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「青天を衝け」レビュー19 富と貴とは、これ人の欲する所なり

 おばんです(朝読んでいる方は、おはようござりす)。
 せっかくなので、渋沢栄一が主人公の大河ドラマ、「青天を衝け」で気になったところを考察していきたいと思います。
 とは言っても、あらすじなどは他の方々がわかりやすく書いているので、僕が気になったポイントだけ見ていきます。

 今回は、渋沢栄一が藩の経済政策を実行しようとするときに語った、論語から引用した一文。


正しい道理がなければ、人は信用しない

 渋沢栄一は、一橋家独自の藩札(千円札とか一万円札のようなもの)を発行するしようとするとき、

 ・信用がなければ藩札はただの紙切れだ。
 ・信用は、正しい考え方・行動を続けないと得られない

と言い、論語から以下の一文を引用しました。

 子曰く、富と貴は、是れ人の欲する所なり。其の道を以てこれを得ざれば、処らざるなり。
 貧と賤とは、是れ人の悪む所なり。其の道を以てこれを得ざれば、去らざるなり。

 現代語訳 先生は言われた、「富と高い身分は誰でも欲しがるものだ。しかし、その道(正しい考え方・行動)によって得たものでなければ、そこに安住はできない(富と高い身分は長続きしない)。
 貧乏と低い身分は誰でも嫌がるものだ。しかし、正しい道によって得たものでなければ、それ(貧乏)を避けることはできない。
(『論語』里仁第四 五 より)
(※現代語訳は、下記の参考文献によるものでなく、僕独自のものです)

 実は、この「富と貴は〜」の一文、渋沢栄一の説話の中で、よく引用されるものの一つです。渋沢栄一お気に入りの文章だったのかもしれません。『論語と算盤』では、
 ・仁義と富貴 孔夫子の貨殖富貴観
 ・実業と士道 武士道は即ち実業道なり
あたりで引用されています。『青淵百話』でも、いくつかとりあげられています。また、前回のレビューで触れた、「道徳経済合一説」演説でも引用されています。

 ↓前回のレビュー


間違った利益と正しい利益

 では、信用されるに足る「正しい考え方」とはなんでしょうか。これはシンプルに、「だまし、ごまかしをしないで正々堂々商売をする」に尽きます。生まれついての悪人は別ですが(※)、まっとうな仕事をしてる人でも、自信のなさからか、必要の無い値引きや条件づけ(きつい言い方をすれば「ごまかし」)をすることはよくあります。
 正々堂々と、自信を持って商品を売る・取引をすることが、信用の第一歩だと僕は考えています。

 以下、渋沢栄一の肉声が残っている「道徳経済合一説」という演説から引用します。

 孔子は、義に反した利は、これをいましめておりますが、義に合した利は、これを道徳に適うものとしておることは、富貴をいやしむの言葉は、みな不義の場合に限っておるにみても、明らかであります。「不義にして富みかつ貴きは、我において浮雲のごとし」といい、「富と貴きとはこれ人の欲するところなり、その道を以てせずしてこれを得れば、おらざるなり」というたのは、決して富貴をいやしんだのではなく、不義にしてこれを得ることをいましめたのであります。
(肉声で聞く渋沢栄一の思想と行動 道徳経済合一説 より)


※どうでもいい横道考察…
 孟子は、人間は生まれながら善の考え方(四端による)を持っている。悪い考えは後天的についてくるものだ、と言っています。
 一方、荀子は、人間は生まれながら悪の考え方(今でいう「悪」というよりは、勝手でわがまま、くらいのニュアンス)を持っているので、礼・楽等で教育し、善の方向に導かなければならない、と言っています。
 なので、スピードワゴンがディオに下した評価は、孟子的には間違っていて荀子的には合っている、ということが言えます。

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 『ジョジョの奇妙な冒険』より引用​


参考文献


↓Audible版



「青天を衝け」レビュー記事は↓

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