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【ライブレポ】生きる理由を見付ける大阪Day2【BUMP OF CHICKEN】Sphery Rendezvous 24/9/29

リリースが古い曲ほど、ライブで対面したときのギャップの大きさに驚く。
普段はリリース時の音源をストリーミングで聴いているが、長いバンド歴を経て歌もバンドもクオリティが半端なく上がっており、深みも厚みも余裕も遥かに高いところで演奏されるからだ。

2024年9月29日、「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous」大阪公演2日目。このツアー4度目のライブ参戦。「Iris」アルバムを引っ提げたツアー。そこに収められた楽曲のよさや素晴らしさはもちろんのこと、今回のセトリに入った既存曲についても、毎回新しい発見と感動がある。それぞれのライブでしか得られない煌めきがある。

ライブ感想

オープニングSE

開演前って、なんだか不思議な静寂があるよね。何万人もが一堂に会しているのに静寂というのがすごく不思議。
そんな中、舞台裏で行われていると思われるメンバー4人の掛け声がスタンドまで聞こえてきてびっくりした。毎回やっているのだと思うけれど、客席に聞こえたのは初めて。

名古屋の時からまたSEが変わってるよね?
名古屋では開演前から大陸系の民族楽器のようなSEが流れていたが、大阪では宇宙空間での交信のような感じになっていて、ちょっとホームシック衛星寄りになってきた印象。「メーデー、メーデー」という音声は、名古屋までは「星の鳥」の前だけだったのが、大阪ではオープニングから入っていた。(と思うけど自信はないw)

進化を続ける楽曲「pinkie」

どの曲も、震えながらしびれるように浴びるように聴いていた。
その中でも今回特に触れておきたいのが「pinkie」。これは2010年4月発売のシングル「HAPPY」のカップリング曲。アルバム収録はされていない。
もともと持っている楽曲の良さはもちろんのこと、歌詞の持つ重さと、長い時間をかけて鍛えられた喉から発する藤くんの声と表現力が、この曲をより深みのある名曲に進化させている。

繰り返す事を疑わずに 無くす事を恐れずに
自分のじゃない物語の はじっこに隠れて笑った
そうしなきゃどうにも息が出来なかった
たいして好きでもない でも繋いだ毎日
(略)
明日に望まなくなったのは 今日がその答えだから
諦めて全部受け入れて でもはじっこに隠して持ってる

by BUMP OF CHICKEN「pinkie」

人との関係性を深く持つことを怖がって恐れ、でも自分からは手を離せない。交わしたことすらあやふやな他愛もない約束を相手に守ることを迫れない。確かめることもできずに自分だけが置いてきぼりのままひっそり隠れて持っている。
物語の主人公になれない自分は、その隅っこにどうにかひっそり身を潜めている。外にも出ていけないのに、本当はあなただけに認めてもらいたいと静かに願っている。

この曲の歌詞は、「正義の味方には見つけて貰えなかった類」と歌われる「Aurora」にどこか通ずるものがあるように感じる。
ライブで演奏されると、普段はしまってあって表に出てこない繊細な感情が日の光に晒されてしまい胸が痛くなるな…。

(ご参考)Auroraについての考察は以前書いたこちらをどうぞ。

バンプの曲たちが幸せだと思うのは、リリースされてから長い時間を経過した曲にもきちんと光を当て、改めて舞台で披露してもらえることだ。
「太陽」~「星の鳥/メーデー」~「レム」に続くのも熱い流れ。

思い出し笑いの「Strawberry」

「邂逅」後の藤くんMC。
「今(大阪)城ホールではめちゃくちゃカッコいいOfficial髭男dismっていうバンドがライブしてるんだって。」
(拍手)
「ん?めちゃくちゃカッコいいバンドに対して向けられたものなら、そういうのはもっと大きくするもんだぜ?」
(より大きな拍手)
「今東京からは歌うフジハラが一人と、歌うフジワラが一人減ってる。
そして大阪では歌うフジハラと歌うフジワラが一人増えてる。
ここまでツアー回ってよく分かったんだけど、ライブは本当にあっという間にすぐ終わる。」
(エエーッ!)
「それは俺が一番思ってる。俺が一番思ってるよ。」

こんなやり取りを経て始まった「Strawberry」。
イントロのサビ部分を歌った後、Aメロ直前で藤くんが「ふっ」っと軽く(たぶん)思い出し笑い。「めちゃくちゃカッコいいバンド」という言葉がなんだか可笑しくなっちゃったのかな。
間奏中「めちゃくちゃカッコいいバンド、BUMP OF CHICKENです!」
もしかしたら、さっきはこれを思い付いて笑ったのかも。
内面を見つめる暗さのある歌詞の多い藤くんに自己肯定感が出てきた?と思ったら嬉しくなった。バンプ、めちゃくちゃカッコいいよ。

君と僕の唄「アカシア」

イントロ中、藤くんが「君と僕の唄だ。君と僕の唄だ!さあ声を聴かせてくれ!」と叫ぶ。
「君たち」でも「みんな」でもない。他でもない「君」とは、まさに一人の個である僕のことだ。2019年「aurora ark」ツアーの翌年に誕生したこの曲は、まさに藤くんとリスナーの関係性を象徴しており、シンガロングも最高に好き。 僕らはきっと、もっともっと遠くまで行ける。そのことを信じられる。名曲。

