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内向的な人が黙殺される組織はもういらない

人間の特徴を大雑把に2つに分けるとすると「外向的」な人と「内向的」な人がこの世の中には存在します。この記事では外向的な人のことをエクストラバート、内向的な人のことをイントラバートと呼ぶことにしますが、この世の中に存在する人間の2人に1人、つまり半数はイントラバートだと言われています。

エクストラバートの持つ特性は思ったことやひらめいたことをすぐに口に出し、人と対話することでアイデアを膨らませ、「話しながら考える」ことを好むこと。
反対にイントラバートは、口に出す前に熟考し、考えや論調がまとまったところで発言をする「考えてから話す」ことを好むと言われています。

ということは、エクストラバートとイントラバートが会話をする場合、この特性が齟齬や不和を生む可能性を秘めているということです。
これはテレビのバラエティー番組を見ていると顕著なのですが、エクストラバートと思える芸人さんが小気味よく面白い発言をして、それを受けて他のエクストラバートな芸人さんがテンポよく会話を進めていく。つまり「話しながら考える」エクストラバート優位な会話が展開していくということです。
そして、イントラバートな芸人さんはその流れについていけず、突っ込まれ叩かれる。あるいは「もうその話題は終わってるんだけど」といった形で発言の遅さをバカにされるというのが番組の面白さの一つになっていたりします。

私はイントラバートの一人なので、こんな経験を会社やプライベートなお付き合いの中で様々経験してきました。
例えば会議の席で、早いペースでディスカッションが進んでいったとすると、私はそれになかなかついていけず、会議の最後の方になって考えがまとまり、「あの、先程の件なんですけど・・・」と声を上げるわけです。
すると周りの皆さまからの冷ややかな視点とともに「言いたいことあったんならさっき言ってくれればよかったのに、また議論し直しだよ」といった言葉を受けることになります。
別に言いたいことがなかったわけではなく、自分の中で咀嚼する時間が必要だっただけなんですが、世の中はどうもエクストラバート寄りに作られているように思えてなりません。
これは何も日本に特化したことではなく、アメリカにおいてもエクストラバート優位の社会というものが構築されているような印象を受けます。
例えば、会議やプレゼンテーションなどにおいて人前で話すリーダー的な役割を持つ人は「早口」で「声が大きく」「淀みなく」話ができる人が評価される傾向があります。
つまり、じっくり言葉を吟味しながらゆっくり話す人は無能であるというレッテルを貼られる傾向にあるということでもあります。
こんな事例からも社会はエクストラバート寄りにできていると思えてなりません。

私のコーチングを受けに来るリーダーの中にもイントラバートな特性を示す方は意外に多く、そういった方が抱えやすい問題の傾向があることもわかってきました。
イントラバートなリーダーの場合、十分に時間を取って対話のできる「部下」へのケアは得意分野だったりします。1:1のコミュニケーションを取ることでじっくり対話をすることができるので、部下に尊敬される傾向があり、360度評価を実施した場合も部下からのスコアが高い傾向が見られたりします。
反面、部門長会議など同格のリーダーや会社の取締役などが出席する会議ではなかなか発言ができず、プレゼンスが発揮できないという課題が起きやすい傾向があります。これは他部署のリーダーから見た時に「何がしたいのかわからない」「報告や相談が遅い」というクレームにつながりやすく、リーダーの評価を下げる要因になります。そして、より高い職責に向けてのキャリア形成にマイナス評価をもたらします。
イントラバートなリーダーとしては、別段そういう意図があっての行動ではなく、すべて「考えてから話す」ことの結果なのですが、そういった事情がなかなか受け入れられないというジレンマがあります。
こうやって組織の中のイントラバートは黙殺されていきます。

ダイバーシティー、つまり多様性の話は昨今の企業において避けて通れない話題の一つとなりました。そして、イントラバートを受け入れることもそのダイバーシティーのテーマの一つだと思います。
イントラバートを黙殺せず、戦力としてより有効に活用するにはどんなことが必要なのでしょうか。
その答えの一つがコーチングスキルを活用することです。特に「会話のスピードを下げること」と「問いを立てること」が有効です。あなたの組織にイントラバートと思える仲間やリーダーがいて、何か発言したそうにしているけどタイミングを失っているような人がいたら、ぜひ会話のスピードを落としてみてください。
つまり、会話を一旦止めるということです。エクストラバート優位のスピードでは、イントラバートは入ってこれない、ということへの理解が必要です。
そして「大丈夫?」とか「何か言いたいことあるんじゃないですか?」など相手が話を切り出しやすいきっかけを作るための問いかけ、そして話を切り出すまでの少しの沈黙を作る。こういったスキルがイントラバートの発言を促進させます。

イントラバートにだって言いたいことはたくさんある。素晴らしいアイデアもたくさん持っている。それを活かすも殺すも、関わり方次第です。ここに工夫ができないか。そんな問いを持つことの重要さについて、広く認知されていくような世の中を作りたい。

最後に一つだけ。ここまでお読みいただいて不快になっているエクストラバートの方がいたらごめんなさい。私がお伝えしている意図は、エクストラバートが悪いとか、イントラバートが優れているとか、そういう次元の切り捨てをすることではありません。
イントラバートの特性をわかった上で双方が知恵を絞りコミュニケーションを進めていくことができれば、すべての人の力を集結した組織運営ができる、そんなことを提唱しているのです。

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