「よくわからないけどすごいもの」とキャラクター

心理学の歴史を振り返ると、その当時の最先端の科学に刺激を受けて「心もそうなっているかも?」と考えた研究者が出てきます。

例えば、心理学が哲学から科学になったのは、ブントという心理学者がライプチヒ大学に心理学実験室を作った1879年だと言われていますが、

その実験室は、その当時発表された元素周期表からインスピレーションを得て「全く無秩序に見える物質の世界が、こんなに規則的な周期表に表されるなら、無秩序に見える心にも元素のようなものはあるかもしれない」と考えて『心の元素』を見つけようという目的で作られたものだったそうです。

最近、量子の研究が進むなかで『心も量子が作っているのかも』というアイデアが出てきているそうですが、心の元素を見つけようとしたブントに似ているなぁと思います。

そして、そういった最先端の『よくわからないけどすごいもの』は、アカデミック以外の世界でも喜ばれますので、それを利用する心理学者もいました。

例えば、メスメルという心理学者は、その当時の大衆の、『最近発見された電気や磁気というものに生命の謎を解くカギがあるのではないか…』という期待を利用し、磁石や電線等で雰囲気を出した部屋で『磁気があなたの心を治します!!』と催眠暗示をかけてヨーロッパ中の人気者になりました。

もちろん、磁石や電線は何にも関係はなくて、催眠をかけられた人の『なんか電気や磁気ってよくわからないけどすごい』というイメージに効果があったのです。

ちなみにこのときメスメルが雰囲気を高めるために来た衣装や持った杖は、吸血鬼ドラキュラや、マジシャンの衣装に影響を与えました。またその当時『電気は生命と関係がある』ということを示すために、死体の神経に電気を流して手足を動かしてみせるという実験ショーがよく行われていたそうですが、それはフランケンシュタインのモデルになりました。

そういう歴史を振り返って現代の状況をみると、最近の『なんか量子ってよくわからないけどすごいらしい…』と皆が思っている状況は、メスメルの電気の時と同じじゃないかなぁと思います。実際、そのイメージを使った商売も出てきているようです。

さてさて、電気が発見されたときのわくわくは、電気が当たり前のものになった現代でも愛されるキャラクター、ドラキュラやフランケンシュタインを生みましたが、量子力学の発展は、どんなキャラクターを生むんでしょうね?

そしてそのキャラクターは、量子力学が当たり前になった未来でも、愛されるでしょうか?

楽しみですね(*^_^*)

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