ラストMCと感想

「夜寝る前に歯を磨いているとき、朝出掛ける前に顔を洗うとき、鏡を見ることが何度もある。その鏡の中の自分をどれだけ探してみても自分が見付からないことがある。君にもあるよな?
なんかいきなり変なこと言いだしたなコイツって思ったかい?
そういう曲ばかり書いてるだろ。君が選んだバンドのボーカルだぜ。
俺はそういうことが結構あるよ。

鏡を見て自分が何のためにいるのか分からなくなる。
穴が開くくらい鏡の中を見ても自分が見付からない。ちょっと好きになってみようって角度変えてみても、どれだけ鏡の中を探しても自分の生きている意味とか価値が見付からない。
メシ食って、寝て、それだけの存在じゃない理由を見付けたいのに見付からない。メシ食って、寝て、起きての繰り返し。
無駄、無駄、無駄…!すべてが無駄!
それは日常の中じゃ決して見付からなくて、でもそんな時ほど鏡をじっと見てしまう。そしてどんなに鏡の中を探しても飽きるほど見た絵しか見付からない。そういうこと、君たちなら分かってくれるよな?

でも、ここに立って君の顔を見たら見付かったよ。
君もそうだろ?今夜は見付けられただろ?たくさん見付かっただろ?
君がいるおかげで45歳のおっさんがこんなに声を出せたんだぜ。
チャマの指が音を出せた。
ヒロの指が音を出せた。
ヒデちゃんの足と腕が音を出せた。
俺の指と喉が音を出せた。
今夜の音楽は君がいたから生まれたんだ。
君がいなかったら今日の音楽は生まれなかったんだ。

愛してるぜ大阪!

大阪にはもう何十回も来ました。
初めて来れたのは音楽をやっていたからなんだ。
最初のうちは数えてた。2回目だ、3回目だ、4回目だって。
今じゃもう何回来たのか数えられなくなった。
その頃の君はここにいるかもしれない。
もう来なくなった人もいるかもしれない。
もう地球にいないかもしれない。
まだ生まれてなかったかもしれない。

大阪、また来るよ。でも、また会えるかなんて分かんねえだろ。
明日でっかい地震が起きるかもしれねえじゃん。ダンプが突っ込んでくるかもしれねえじゃん。次何年後にまた会えるかなんて分かんねえじゃん。
だからこうやって君に会えているのは奇跡みたいなもんなんだ。

でもまた必ずここで君と会える、俺はそんな奇跡を信じて曲を書くからさ。
君が元気じゃなくてもいいよ。もし少しでも俺の声が聞こえたら、数分でもいいから耳を貸してほしい。

気を付けて帰ってね。
バイバイ、またね、おやすみ。」


切羽詰まった、鬼気迫る様子で話された言葉。
藤くんは、いつも今この場にいる1対1の人間として話をしてくれる。
それぞれのライブを、たくさんあるライブのひとつにしない。どのライブも常に一度きり。そのただ一度だけの出来事を、一人ひとりと深く繋がったことを過去の思い出にせず、ずっと思い続けてくれている。
過去に明日を信じて別れたまま二度と会えなくなった出来事があって、それが今を強調させているのかな。僕自身はこれからだって何度でも会えるつもりでいる。でも、お互いにそう思っていたとしても、その関係性が無理やり強制終了されてしまうことだって、考えたくないけれど可能性としては常にあり得ること。
あの時会っておけばよかった、あの時伝えておけばよかったと、決して後悔したくない。その気持ちが表出して藤くんの言葉が生まれてくるのだと思うし、自分もそうありたいと願う。

生きている意味や価値。
BUMP OF CHICKENが28年かけて磨いてきた音楽性、楽曲群、バンドとしての成長。選ばれた歌詞たち。そして築いてきたリスナーとの関係性。どれもが欠かせない価値だしひとつも無駄じゃないよ。
もし万が一、今後ひとつも曲が作れなくなったとしても、価値は減ったり削られたりしないよ。どうかこれからも待ち合わせし続けよう。

同じ空気を吸って過ごした時間を決して忘れたくない。それでも記憶は自分の力ではどうしようもなく削れていってしまうのが切なく苦しい。どうにかこうにか、この日の感情や空気感を忘れずにいようと試みている。

セトリ

2024/9/29「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous」大阪公演(京セラドーム大阪)

本編
0. オープニング「窓の中から」コーラス
1. Sleep Walking Orchestra
2. アンサー
3. なないろ
4. pinkie
5. 記念撮影
6. 邂逅
7. strawberry
8. 太陽
9. 星の鳥~メーデー
10. レム
11. SOUVENIR
12. アカシア
13. Gravity
14. 木漏れ日と一緒に
15. ray
16. 窓の中から
アンコール
1. 宝石になった日
2. ガラスのブルース

BUMP OF CHICKEN

さいごに

大阪行きはもともと予定していなかったが、ライブ2日前に急遽参戦を決め、行きは当日新幹線、ライブ後は夜行バスで帰る0泊2日の弾丸ツアー。
体力的にはしんどかったが、こんな奇跡の夜に立ち会うことができた。来てよかった。
合間を縫って551の豚まんと清十郎のお好み焼きも楽しめたしね。
最後までお読み下さりありがとうございました。


今回のツアー初日(ベルーナドーム)と2週目(バンテリンドームナゴヤ)のライブレポも載せておきます。どうぞお読みください。


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