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2021年の日本経済と世界経済を読む

※この文章は大学のレポート課題にて執筆したものです
※執筆日時2020年12月13日

1.はじめに

 昨今、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。2020年11月3日に第56回アメリカ合衆国大統領選挙が行われ、第46代大統領に民主党候補のジョー・バイデンが当選した。
 また、民主党と共和党ではそれぞれ政党の方向性が異なる。民主党は「大きな政府」と言われている。例えば、社会保障や生活保護の充実、妊娠中絶の容認など政府が市場に介入することで国を繁栄させる政策を主とする。一方、共和党は「小さな政府」と言われている。例えば、減税政策を行うことで、特に富裕層や企業を優遇するような政策を行う。その結果、経済格差が拡大すると懸念されている。また、温室効果ガスの排出規制のためのパリ協定からの離脱など自国第一中心主義とも形容される政策が多い点が特徴だ。このような政党による方向性の違いはあるものの、アメリカにおいても現在進行形で新型コロナウイルスの感染者数は増加している。
 本稿では、コロナ禍における世界経済、日本経済を振り返り、バイデン政権の今後を分析していく。

2. 新型コロナウイルスによる世界経済の影響

  2019年12月、中国の武漢市で新型コロナウイルスが確認されてから全世界に感染が拡大した。そして、渡航制限や外出自粛により人々の経済活動が停滞した結果、全世界的に経済的な悪影響を受けてしまった。本稿執筆時点(2020年12月12日)において新型コロナウイルスの感染者数が累計で7000万人を超えたとされている。死亡者に関しては約160万人と依然として拡大を続けている。独立行政法人労働政策研究・研修機構(2020)によると各国で2020年の完全失業率の変化に違いが見られた。

表1-1 完全失業率(四半期、季節調整済)

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(出典:独立行政法人労働政策研究・研究機構,2020)

表1-2完全失業率(月次、季節調整済)

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(出典:独立行政法人労働政策研究・研究機構,2020)

 直近3年間を振り返ると諸外国の完全失業率は減少から横ばい傾向であった。しかし、2020年以降ほとんどの国において完全失業率の上昇が発生した。アメリカにおいては2020年4月の14.7%がここ数年のピークである。また、日本、イギリス、イタリア、韓国はアメリカほどの極端な上昇は無かった。そのため、完全失業率だけに注目するとアメリカ以外の国では新型コロナウイルスの影響がほとんどないと考えることもできる。しかし、各国の実質国内生産を比較すると経済に影響があったことが分かる。

表2.実質国内生産(前期比、四半期ベース,季節調整済)(2019年~最新結果)

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(出典:独立行政法人労働政策研究・研究機構,2020)

 表2より各国、新型コロナウイルスによって経済活動が停滞したことがわかる。この表からは新型コロナウイルスによる経済の影響が時間差で表れているとこともわかる。例えば、世界で最初に新型コロナウイルスの感染が発見された中国が諸外国に先んじて実質国内総生産がマイナスに転じた。その後、諸外国も同様の動きとなった。そして、都市封鎖(ロックダウン)や緊急事態宣言による外出自粛が解かれた後、2020年7-9月期で高い上昇が見られた。この伸びは2020年4-6月期等の経済活動の制限が緩和された結果、個人消費を促した結果によるものだと考えられる。このように各国、新型コロナウイルスによってここ数年で一番大きい経済的な落ち込みを記録した。

3. 新型コロナウイルスによる日本経済の影響

 2020年1月以降、日本国内においても新型コロナウイルスの感染が確認されてから依然として感染が拡大している。そんな中、日本も他国と同様に、経済的なダメージを受けた。岡田(2020)によると新型コロナウイルスによる影響が大きい業種を「コロナ7業種」とした。それは①陸運業、②小売業、③宿泊業、④飲食サービス業、⑤生活関連サービス業、⑥娯楽業、⑦医療福祉の7業種である。総務省統計局(2020)によるとこれらの業種を含んだサービス産業の推移がわかる。

表.3月間売上高の前年同月比の推移(サービス産業計)

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(出典:総務省統計局,2020)

 表3から読み取ることができるように2019年10月からはやや減少から横ばいであった。そして、2020年からは本格的に売上の落ち込みを示し、現在に至る。まだ、感染が拡大する前の2019年後半もやや減少傾向であったことは2019年10月1日から消費税率が一部品目を除いて8%から10%に増税されたことが影響されている。特に9月から10月の落差があることは増税前の駆け込み需要により一時的な上昇を見せ、減少したとされる。
 また、2020年4月7日から5月25日の間、緊急事態宣言が発令された。その結果、外出自粛による経済活動の停滞から2020年3月から5月までは大幅な減少をした。その後、外出自粛の緩和による経済活動が活発になったことから上昇傾向へと転じた。しかし、2020年は前年同月比ではマイナスのため、新型コロナウイルスによる影響は非常に大きいものとなっている。
 梅屋(2020)によると新型コロナウイルスによる影響が大きい業種とされる「コロナ7業種」からさらに対人接客業務を前提とする業種を「コロナ対人4業種」とした。それは①宿泊業、②飲食サービス業、③生活関連サービス業、④娯楽業の4業種である。これらの業種は対面接客を前提としていることから外出自粛による売上の減少が特に大きいとされている。

表4.売上高-産業大分類別(2020年9月)

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(出典:総務省統計局,2020)

※1)「学術・開発研究機関」及び「純粋持株会社」を除く。
※2)「家事サービス業」を除く。
※3)「学校教育」を除く。
※4)「保健所」、「社会保険事業団体」及び「福祉事業所」を除く。
※5)「政治・経済・文化団体」、「宗教」及び「外国公務」を除く。

