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悪質スピの「地獄マーケティング」とグロ画像広告の関係

自己啓発の界隈に脚を踏み入れると、一定程度スピリチュアル系が混じっている。別に誰がどのような思想信条を持っていようと構わないのだが、彼ら彼女らの厄介なところはやたらと自分の「神様」やら「守護天使」やら「ありがたい塩」とかを勧めてくるところだ。だいたい誰かのカリスマに依存しているので、「〇〇先生の講座は絶対受けたほうがいい、魂のランクが上がるから!」と言った具合に自らの”推し”への勧誘も積極的である。

これがアイドルやアニメなら、「YouTube、Netflixで見てみるかー」くらいなのだが、こうした講座の価格はベラボーに高い。安くて数万円、高いものは何十万といった具合である。自己啓発ビジネス界隈の値段設定がこのくらいで成り立っていることに関しては言うことはない。中にはそれだけの価値があるものもあるだろうし、詐欺まがいのものもあるだろう。ただし、これだけ高額なものになると、「ちょっと一曲聴いてみるわ」くらいの気持ちでは脚を運べない。よほど強力な魅力と動機がなければお金を払う気にはならない。

問題はこうした勧誘を行う信者や講師本人が講座やらセッションやら塩やらを買わない人に対して、中傷や脅しをしてくることだ。「だから、あなたはダメなんですよ。このままじゃ一生惨めな生活が続いて地獄に落ちますよ!」みたいなことを平気で言ってくる。これまで自称カウンセラー、自称コーチ、自称1000万稼ぐ男に同じようなことを言われてきたので、ある程度共通した傾向だと思っていいだろう。

「あんた地獄に落ちるわよ!」は細木数子氏のトレードマークで、ある種ネタ的に消費されていたが、スピ系界隈では未だに現役のようである。冗談ではなく大真面目に「あなた地獄に落ちますよ」と言われたら普通はどう思うだろうか? 怒るか呆れて会話を打ち切るだろう(そしてその人との縁を切る)。しかし、どうやら悪質なスピ系は本気でそう思っているようなのだ。「私があなたを地獄から救い出す手を差し伸べているのに、なぜそれを拒否するの!?」ということで、なんとかこちらを説得しにかかる。常識があれば絶対に言わないような誹謗・中傷を並べ立てて、「こんなにダメなあなたでもこの●●を買えば解決するの!」という話を展開する。そして、お決まりの「これは本当は100万円の価値があるんだけど、今なら特別に3万円!買わないと損!」といった具合。

ちなみにこうした講師業をしている人の中には「恋愛に悩む恋愛カウンセラー」「集客に悩む集客コンサルタント」「うつ病のカウンセラー」「30代独身実家暮らしのコーチ(アルバイト中)」といった、「ちょっと待て!まずは自分の問題を解決して実績出してくれ!全然説得力がないよ!」という人が本当にいるので注意されたい。コンサルタントのコンサルタント、カウンセラーのカウンセラー、コーチのコーチが必要だ。これは冗談ではなく、この界隈は本当にそういうことをやっているので、遡っていくと同じ業界のボス的存在にたどり着く。

私が不思議なのは、こうした強引で失礼な勧誘で引っかかる人がいることである。普通は怒ると思うので、この点疑問だったのだが、ヒントになったのがネット広告だった。

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皆さんも、ネットでよく目にするだろう。赤み、シミでボロボロでたるんだ肌、ポコンと出た太ったポケモンのようなボディ、汚く黄ばんだ歯...。思わず目を背けたくなるようなグロ画像なのだが、これは健康食品やサプリの広告である。私は単純に気持ち悪いという理由でそうした広告が出るとGoogle先生にお知らせして非表示にしている。グロ画像をクリックしたいと思う奴はいないだろう...という私の認識は間違っていた!

ネット広告に詳しいS氏に聞いたのだが、あのグロ広告は有効だそうで、きちんと集客できている。だからこそネットにはクソ広告が溢れているのだ。私は素朴な疑問をぶつけた。

ーーなぜ人はグロ画像をクリックするのか?

「それはあの汚い肌が今の自分、あるいは近い未来の自分の肌に見えているからです」

ーーあの明らかにCG加工された体や歯も?

「そうです。特に女性にその傾向が強いですが、ああいう広告をクリックする人たちは本当に自分の体がグロ画像のように醜いものだと思っています」

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ある種の不安マーケティングだが、グロ画像を見せて扁桃体を発火、プチパニック状態にさせて、理性の働きを低下させたところに、「このサプリを飲めば解決!」と売り込めばいっちょ上がりということなのである。ここで、私は悪質スピの勧誘を思い出した。あれもこれと同じなのだろう。いわば「地獄マーケティング」である。講師本人はセールストークで言っているのかもしれないが、その弟子や信者たちは本気で「地獄に落ちる」と思っているのかもしれない。

「私、先月コーチングに500万円使っちゃったんですよー。おかげでもう気分爽快でマジやばいです。今なら何でもできる気分です」。これはなんちゃらファインダーという自己啓発の勉強会で実際に聴いた話である。その場では「すごーい、素晴らしいー」みたいな空気だったのだが、自己啓発に興味のない人からしたら、完全にバグった話であろう。

心の弱い人に不安マーケティングを仕掛けると、簡単に高額なお金が動く。一度その蜜を味わったら、後戻りはできないのだろう。いくら「魂のレベルが高」くても人間として終わってちゃあね。そういう人間は地獄に落ちるぞ!「いいね」を押さないあなたも地獄に落ちるぞ!

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