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「ストレスに対処する心理学的方法」

ストレスに対する心身の反応は、緊急事態に対処するためにそれらが活性化している状態ですので、短時間ならあまり害はありません。むしろ、事態を打開する力になります。

問題なのはストレスが長時間続いたときに、心身が疲れきってしまい、免疫力などが下がってしまうことです。

従って、疲れきってしまう前にストレスの原因から離れ、栄養をとって休息することが大事です。

そうすると、またストレスに対処する力が回復します。

ここで問題になるのはイメージの力です。人間の想像力はとても強力ですので、想像するとイメージしたものが実際に目の前にあるのと同じ効果を心身にもたらします。

従って、ストレスの原因を思い出したりしてイメージしてしまうと、せっかくストレスの原因から物理的に離れていても、ストレスの原因に直面したときと同じ反応が心身に起こり休めません。

しかし、そういうときに「考えないようにしよう」と意識すると余計に考えてしまいます。

(これをシロクマ効果と言います。「シロクマの事を考えないでください」と言われた人が普段よりシロクマのことを考えてしまったという実験で示された効果です。)

それを防ぐためには、別のことを考えたり、下記の(4)ストレス解消の道具箱に書いたようなことをするのが有効です。

また、人間は今の心身の状態と似たような状態のときのことを思い出しやすい(これを文脈効果といいます)ので、心身を緊張させるとストレスの原因を思い出しやくなりますし、休めません。従ってリラックスする方法を知っておくのも大事です。

(もっとも、軽い運動などをするのは意識をストレスの原因から逸し、かつ、その後の睡眠を深くしますのでお勧めです)

そこで、リラックスする簡単な方法をご紹介いたします。

(1)「呼吸法」
緊張しているとき、呼吸は浅く早くなります。逆にリラックスしているときは呼吸は深くゆっくりになります。このように呼吸と心は連動してますので、意識的にゆっくりめな腹式呼吸を数回行うだけでもかなりリラックスできます。

(2)「漸進的筋弛緩法」
また、心と体も連動してます。心が緊張しているとき、連動して体のどこかに力が入ってます。体の力が入っている部分を見つけて、そこを緩めると心の緊張も解けます。

緩めるのが難しい場合は、一度思い切り力をいれてから脱力してみましょう。思い切り力を入れると、その直後は簡単に力を抜くことが出来ます。

どこに力が入っているかよくわからない場合は、腕、足、肩、胸、背中、お腹、顔…と順番に力を抜いていきましょう。最終的に全身の力が抜けたとき、心もリラックスしています。


どうしてもストレスの原因を考えてしまうときは…

(3)「解決指向型カウンセリングテクニック」を試してみましょう。

感情的になっているときは脳の扁桃体というところが活動してます。扁桃体は脳の前頭前野というところが働きだすと静まります。そして前頭前野は理性的に考えるとき活動します。従って、気になっていることや心配な事に対して理性的に考えてみると、感情が収まってリラックスできます。

例えば

「最悪を0、最高を10ポイントとすると今いくつかな?」

「過去でもっとも良かったときはいくつだろう?その時は、何が良かったんだろう?過去の良かった状態の原因を復活させるにはどうしたら良いだろう?」

「これから、1ポイントだけ上げるにはどうしたらいいだろう?協力してくれる人や、使えるものや制度は何があるだろう?」

等々考えてみると、けっこうリラックスできます。


また、同じストレスの原因に対して、ある人は強いストレスを感じ、別のある人はほとんどストレスを感じなかったりします。

その違いは、そのストレスの原因に対して「対処できる」と思ってるかどうかによって決まります。

(ラザロスのストレスの二段階評価理論ではこの前の段階として「有害か無害か?」の評価がありますがここでは省略します)。

人間は、ストレスの原因に対して「対処できる」と思うとほとんどストレスを感じませんし、「対処できない」と思うと強いストレスを感じます。

そこで、日頃からいろいろなストレスへの対処を考えておくとストレスを感じにくくなります。

例えば

(4)「ストレス解消の道具箱」
①ストレス解消法を思いつく限りたくさん書いてリストにします。このとき攻撃的なもの(誰かの悪口を言う、何かを殴る等)や、体に負荷がかかるもの(暴飲暴食、アルコールをとる等)は逆にストレスを高めるのでリストにいれません。

例;