 表4はサービス業全体の月間売上高を各産業別に分けたものである。この表から各産業の前年同月比に注目すると、「対人コロナ4業種」である「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」のどちらも-20%以上の減少であった。他にも「運輸業、郵便業」も上記の2つの次に減少幅が大きい。そのことからも新型コロナウイルスによる影響を「コロナ7業種」、特に「対人コロナ4業種」は受けていると考えられる。

4. コロナ禍におけるバイデン政権の今後

 全世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大している中、2020年11月3日に第56回アメリカ合衆国大統領選挙が行われ、第46代大統領に民主党候補のジョー・バイデンが当選した。現状、アメリカは諸外国と比較して、依然として完全失業者数が多い。

表.5完全失業者数・実数(月次、季節調整済)

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(単位:万人) (出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構,2020)

 表3は完全失業者数をまとめたものである。表1-2と表5より依然としてアメリカは諸外国と比較して完全失業者数の割合が高い。ここ数年間ではアメリカにおける失業率はそれほど高いものではなかった。しかし、2020年に新型コロナウイルスの流行による業績低下を受けて多くの労働者が解雇されたことによって急激に完全失業者率が上昇した。その理由にアメリカには「At Will」の原則に基づいた雇用体系が多いからだ。それは日本語にすると随意契約と呼ばれる。そのため使用者は労働者をいつ、いかなる理由で解雇できるため諸外国と比較して完全失業者数、完全失業率の上昇を招いた。そのことからも、バイデン政権では失業者を救うような政策が求められる。そこでジョー・バイデンは次の経済政策を重視する。①製造業と技術分野で雇用を創出し、高収入を実現すること、②インフラストラクチャーとクリーンエネルギーへの投資、③介護と教育における労働力の創出、④人種の平等を目指すといった4点が重点政策である。また、具体的なものとして年間40万ドル未満の収入の人には増税しない一方、40万ドル以上に関しては増税をするといった低所得者層を助ける政策がある。また法人税率を現行の21%から28%に引き上げる予定など富の格差を是正する政策が行われる予定だ。傾向としては低所得層に対しては減税を、高所得層や企業に対しては積極的な課税施策を行うのが特徴であった。本稿執筆時点(2020年12月13日)においてアメリカの累計感染者数は約1600万人とトップクラスに多いものとなっている。加えて、新規感染者数も増加中のため、バイデン政権は新型コロナウイルスを前提とした政策を実行しなければならない状況となっている。

5.おわりに

 本稿では新型コロナウイルスによる世界経済、日本経済、バイデン新政権について分析した。筆者自身、オンライン授業への移行を余儀なくされるといった生活の変化があった。また、コロナ禍においてはオンラインに移行できる業種は働き方や業績においてはそれほどの経済的なダメージは少なかったかもしれない。しかし、前述した「コロナ7業種」では対面接客を前提とする業種が多いため、テレワークができないことや、外出自粛の影響を受けるといった例年では考えられない変化があった。また、コロナ禍においてどう生きていくかは全世界共通の課題のため、引き続き感染対策を実施した上で、収束を待つのみである。

6.参考文献

Joseph Robinette Biden, Jr.(2020). Joe Biden for President: Official Campaign Website https://joebiden.com/joes-vision/ (2020年12月13日参照).

Tax Foundation(2020). Details and Analysis of President-elect Joe Biden’s Tax Plan https://taxfoundation.org/joe-biden-tax-plan-2020/ (2020年12月13日参照).

梅屋真一郎(2020).「新型コロナウイルスが日本経済と雇用に及ぼす影響と対応の在り方」https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/report/cc/mediaforum/2020/forum298.pdf?la=ja-JP&hash=1D3834BE34AD091EDA5A6275D0A3645C9BEDD56C  (2020年12月12日参照).

株式会社パソナ(2020).「海外進出101」https://startupus.pasona.com/tips/atwill/ (2020年12月13日参照).

忽那賢志(2020).「世界最初の症例から間もなく1年 本当は新型コロナはいつから世界に広がっていたのか」https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201206-00211182/ (2020年12月12日)

総務省統計局(2020).「サービス産業動向調査 2020年(令和2年)9月分及び7~9月期(速報)」https://www.stat.go.jp/data/mssi/kekka/pdf/m2009.pdf (2020年12月12日参照).

高田創(2020).「コロナ7業種向け緊急貸出しの返済は困難【高田レポート】」https://www.okasan-online.co.jp/news/spot/takada20200924/#:~:text=%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%81%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD,%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%A6%8F%E7%A5%89%E3%80%81%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
(2020年12月12日参照).

独立行政法人労働政策研究・研修機構(2020). 「国際比較統計:完全失業率」https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c06.html#c06-1 (2020年12月13日参照).

独立行政法人労働政策研究・研修機構(2020). 「国際比較統計:完全失業者数」https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c03.html (2020年12月13日参照).

日本経済新聞(2019). 「消費落ち込み、前回増税より大きく 10月支出5.1%減」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53031880W9A201C1MM0000
(2020年12月12日参照).


日本放送協会(2020). 「アメリカ大統領選挙2020」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/presidential-election_2020/
(2020年12月13日参照).

日本放送協会(2020).「特設サイト 新型コロナウイルス」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/
(2020年12月13日参照).


日本放送協会(2020).「ビジネス特集 経済データで見る新型コロナの半年」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201116/k10012714171000.html
(2020年12月13日参照).


フランス通信社(2020). 「【図解】次期米大統領バイデン氏の政策一覧」 https://www.afpbb.com/articles/-/3315524?pid=22824625 (2020年12月13日参照).

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