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freeeとマネーフォワードの使い勝手、機能を徹底比較

「freee、マネーフォワードのどっちがオススメ?」

よく聞かれますし、当記事のPV数から情報ニーズの高いことが伺い知れます。
ググっても当たり障りない紹介で終わっていたりなど情報が出ていないのが実態でしょうか?
両者のヘビーユーザーでもある私目線で、解説致します。

検討するにあたって、以下のポイントがあります。



1.インターフェースの使い勝手

freee
真ん中:ショートカット、やること
左:連携した口座情報
上:取引、申請、レポート、決算・・
という構成です。

やることには、未登録伝票数が表示されるため、開く度にまずはこの登録を行います。

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(スクショはfreee公式youtubeより拝借)

・取引
取引の一覧・登録、エクセルインポート、ファイルボックス、請求書が頻出で、その他は人によってあまり使わないかもしれません。
ボタンが多く見づらい印象です。
※取引の一覧・登録、エクセルインポート、ファイルボックスは後述します。請求書はここで請求書は発行+売上計上ができます。

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・申請(次に左)
経費精算のメニューに飛びます。

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・レポート(次に左)
たくさんのレポートが設けられています。使いこなせない場合、ほとんどは使わないボタンになります。
お馴染みの、会計士帳簿周辺がここでようやく出てきます。
※後述する納税額の試算は、資金繰りレポートから入ります。

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・決算(個人事業主では確定申告という名前)
ここは決算のための、決算書作成・消費税集計表・勘定科目内訳明細書メニューがあります。
お馴染みの振替伝票は、決算仕訳でのみで用いるという意図で(おそらく)こんなところに隠されています。
※マネーフォワードには、勘定科目内訳明細書の作成機能はありません。

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・ショートカット
会計帳簿メニューを感覚的に探しにくいため、私は試算表(BS、PL)・月次推移をショートカット登録しています。

マネーフォワード
真ん中:連携した口座ごとの未仕訳
左:自動で仕訳、手動で仕訳、取引管理、会計帳簿、レポート、決算・申告
freeeに比べると情報量が少なく、すっきりしています。
真ん中にやるべき未仕訳がすぐ目がいき、わかりやすいです。

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(スクショはマネーフォワード公式youtubeより拝借)

左タブも従来の会計システムのような区わけであり、経理歴の長い方は取っつきやすいデザインです。

・自動で仕訳
マネーフォワードの他サービスを使用している場合、関連した伝票をここで取り込みます。使う方と使わない方がいっしゃいます。
※例えば、マネーフォワード給与で給与計算を行い、"給与から入力"で給与仕訳を計上します。

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・手動で仕訳
早速、お馴染みの振替伝票入力が出てきます。
(freeeに対応してか、取引から入力というメニューも設けられています)

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・取引管理
債務管理はビジネスプラン以上で使える機能です(振込登録をしていくことで伝票を入れるもの)。
残高照合は、繋いだ口座の実際残高と帳簿残高とを日次で比較する機能です。

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・会計帳簿
様々な会計帳簿メニューになります

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・レポート
色々レポートを出せますが、freee同様使いこなしが難しいと感じます。

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・決算・申告
freeeよりメニューが絞られており、すっきりしていて分かりやすいですが、freeeと比較すると、勘定科目内訳明細書の作成機能がないことは不満です。

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わりとインターフェースの使い勝手の好き嫌いで決まる可能性があるほど、重要要素ですが、好みはいかがでしょうか?

2.デザイン(思想)の違い

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freee
"お金を基点・タグが多く経営管理の自由度高い"

お金の出入り(取引)を起点にし、勘定科目以下を記録していくデザインになっています。
情報を持たせる項目が多い分、管理したいように情報を格納させることができ、経営管理に用いやすいという利点があります。
取引を重視する理由は、口座(預金口座やクレジットカード)の出入りを帳簿に表現する会計ソフトとして開発されたためなのかなと思っています。

マネーフォワード
"勘定科目を基点・従来の会計システム体系でわかりやすい"

弥生会計、勘定奉行などと同じように、勘定科目を起点とし、追加情報である部門、補助科目を記録するようにデザインされています。
取引先や品目を記録するためのタグはなく、どうしても記録したい場合は、補助科目や適用欄を活用します。

"経営管理の自由度"、ここも判断の重要要素と感じています。

3.口座の概念

freee
現預金だけでなく、クレジットカード・決済サービスも口座と扱います。

会計freeeでは、現金・銀行口座・クレジットカード・決済サービス等を「口座」として登録します。口座を用いることで、資金の出入りを収入・支出として扱い、簿記がわからなくてもカンタンに記帳ができます。
(freee公式の説明)

