アナリストによる横浜FM vs 鹿島 解答
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「サッカーアナリストのすゝめ」
さて、来月からプレビューとレビューを中心にお届けするこのサッカーアナリストのnoteですが、その前哨戦としてオリジナル10同士の戦いとなった横浜F・マリノスと鹿島アントラーズの試合を前回プレビューとしてお届けしました。そして今回は、それを受けての自分自身への解答と、今後の両チームの発展を考察しながら残していこうと思います。
有料とさせていただいておりますが、前回はこちら。意外にも多くの方に読んでいただいたようで、ありがとうございます!このテイストをベースにブラッシュアップしていきたいと考えています。
スタメンに見る両監督の狙い
まずは両チームのスタメンから。互いに外れたのは2人。ホームの横浜FMは渡辺選手でなく天野選手、エウベル選手でなく仲川選手が入りました。鹿島はレオ・シルバ選手でなくピトゥカ選手、エヴェラウド選手でなく上田選手がスタメン。まあ両チームのスタメンを寸分の狂いもなく毎節当てられないので、大目に見てください。
両チームの監督として、この11人を選んだ意図はなんだったのか。夏の中2日という過酷な日程であるため、当然ながら疲労は考慮しているはず。かつ、相手のストロングとウイークをどう捉え、この試合に臨もうとしていたのか。
まず横浜FMですが、両サイドバック、ボランチの1枚、右サイドウイングを代えました。鳥栖戦で結果を残した松原選手ー仲川選手ラインではなく、小池選手ー仲川選手にしたのは相手の和泉選手に対応するためだったのかもしれません。和泉選手は攻撃時に中に入り、ポジショニングなどの動きで違いを作れる選手で、この対応には小池選手の方が向きそうです。それもあって自分もその予想にしましたが、前線を仲川選手にしたのはプレビューでも触れた通り。相手のSBのスピードやウイークを考えると、よりフレッシュな選手を置いた方がいいという判断も容易に想像できたからです。
ボランチの1枚を代えるという予想までは合っていましたが、それは渡辺選手でなく天野選手でした。これはもしかすると1-4-1-4-1のような形も想像できましたし、相手の2VOに対応することも視野にあったかもしれません。さらに、ボールをより握るために彼をチョイスしたのでしょう。
一方の鹿島も、前節から4人変更。右サイドバックと、出場停止だった右センターバック、両サイドハーフを代えました。自分の予想と違ったのは「マリノスキラー」とも言うべき上田選手を起用してきたところ。彼の怪我明けのコンディションが気になって自分はエヴェラウド選手と予想しましたが、これは采配が的中した形でしたね。あとはピトゥカ選手の連続起用。ローテーションをする傾向にあったボランチなのでレオ・シルバ選手としましたが、清水戦のパフォーマンスと、彼の疲労の蓄積具合も判断材料だったとは思います。
このメンバー同士で迎えた各局面においてどんな展開だったのか。プレビューからの解答とあわせて少しだけ触れたいと思います。
横浜FM自陣での攻撃vs鹿島敵陣での守備
・横浜FMは前回の対戦を踏まえ失い方注意
・相手の強みを考えた時のSBとWGの立ち位置
・鹿島は両ボランチが力を発揮する形を再現
・2トップは相手CBに行くか、ボランチを消すか
横浜FMの失い方を注意したビルドアップは、開始から見れました。普段であれば2VOを積極的に活用して相手がプレスに来ていようと真ん中とサイドを使い分けながら敵陣への進入を狙っている印象でしたが、この試合では真ん中につけるシーンが少なく、相手の2トップを外しながら、かつ、相手の2VOという最も奪う能力が高い三竿選手とピトゥカ選手に捕まらないためにサイドを起点にしていたと感じました。
特に右サイドの小池選手は、ワイドに張ることが少なく、常に中に入っているような状態。彼を使うのではなく、CBから直接仲川選手に通すような場面が何度も出ました。
相手の和泉選手は当然小池選手のマークに追われ、5分のシーンでは小池選手を見失ってしまっていましたが、11分のシーンでは修正していました。
逆に左サイドの和田選手は比較的ワイドに位置取り、かつ低い位置で土居選手を引っ張るような動きをしていたのが印象的です。プレビューでの話が左サイドで起こっていたような感覚でした。
対する鹿島は、特に前半は相手の上記の意図があって両VOが力を発揮するシーンは少なかったですが、後半の開始はプレス開始位置を変えました。前半は2トップがCBにプレスをかけるシーンは少なかったものの、後半はCBに行き、VOが相手のVOを捕まえる動きをしたことで47分のように奪ったケースを作ります。
これを状況に合わせて変えられるのが鹿島の今の強み。もちろん2−0とリードしていた状況下でしたが、いま行くべきか、下げるべきかをピッチ内で変化させられるのは見事だったと思います。
この局面以外にも出てくるのですが、今回の試合における個人的に感じたテーマは「センスと音感」です。何のことを言っているのかはそれぞれで紐解こうと思いますが、この局面における「これ」は、鹿島の柔軟さです。
どのタイミングで前からプレスをかけるか、それは誰に対してか、相手はどんな心情になっているかなどを察しながら、相手の嫌なことをする。これはセンスと片付けてはいけないのかもしれませんが、サッカーとはそういうものもあると思います。横浜FMのメンバーは、これらに対する策をセンスで対応できなかった。そんな印象です。来ているなら飛ばす、来ないなら繋ぐ、むしろ来ていても繋ぐ、それを自主的に変えてしまうような「カリスマ性」を発揮する選手はいなかった。
52分の和泉選手の「音鳴らし」はわざとだったのか、あえてかは分かりませんが、もしわざとしたのであれば見事と言うしかありません。相手の中で「音に敏感な」選手がいて、その選手に対して本来はマークしに行く必要がないのにプレスに行くフリをして、それも足音だけしのばせて若干のトラップミスを誘い、2秒遅らせました。それは喜田選手に対してでしたが、気になる人は見返してみてください。オフサイド後のアップの映像後なので分かりづらいかもしれませんが。
こうした微妙な駆け引きや圧のかけ方は、ずっと横浜FMの選手たちに植え付けられ、ここから裏を狙うボールが引っかかったりというほんの数センチの誤差を生んだのではと思います。
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