観点でも良さそうだと考えました。

「なにが聞けていないかがわからない」という状態を脱するため、顧客理解を深める上で大切な項目についても、改めてまとめることにしました。

やったこと

メンバーへのヒアリング

まず実施したことは、全CSメンバーへのヒアリングです。
「顧客情報を集約する仕組みを作るぞ!」と息巻いたは良いものの、この時点での私は入社して2−3週間程度のぺーペー中のぺーぺー。お客様のことも、現在の仕組みも、これまでの歴史もキャッチアップの真っ只中です。現場感の無い人間が勝手に仕組みを作った結果形骸化した業務だけが残り続けることほど虚しく、恐ろしく、そして起こりがちなことはありません(沢山の苦い失敗が頭をよぎります…)。どんな施策であれ、全員が腹落ちできている状態で進めたい、と考えました。
そこで、CSチームの先輩方全員に1on1の時間をいただき、「顧客の成功のために大切だと考えている要素」「顧客理解を進める上で困っていること」等をヒアリングしていきました。
結果、2つの方向性が決まりました。

① 既にCSが運用していた議事録Notionの項目をリニューアルする形で運用すること
② 情報を「Stock」と「Flow」に分けること ※後述

プロトタイプの作成&運用

CS現場で使いやすい仕組みを作るためには、とにかく実践あるのみ!
Notionのプロトタイプを作成し、CS何名かの案件で実際に利用→1週後にフィードバックを集めブラッシュアップ→実際に利用→ブラッシュアップ…という流れを繰り返しました。

毎週ペースでバージョンを更新

「これはマストだね」「この情報はググればOKだから、カルテに入れる必要はないね」「この項目は表形式の方が見やすそう」等々、様々な意見を集めながらカイゼンを重ねること約1ヶ月、ようやく全体にリリースしても良いと思えるレベルになりました。
このタイミングで「”顧客理解シート”って、なんかワクワクしないなあ…もっと馴染みやすい、キャッチーな名称はないかしら…」と考え、改めて「カミナシ カスタマーカルテ」と名付けました。

これがカミナシ カスタマーカルテだ!

全体は以下のような構成になっています

Stock情報

アーカイブされ蓄積されるべき顧客情報です。「キーマンが誰か?」や「先方が求める成果は何か?」など、Key Success Factorになりうるものはこちらに記載します。Stockパートを見れば大体どういうお客さんかわかるのが理想です。具体的には以下の要素で構成されます。

基本情報
顧客の事業内容や拠点数、組織図などを記載していきます。カミナシ特有の項目としては、「どんな認証を取得しているか?」や「どんな端末/環境でカミナシを使っているか?」といったものがあります。

登場人物
ここでは案件の関係者について記載していきます。キーマンをどうやって表現するか?という点については長らく悩んでいたのですが、向井俊介(@Shun_Mukai0718)さんの「旬トレ」を受講した際に教えていただいたMEDDICモデルによる役割整理がそのままCSにも転用できそうだったため、カミナシセールスの島田(@skblue2359)がまとめてくれた以下の表を元に役割(属性)を書いていく形にしました。

島田謹製「カミナシ セールスブック」より
実際の項目はこちら

チャート
CSとして「これは抑えておきたいよね!」という項目を記載していきます。「ゴール/問題/課題」の整理のほか、カミナシ特有の項目としては「(先方が)取り組みたい帳票」についてもここで共有していきます。

特徴は、「セールス担当→オンボーディング担当への引継時」「オンボーディング担当→リテンション担当への引継時」というように、タイミング毎に各項目を改めて確認する構成になっていることです。

個人的にはこのチャートがカスタマーカルテにおける白眉なのですが、この各項目が時間とともに変化していくことを前提とした作りになっている点が特に気に入っています。

「オンボーディング時に聞いたゴールとリニューアル時に聞いたゴールがいつの間にか変わっている」「セールス引継ぎ時に”工数削減”が導入目的と聞いていたのに、キックオフでいきなり”人材教育”の話をされた」みたいなことって、CSあるあるですよね?
これ、別に前工程の人が嘘をついているわけでも、ヒアリングが甘いわけでも、お客様が好き勝手言いまくっているわけでもないと思うんです(時にはそういうケースもあるかもしれませんが笑)。
目指したい姿や解決したい問題は(その時点でのお客様のプロダクト習得度合いや、社内体制や、外部環境等によって)変化していくという当たり前のことを意識するきっかけがない(=書き溜めておく場所がない)ことが、他部署やお客様とのすれ違いが発生する原因になっているのではないかと考え、重要項目に時間の概念を組み込んでみました。課題とゴールはナマモノである、ということを忘れないために。

Flow情報

Flowはその場で流れてしまう情報としています。訪問やオンラインでの会話、電話、チャットツール上などで取り交わされるコミュニケーションで、基本的にその場にいる人のみで意思疎通される類のものは全て(社内外問わず)該当します。

ちなみに、Stock情報とFlow情報が混在していることが情報をさかのぼって確認する際のネックになっている、という示唆は、決裁者にアプローチするミッションを背負って前線を張っているカスタマーセールスの塩田(@shioda_japan)が与えてくれました。

ポイント

案件を引き受ける側が入力責任を持つ

通常、セールス→オンボーディングやオンボーディング→リテンションへの案件引継ぎの際は「案件を渡す側」が「案件を引き受ける側」のためにドキュメントをまとめることが多いと思いますが、カスタマーカルテでは「案件を引き受ける側」が作成することを基本ルールとしています。