クレジットカード:未払金の補助科目(~カード)でなく、クレジットカードという債務科目
決済サービス:未収入金の補助科目(~サービス)でなく、決済サービスという債権科目
そのため、見慣れないBSになります。
また、ホーム画面上、債務性の口座という意味でクレジットカードの同期残高がマイナス表示されますが、なぜマイナスなのか?とお客様からご質問頂くことがあります。
徹底されたキャッシュ目線のデザインと感じます。

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(スクショはfreee公式youtubeより拝借)


マネーフォワード

従来通り、現預金を口座と捉えます。



4.料金プラン

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両者、料金に大きな差はありません。
年商10億円の法人までは、ベーシック、ビジネス以下のプランを利用される印象です。上記の基本料金に加え、付随機能をどれを選択するのかどうかで月額料金が決まります。

マネーフォワードは、5名分までは給与計算機能まで踏み込んでいる点が特徴的であり、給与計算で追加コストを払いたくないから、マネーフォワードを選ぶケースもあり得ると思います。

5.顧問税理士の都合

ここで顧問税理士ブロックという要素が出てきます。
クラウド会計〇✕がはっきり分かれるため、顧問がいらっしゃる方は先に税理士へご確認下さい。
✕の場合は、「従来の会計システム以外はスキル的に使えない」や「税務システムへの連携の兼ね合いで使用を認めていない」という2パターンがあります。(データ連携可能な税務システムは達人のみであるため、顧問が他の税務システムを使う場合、数値の手入力が必要になり工数UPになるなど)

また、税理士はfreee、マネーフォワードをクライアントに紹介する場合は、それぞれ提携パートナーとし登録しており、上位表示されるように導入数を稼ぐ状況になります。
どちらかがお得なキャンペーン期間中(キャッシュバックやクーポンなど)であったり、事務所方針で推しが決まっている場合、そことの調整も必要になるため、事前に税理士へご確認下さい。

残念ながら私の個人名は出てこないですが、上位ほど導入社数が多いという話になりますので税理士検索もご参考下さい。

freee

マネーフォワード

6.番外編1(クレジットカード遡及期間)

口座連携の際のクレジットカードの遡りは、ある同一のクレジットカードにおいて、freeeが3か月前、マネーフォワードは3か月よりも前から取得可能だったことがあります。
仮に期首から3ヶ月超が過ぎてからの導入を検討される場合は、マネーフォワードが優秀という判断になる場合があります。
(同期できない部分は、手で伝票計上を入れることでカバーできる問題はありません)

7.番外編2(無料期間)

色々書きましたが、使ってみないと使用感が分からないため、つべこべ言わず、無料期間内で両者の使用開始することもオススメします。


ーーーーーーーーー以下は経理的観点(会計プロ向け)ーーーーーーーーー

総じた印象では、freeeは過去の会計システムの概念に捉われない会計の提案やテクノロジーとの連携を意識されたデザインであり、マネーフォワードは経理に最低限の手での起票がある前提で使いやすいプロダクト設計を目指しているという印象です。
新しい仕組みで戦うのか、従来の設計で戦うのか。
ポリシーの違いかと思います。

8.データ領域

freee
作業行う年度は1つだけの選択になりますが、以下の場合で過去3期間遡れます。
・BSPLの3か年比較
・PLの月次推移(表示は12ヶ月分ですが、期跨ぎ可能)
これに伴い、過去の伝票を開きながら、当期へ複製ということも可能です。
あるタグの月次推移を追っていけるなど、経営管理に役立ちます。

私はこのfreeeの柔軟な発想のデザインに感動しています。

マネーフォワード
同様に作業を行う年度は1つだけの選択になります。
過年度の伝票を開いたり複製したりすることはできません。
(BSPLの前期比較は可能)

※以下のように2つアカウントを使うことで他年度参照する方法はあります。

9.未登録伝票の一括登録

口座同期してきた未登録伝票を一括登録する機能がめちゃくちゃ便利です(クリック回数が減ります)。
freee
プロフェッショナルプラン以上でないと使えません。

マネーフォワード
プランに関係なく使用可能です。
※この例では、10件の伝票を1ワンクリックで登録!

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10.セル操作風起票(振替伝票)

freee
なし

マネーフォワード
freeeになく、マネーフォワードにある機能として、総勘定元帳の画面上でのコピー機能です(新機能(β)という名前)。
このように、エクセルのようにセル操作風に伝票起票でき、大変便利です。

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11.取引

振替伝票に慣れ親しんだ方にとって、取引ってなんだ?ということですが、収入取引、支出取引と、伝票でなく取引で考えるという発想がクラウド会計になります。
仕訳(伝票)が分からなくても、取引(お金が動く)なら感覚的でわかるでしょという新しいニュアンス。

※入出金で帳簿が動くイメージ

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(スクショはfreee公式youtubeより拝借)

freee

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マネーフォワード

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両者、同じことを言っていますが、本家freeeの方が画面がリッチです。