1.ストレッチする。

2.深呼吸する。

3.好きな音楽を聴く。

4.軽い運動、ラジオ体操やジョギングなどをする。

5.美味しいものを食べる。

6.読書する。

7.ひたすら寝る。

8.宝くじが当たったら何するか想像する。

9.好きな人のことを考える。

10.温泉に入る。

11.カラオケで歌う。

12.料理をする。

13.瞑想する。

14.自分が信じている神様や仏様、ご先祖様…等に祈る。

15.海や山に行く。

16.おしゃべりをする。

17.日曜大工で何か作る。

18.ブランコに乗る。

19.植物に水をやる。

20.掃除をする。

21.猫と遊ぶ。

22.ドライブをする。

23.旅の計画を立てる。

24.踊る。

25.得意な科目の勉強や、得意なスポーツをする。

26.散歩する。

27.俳句や短歌、川柳、詩等を作る。

28.絵を描く。

29.好きな芸能人の写真をみる。

30.もし夢が叶ったらどうするかを想像する。

31.幼いころの幸せな思い出にひたる。

32.ぬいぐるみをかわいがる。

33.楽器で得意な曲をやる。

34.ゆっくりお茶を飲む。

35.自分や家族、友達のいいところをそれぞれ5つ以上考える。

36.誰かのお手伝いをする。

37.小物を作る。

38.おしゃれを楽しむ。

39.自分が正義のヒーローになって悪を倒し大切な人を守る妄想をする。

40.タイムスリップして好きな時代に行く想像をする。

41.小説や童話を書く。

42.トップモデルになったつもりで鏡の前でポーズをとる。

43.美術館や博物館に行く。

※これらは例ですので他にもいろいろ考えてみてください

②ストレスを受けたときに、"①"で作ったリストにあるものから、そのストレスに効果のありそうなものを一つ選び、実際に使ってみます。

そしてそのとき、「これまでの人生で最悪のストレスを10、全くストレスを感じないを0」として、そのストレス解消法の使用前と使用後の状態を評価してリストに書き込みます。

状況(上司に理不尽に怒られた)
→この時のストレスの度合い( 7 )

ストレス対処法(深呼吸)
→使用後のストレスの度合い( 4 )

※もちろんリストの形式は自由です。御自分にとって分かりやすいものを作ってください。

③ いろいろなストレス状況に会うたびに”②”の方法でリストのストレス解消法を一つ一つ試していき、ストレス軽減効果が高かったものをピックアップします。またそのとき、上記の例のように、その対処法がどんなタイプのストレス状況に対して効果があったかも記録します。

すると「こういうストレスのときには、こういう解消法」というストレス解消法の道具箱が出来上がります。この道具箱を作るだけで『私はどんなストレスを受けても、それにぴったりの解消法があるから大丈夫』と思えてストレスそのものをあまり感じなくなります。


(5)ソーシャルサポートを意識する

何か困ったことがあったときに助けてくれる人や制度、(これをソーシャルサポートと呼びます)をなるべくたくさん書き出します。

すると、『私は何か困ったことがあっても大丈夫』と思えるので、ストレスをあまり感じなくなります。

例えば下のような表をつくり、その記入欄に思いつくかぎりたくさんの当てはまる人の名前を入れていきます。

表1.問題解決を手伝ってくれるサポーター(各々なるべく沢山挙げてみましょう)

1. 経済的に困っている時等に相談にのってくれる人

(                   )

2. あなたが病気で寝込んだ時に身の回りの世話をしてくれる人

(                   )

3. 引っ越しをしなければならなくなった時に手伝ってくれる人

(                   )

4. 分からないことがあると良く教えてくれる人

(                   )

5. 体調の悪い時、家事を代わりにやってくれたり、手伝ってくれる人

(                   )

6. あなたが今どんな状態か教えてくれる人         

(                   )
              


表2.心の支えになってくれるサポーター (各々なるべく沢山挙げてみましょう)
1. 会うと心が落ち着き安心できる人

(                    )

2. 気持ちの通じ合う人

(                    )

3. 常日頃あなたの気持ちを敏感に察してくれる人

(                    )

4. あなたの喜びを我が事のように喜んでくれる人

(                    )

5. 個人的な気持ちや秘密を打ち明けることの出来る人

(                    )

6. お互いの考えや将来のこと等を話し合う事のできる人

(                    )

これらを書くと、今まであなたが思っていたより、たくさんの人があなたの幸せを願い、あなたを支えてくれていることに気づけます。そして気づくことでストレスに強くなれます。

※この記入欄の項目(~る人)は例です。いろいろ他の項目も考えてみてください。

※この記入欄の項目の「人」を「利用可能な制度」に変えていろいろ調べてリストアップするというのもストレス軽減効果があります。


(6)自己催眠(対人ストレスのバリアを作る)

①夜寝る前のぼーっとしている時間に、半透明のバリアをイメージします。ありありとイメージ出来たら、『このバリアは、私が拒絶したものをはねかえす』と心の中で何度もゆっくりつぶやきながら眠りに落ちます。これを何日か繰り返します。

②誰かに何か嫌なことを言われたり、言われそうになったら上記のバリアをイメージして『私は拒絶する』あるいは『この悪意を私のバリアははねかえす』等々…と心の中でつぶやきます。

(イメージするバリアや暗示の言葉は、自分にとってイメージしやすいもの、暗示にかかりやすい言葉に変えてもOKです。例えば、常に自分の全てを覆うバリアをイメージしておいて『このバリアは、私が許可したものだけを通す』と暗示をかけた方が安心出来る方は、そうしてください。)

自己催眠は、うまくいく人とうまくいかない人がいて、ちょっと練習も必要です。

(あと、イメージする力が強すぎて、コントロールが出来なさそうな方はしないほうがいいこともあります)

しかし、うまくいくと、誰かに何か言われても、ちょうどテレビの画面の向こうで怪物が暴れたり怖い人が何か言ったりしても平気でいられるように、バリアの向こうの人の言動が気にならなくなります。  


ちなみにこの方法は

・人はリラックスしているとき暗示にかかりやすい

・暗示の言葉は「現在形の短い文」が良い、否定文はあまり適していない

・イメージしたものは、それが実際にあるかのような影響を心身に与える

という原理を応用したものです。

(これらの原理がどれくらいあてはまるかも状況による差や個人差がありますので、例えば、暗示の言葉に否定文を使っても、うまくいくこともあります。)

この原理を応用すると上記のバリア以外の方法も作れます。ご自分にあった方法を作ってみましょう。


お試しあれ(^^♪

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