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高等学校における統計教育と情報教育を考える

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初等中等教育における統計やデータサイエンスに関する、記事をまとめています。 統計学やPythonについて勉強していることや実践したことを気の向くままに記事を書いています。 統計教…
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2022年1月の記事一覧

【第15回】母比率の検定

【第15回】母比率の検定

前回の記事では、下記の例題を通して仮説検定の考え方を学びました。

例題
あるサイコロを100回投げたところ、1の目が35回出た。このサイコロは1の目が出やすいような歪みがあると判断してもよいか。有意水準1%で検定しなさい。

詳しい内容は、前回の記事をご覧ください。

こちらの問題はシンプルで、最初に考え方を学ぶという意味では分かりやすいのですが、すでにモデル化されている問題であるために社会の問

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【第14回】仮説検定の考え方

【第14回】仮説検定の考え方

本記事は高等学校学習指導要領(平成30年告示)において、数学Iで学ぶことになる「仮説検定の考え方」を情報Iの授業で導入から扱ってみるという試みについてまとめています。
このようなことを考えた経緯などは、下記記事にまとめておりますので、よろしければご覧ください。

前回の復習前回の記事より、次のような問題を考え始めました。

あるサイコロを100回投げたところ、1の目が35回出た。このサイコロは1の

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【第13回】二項分布

【第13回】二項分布

今回から数回にわたって、数学Iの「仮説検定の考え方」の内容を情報Iの授業で導入部分から扱うことについて考えてみたいと思います。
このようなことを記事にしてみたい考えた理由は、次の2つです。

数学Iは「分散・標準偏差」から始まり「相関関係」で記述統計学の領域が完結している。推測統計学の「仮説検定」の考え方を、データの分析の最後に扱うよりも自然な流れを模索してみたかった。

仮説検定の「考え方」を直

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【第12回】記述統計学と推測統計学

【第12回】記述統計学と推測統計学

高等学校教育における記述統計学と推測統計学の扱いについて一度整理してみたいと思い、記事を書くことにしました。
冒頭にこれらの統計学の分類について整理をし、高等学校の数学I・A・Bと情報Iがどのように関わりながら学びを深めていけるかを考えていきます。

記述統計学と推測統計学それではまず、記述統計学と推測統計学についてまとめていきます。

記述統計学

記述統計学とは、観測して得られたデータを表やグ

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【第11回】単回帰分析

【第11回】単回帰分析

今回は、散布図において点の配列に「できるだけ合うように引いた直線」である回帰直線について考えていきましょう。相関係数の絶対値が1のときは、散布図上の点がすべて回帰直線上にあるときであり、絶対値が1に近いほど回帰直線に沿って点が並ぶ傾向にあるというのが相関係数の意味でした。

高等学校における扱い高等学校学習指導要領(平成30年公示)の解説を読みますと、「数学編 理数編」には回帰分析の記述はほとんど

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【第10回】相関関係-後編

【第10回】相関関係-後編

前回に引き続きまして、データの相関についての理解を深めていくような高校数学と高校情報の授業を考えていきたいと思います。

前回の復習前回の記事では相関係数の定義をしました。これまでに出てきた統計量を一度、文字式を使って整理しておきましょう。

2つの変量$${ x,\ y }$$の組からなる大きさ$${ n }$$のデータ

$$
(x_1, y_1),\ (x_2, y_2),\quad \cd

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【第9回】相関関係-前編

【第9回】相関関係-前編

こんにちは、kenstyです。私は高等学校における統計・データ活用分野における数学と情報の関わりについて興味を持っています。
これまでに考えたことや実践したことを、昨年末から少しずつnoteで発信をしており、自分の中で良い刺激となっています。今回で10回目の投稿になりましたが、これからもマイペースで続けていこうと思っております。

今回と次回は相関関係について、その中でも特に導入部分(相関係数の定

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【第8回】分散と標準偏差-後編

【第8回】分散と標準偏差-後編

前回に引き続き、分散と標準偏差についての記事を書いていきたいと思います。今回は標準偏差について少し掘り下げて考えていき、重回帰分析などで使われるデータの標準化について話をしてみたいと思います。
なお、今回の記事も「数学I」の授業においてコンピュータを活用して展開することを想定しながら書いてみました。

変量の変換前回記事で使った10名の数学の小テストのデータを使います。

まず、10名とも一律5点

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【第7回】分散と標準偏差-前編

【第7回】分散と標準偏差-前編

高等学校における統計教育と情報教育の有機的なつながりを考えていくシリーズの7回目で、今回は分散と標準偏差についてです。
平成30年公示の高等学校学習指導要領でも引き続き、「数学I」で扱われる内容になります。

数学Iと情報Iの関係気になってくるのが、「数学I」と「情報I」の学習順序です。
「数学I」で分散・標準偏差や相関係数を教科書に沿って学び、「情報I」でコンピュータを利用してこれらの統計量を求

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【第6回】箱ひげ図

【第6回】箱ひげ図

今回は箱ひげ図と、四分位範囲に基づいた外れ値についての記事を書いてみたいと思います。

準備Pythonの実行環境はGoogle Colaboratoryを使うことにします。
でーたかじり虫さんの記事がとても分かりやすく、参考にさせていただきました。ありがとうございます!

Google Colaboratoryのファイルを新規作成しましたら、まずは必要なライブラリの読込からです。
今回はNump

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