12.OCRでのAI機能

現金払いの領収書が100枚ある場合、手入力が大変ですが(現金の動きの同期はできないため)、両者簡単に解決するためのプラクティスが設けられています。

freee
ベーシックプランからファイルボックスでのOCR機能が利用できます。
ここにPDFやJPEGをどんどん取込み、AI機能で仕訳候補を起こします。

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天才すぎます。

マネーフォワード
マネーフォワードクラウドにはOCR機能が搭載されています。
マネーフォワードのグループ会社が運営するSTREAMEDに領収書PDFを取込み、伝票起票をしてもらったデータをマネーフォワードでAPI連携で反映します(STREAMED側の人力作業の都合で、繁忙期では2営ぐらい待ちます)。
料金はプランによりますが、20円/1伝票のイメージです。

※STREAMEDの紹介動画を貼っておきます。

いずれしても、領収書の伝票計上は大変であるため、現金利用をなくす業務構築がキモであると感じます。


13.エクセルインポート

振替伝票や取引が多量にあり、それをエクセルでまとめて計上してしまおうというアプローチの際に使う機能になります。

freee
エクセルインポートから、csvでなくxls,xlsx形式でアップロードし③で列ごとの意味を画面上で付与していきます。
取込様式を指定されていない点が、斬新です。

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マネーフォワード
仕訳帳のインポートから、指定フォーマットに沿って仕訳を入れ、それをインポートします。

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14.減価償却費

両者、固定資産台帳が機能として設けられていますが、償却資産税の申告に対応していないなど、税方面で不十分です。
顧問税理士に税務システム上で固定資産管理を行い、減価償却費を教えてもらい振替伝票により計上する実務があります。

15.納税額の試算

freee
その時点の消費税状況・税引前当期純利益状況から納税額の試算を行う機能があります。
ざっくり把握したい場合はここで十分なのでとても重宝しています。
(顧問税理士に計算してもらう手間と比べるとめちゃくちゃ早い)
レポート→資金繰りレポート→納税額試算(β版)

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マネーフォワード
なし。



16.消費税集計表

決算時に10%、8%(軽)の税込売上・税込仕入高を把握し、消費税計算を行います。

freee
科目別の消費税区分集計表しか表示できず、画面いっぱい広がってしまい、視認性が落ちます。


マネーフォワード
見やすい。

17.確定申告

・個人事業主
freee、マネーフォワードに差がなく、提出に耐えうる確定申告書作成が可能です。

・法人
freee
最低限レベルの別表が用意されており、電子申告の提出まで可能です。
規模が大きくなる場合は、他の別表が必要であったり、消費税も重要になってきたりとしますので、税理士に相談頂くことをご検討下さい。

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マネーフォワード
そもそも対応しないという方針です。

現在、マネーフォワード クラウド会計では法人税の申告には対応しておりせん。

※両者、数ある税務システムの中でNTTデータの達人とはデータ連携が可能になっておりますが、皆様が確定申告のために、達人を別途購入し申告されることはまずないだろうと察します。よって、ここの話は税理士向けの機能となります。



18.他サービスとのAPI連携

DX時代のコーポレート機能の業務フローを考える上で、クラウド会計を軸に上流・下流とのスムーズな連携設計がキモになると考えています。

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(畠山のイメージ図)

freeee
freeeは積極的にAPIを解放しています。
今後は幅が広がることが想定され、コーポレート機能を自由に設計しやすい点ではfreeeに軍配が上がりそうな印象を持ちます。

・freeeから自動でスプレッドシートへデータ出力
・freeeからLINEへの入出力情報の通知
・slackによる勤怠打刻
・宝印刷のX-smartとも繋がるよう

zapier、Anyflow等のツールとツールを繋ぐiPaaSも、freeeなら利用可能性が出てきます。(マネーフォワードは未対応)

マネーフォワード
API解放に消極的な印象。



19.IPO対応

両者ともIPOで利用された実績多数で遜色ありません。
ご参考に利用会社抜粋を記載致します。
プランは内部統制機能のある下記プラン一択になります。

freee:エンタープライズプラン
マネーフォワード:会計プラス(エンタープライズ)

freee

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マネーフォワード

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20.おわりに

第1版の際には、プロダクトとして完成度に遜色ないため、"好みの問題"と記載しましたが、第2版では、好みの違いが具体的にわかるように、機能対比を細かくお伝えできる構成に変更致しました(改めて読み返すと、前回の記事では、結局何も言っていないという印象を受けたため笑。アクセス数も多く頂戴し、大変驚きました)。

デザイン概念、インターフェースの使い勝手、タグの使用可能数など様々な切り口から両者の特徴・カラーが表れており、どの特徴を優先していくのかどうかで、選択が変わると思います。

皆様のクラウド会計の利用や活用に資するように、私も研究を続け、引き続き役立つ情報発信を続けていければと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

21.改定履歴

2020/11/07 第1版
2021/04/27 第2版

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