試し行動と交流分析のゲーム

心理学の世界には『よく似ているけど違う』というものがたくさんあります。
その中の一つに試し行動と交流分析のゲームがあります。

試し行動は、相手が信頼できるかどうか試すためにわざと相手を困らせる行動をするものです。これは『もし私があなたに何らかの不利益を与えたとしても、あなたは私を見捨てずに愛してくれますか?』という疑問を行動で問うもので、主に言語能力が発展途上の子どもが行います。

交流分析のゲームは、主に幼少期の経験から『自分と相手、両方を肯定することは私には不可能だ』と無意識に思い込んでしまった人が『自分を否定』『相手を否定』『自分も相手も否定』という3パターンのコミュニケーションのどれかをしてしまうというものです。

最初からこの三つのどれかを前面に出すとコミュニケーションそのものが始まらないおそれがありますから、最初は理性的な会話を始めるふりをして、途中から上記の3パターンのどれかに入ったりもします。

(例;悩みを相談したいと言って会話を始め、途中から相手の対応や提案をいろいろな理由をつけて全て否定し、最終的には『適切な対応や有益なアドバイスができない相手を否定』『悩みを抱えたままの自分を否定』して終わる、等)

どちらも『わざと相手を困らせる』コミュニケーションを繰り返しますし、その根底にあるのは『コミュニケーションをとりたい』という気持ちですので、共通する部分があります。

違いは、試し行動の場合は、何回か繰り返された後『この人はこの人にとって不利益が生じても私を見捨てない』と確信できたら止まるのに対して、交流分析のゲームはずっと続けてしまうということです。

例えば、高校で不良がタバコを吸うという行動では

『こんな私でも、先生は見捨てずに全身全霊で向き合って指導し続けてくれるだろうか?(助けて欲しいけど、助けを求めて拒否されたらつらいから、この行動を見て指導に来てくれ!)』と思っている場合は、信頼関係が出来たら問題行動が止まりますので試し行動(SOSでもあります)ですが

『先生達も俺の親と同じで、俺の気持ちを一切考えずに俺を先生達の都合のいいように変えようとしやがるんだな…、先生達がどれだけ指導しようが俺が変わらないことで、先生達が無能だってことを証明してやる』と思っている場合は問題行動がずっと続きますので交流分析のゲームです。

そして、さらにややこしいことに、100%試し行動だったり、100%交流分析のゲームだったりすることはなく、その二つが混じっていることがほとんどです。

言い換えると問題行動を起こしている子どもの心の中は『あんたは信頼できるのか?もしそうなら助けてくれ』という気持ちと『あんたも敵なのか?』という気持ちがごちゃごちゃに混ざっていて、自分でもよく分からなくなっています。

やっぱり教育において大事なのは信頼関係で、学生・生徒に信じてもらうには、まず教員が学生・生徒を信じることが大事なんだなぁとしみじみ思います。

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