理由はシンプルで、「案件を引き受ける側」の方がその後カルテを使う頻度が高いからです。

どちらが入力責任を持つべきか考えたとき、「案件を渡す側」がどれだけ丁寧にまとめるかはその人の善意に依存しますが、「案件を引き受ける側」には必死に情報を集める力学が働くので、カルテの内容が充実していく(させざるを得ない)のではないかと考えました。
社内の引継ぎミーティングの際に「引き受ける側」が「渡す側」にヒアリングをしながら、自身でカルテの各項目を埋めていくような運用を想定しています。

情報不足を責めるためのツールではない

カルテを運用していくと、「あっ、ゴールの部分はまだ握れてないです…」「先方の決裁者が誰か、まだわかんないっす」という場面が出てきますが、ここで前任を責めるマインドになってしまうと、カスタマーカルテはワークしなくなると思います。
そもそも「なにが聞けていないかがわからない」という問題を解決するための取り組みなので、「なんで聞けてないんだ!」ではなく「おけおけ、次回聞いてみよ!」「”まだわからない”ということがわかって良かった!」くらいのスタンスで運用してこそ、カルテの効果が発揮されるはずです(カミナシは最初からこのマインドのメンバーばかりなのが素敵だなあと思っています)。

やってみてどうか?

他部門からも好評

作成している最中から、ビズサイドだけでなくプロダクトサイドでも「いいね!」と言っていただけることが多く嬉しかったです。

本人はいなかったけど、好評

「顧客の情報をどうやって取りに行くか?」は部門関係なくカミナシメンバー全員の頭をもたげていた問題だったようなので、今回のタイミングで取り組みをスタートできたのは良かったと思います。同時に、その分エグゼキューションを頑張らなければいけないな、とプレッシャーも感じています。

閲覧/説明がしやすい

ひとたびカルテを作成した顧客に関しては、自身での振返りや社内ミーティングでの「こういうお客様です」の説明が圧倒的に楽になりました。詳細のニュアンスも含めて共有できるので、ミーティングでの意思決定や合意形成もスムーズになったと思います。

作成は大変

わかっていたことではありますが、作成はやっぱり大変です(笑)。作成にかかる時間、という意味でももちろんですが、カルテを入力している間は真正面から徹底的にお客様のことを考え、未来の長期的なアクションにも思いを巡らせることになるので、1件1件の思考カロリーが高いのです。
とはいえ、これはCS担当にとっては幸せな時間でもあるので、効率化できるところは効率化(カルテ作成対象顧客の選定/優先度決めなど)しつつ、一部は「かかるべき負荷」としてあえて残していく必要もありそうだと感じています。

今後に向けて

OKR施策の一つとしてプロジェクト化

カミナシCSでは四半期ごとにOKR施策を走らせているのですが、22年度第3四半期のOKRに「カスタマーカルテの運用定着&カイゼン」を組み込んでいただきました。
それまではOKR外で勝手に進めている取り組みだったのですが、現在は正式なプロジェクトとして、私のメンターでもある細見(@uta_somi)がオーナーとなり、主にリテンションチームでカルテの運用を始めています(もちろん、いきなり全ての顧客に適用することは難しいため、メンバーごとに対象顧客を選定しています)。

こんな感じでブラッシュアップ案を集めていっています

セールスとの連携/他部署展開

カルテの取り組みを始める以前より、「情報一元化プロジェクト(共有ドライブの整理等を全社横断で実施する取り組み)」というものが社内で走っていたのですが、そのプロジェクトメンバーである宿利(@shukuri_a)と高倉(@_sakitakakura)から声掛けがあり、「セールス→CS引継時の連携項目」をカスタマーカルテに準拠したものに変更することになりました。
現在、カルテの項目を元にHubSpotのプロパティ改修等を進めています。カスタマーカルテがカミナシTHE MODELにおける部門間連結を強める一手になったら良いな、と思っています。

最後に

いかがでしたでしょうか?
元も子もないことを言えば、一つのCRMに全ての情報が集約されていることが理想ではあるのですが、「言うは易し」でスタートアップの現場ではなかなか難しい場合も多いと思います。
CRM内では管理しきれない情報をとりまとめる一案として、少しでもご参照いただける部分があれば幸いです。

もちろん、カミナシ カスタマーカルテもこれで完成形とは全く思っておりませんので、引き続きブラッシュアップを重ねながら、顧客の成功に直結する仕組みを目指していきたいと思っています。

We Are Hiring!

今回のカスタマーカルテの取り組みの中で、改めてカミナシCSチームの強さと器の広さを感じました(入社したてのぺーぺーが「これやりたいっす!」と騒いだことに、全メンバーが無条件で全開の協力体制になってくれる会社って、そうそうないと思ってます)。
一人ひとりが「それが顧客のためになるのなら、やる」というシンプルで強力な行動原理のもと働いていて、毎日たくさんの刺激と学びがあります。

12月で入社4ヶ月目になりましたが、広義の概念としても一つの職能としても「カスタマーサクセス」を追求する上で今のカミナシは最高の環境だと胸を張って言えます。
少しでもご興味を持っていただいた方、情報交換がしたい方、フランクにCS談義しようぜ~な方、いつでもご連絡お待ちしています!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
スキ&シェアも是非お願いいたします。

それでは!


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