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総合型地域スポーツクラブにおけるサブスクリプションの可能性

 総合型地域スポーツクラブ研究所、所長の上杉健太(@kenta_u2)です。総合型地域スポーツクラブのマネジメントやアドバイザー、講演・執筆活動、エンジョイスポーツコーチなどをしています。東京都三鷹市で11年間フットサルクラブのマネジメントをして、さらに長野県喬木村で7年間総合型クラブのマネジメントをした後、現在は埼玉県富士見市でクラブ立ち上げ準備中です。

 今日は、『総合型地域スポーツクラブにおけるサブスクリプションの可能性』というテーマでお話したいと思います。

サブスクリプションとは

 一応言葉の説明からしておきます。サブスクリプション(通称:サブスク)は、

一定期間の利用権として定期的に料金を支払う方式。
契約期間中は定められた商品を自由に利用できる。

というものですね。定額制なんて言ったりもしますよね。

事例

 昨日参加させていただいた地域スポーツ関係のWEB座談会で、非常に面白い事例を伺い、それが私の考えていた形の一つと一致していたんです。いやー、面白かった!今回、事例として参考にさせていただくクラブさんは徳島県の『Sowers sports club』さんです。


 Soewers sports clubではどんなサブスクの形を実現させているかというと、

・月額980円で8種目以上のレッスンに参加し放題
・各レッスンの前半1時間が会員無料で、後半1時間は参加費500円がかかる

というように、定額の部分と追加料金の分で費用を回収しているんですね。

(※主催のかたはほぼボランティアとしてやっていて、ご自身の収入にはしていないと思われます!だからこの金額設定)

 実はサブスクというのは、要するにスポーツクラブでいうところの『会費制』とほぼイコールで、あまりそれ自体が珍しいわけではないんですね。
 ただ、総合型地域スポーツクラブの場合は複数種目あり、それぞれにかかるコストや開催回数などに差が出てくるので、なかなかクラブを横断してのサブスク(会費制)って実現が難しかったりします。

 私がアドバイザーを務めている一般社団法人たかぎスポーツクラブの場合は、クラブ年会費5000円と、それぞれの活動にかかる会費を月額で設定しているというようなやり方を採用しています。

 そのあたりをSoewers sports clubでは、「最初の1時間は月額の範囲で無料だよ。後半は参加料かかるからねー」というやり方でクリアしているんですね。ユニークな形ですよね。

サブスクの可能性①

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 私が実現したいスポーツ文化の形の一つに、『複数種目やるのが当たり前にする』があります。
 私が野球をやっていた子どもの頃、サッカーもやりたかったのですが、両者が対立構造にあってできませんでした。
 また、これまでの人生で色々な種目をやってきて、それぞれのスポーツにそれぞれの面白さや学ぶべき点があることが分かっています。
 だからこそ、複数種目をやるのが当たり前の社会になれば、人材育成にも有効だし、他人の価値観を認め合う多様性の高い社会に繋がっていくと思っているんですね。

 それを総合型地域スポーツクラブで実現したいわけですが、参加する種目やクラス単位で会費を設定すると、”それしか行かない”という状態になるんです。もっと流動的に、色々なスポーツに手を出して欲しいなと思うのですが、参加種目を増やすとかかるお金も増えるという仕組みは、どうしてもハードルになってしまうんですね。

 サブスクはそれを飛び越えられるかなと期待しています。最初から複数種目参加する前提の会費設定にすれば、むしろ、「勿体ない」とか「せっかくだから」といったきっかけでも、当初の目当てだった種目以外にも参加するようになるかもしれません。
 一度参加したら後は「合うか合わないか」の話で、合えば続ければいいし、合わなければまた違うスポーツに行ってみたらいい。

サブスクの可能性②

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 もう一つ期待しているのが、『施設が思うように確保できない場合の約束の方法として有効』ということです。分かりにくいですよね(笑)

 まず、行政の支援を受けられない場合、活動場所が思うように確保できないことが想定されます。
 クラブの本質の一つに、『約束』がありますが、最も大事な約束の一つが、『日時・場所の約束』です。「いついつのどこどこでやるよー」というのを決めておかないと、集まれませんから。そしてその日時は、固定されているのが望ましいです。「いつもこの時間のここでやるからね」という約束ですね。今週は火曜日、来週は金曜日というように日時が変わると、参加できたりできなかったりしてしまいますから。

 定期的な活動場所の確保ができないと、この「いつもこの時間のここでやるからね」の約束がいつまで経ってもできず、クラブを立ち上げることができません。

 その点、サブスク形式にして、「会場が取れた分だけ活動をするよ。会費はいつも月●●円で参加し放題だよ」という約束なら、会場が定期的に取れなくてもクラブとしてスタートさせることができそうです。たぶん最低実施回数や日程を知らせる期日などは約束事として決めた方がいいですよね。

サブスクの可能性③

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 実は、日時の約束がちゃんとできないなら、参加費制でやればいいという話もあります。それは大正解だと思います。参加費制なら、参加した分だけ費用負担してもらう形なので、日時が合わなければ参加できず、費用も発生しないので不利益を被る人は出ません。

 ただし参加費制の場合、『参加する必然性』が弱まるというデメリットがあります。行かなければコストがかからないので、「行かなくていいか」となりやすいということですね。
 そうすると実は、参加者が得られるベネフィット(効果)が小さくなるということも併発されてしまいます。
 月に4回参加した場合の1回あたりの運動効果と、月に1回しか行かなかった場合の運動効果、どちらが高いかといえば、明らかに前者ですよね。
 参加者のベネフィットを高める為にも、参加する必然性を高める必要がマネジメントにはあります。

 その点サブスク(会費制)だと、「お金払っているから行かなきゃ」となりやすいんです。それがさらにどの種目にも参加できるとなれば、複数種目に参加する必然になりやすいですよね。

 さらに、経営面でもサブスクは会員数だけで計算ができるのでやりやすいです。予算も立てやすいし、会計処理も楽で、安定します。参加費制の場合は、回収コストもかかってしまうし、会計処理も手間がかかるし、不安定な参加者数で予算を見なければならないし、不安定なんですね。

サブスクを実行するなら

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 ということで、特にクラブの初期段階。まだ行政からも信用されておらず、施設利用の優遇なども一切受けられない段階では、サブスクは効果的な打ち手かなと思います。具体的に並べてみると・・・

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5