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高等学校における統計教育と情報教育を考える

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初等中等教育における統計やデータサイエンスに関する、記事をまとめています。 統計学やPythonについて勉強していることや実践したことを気の向くままに記事を書いています。 統計教…
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記事一覧

【第31回】母平均の区間推定-後編

【第31回】母平均の区間推定-後編

前回に引き続き、情報Iの授業で区間推定の考え方を扱う方法について考えていきたいと思います。

前回記事では、いろいろと端折ってとにかく95%信頼区間を求めるための最低限の流れになってしまいました。
数学Bで学ぶ数学的な内容を避けてできるだけ直観的に理解できるよう努めた結果、かえって説明が分かりにくくなっていたところが反省点です。

そこで、今回は連続型確率変数について、大まかな説明をし、これを積極

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【第30回】母平均の区間推定-前編

【第30回】母平均の区間推定-前編

本シリーズの記事も30回目になりました。
いつもお読みいただいているみなさま、本当にありがとうございます。

今回から、情報Iの授業で区間推定の考え方を扱う方法について考えていきたいと思います。

情報Iの授業の中で、コンピュータを活用しながら区間推定の考え方を学ぶことで、標本のデータから母集団の性質を確率に基づいて推測する方法に慣れることを目指してみたいと思っています。

本記事の内容本記事では

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【第29回】推定と検定

【第29回】推定と検定

本記事では、情報Iと数学I・Bにおける推測統計学の扱いについて、今一度考え直してみたいと思います。

つまり、数学の授業との連携を考えていく際に、情報Iで扱う推測統計学の内容としてよりふさわしいのは「区間推定」か「仮説検定」かというテーマで記事を書いてみます。

前回記事までこれまで、本シリーズ記事では高等学校における統計・データ分析に関する学習内容を次のように捉えて考えてきました。
青が記述統計

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【第28回】数撃てば当たるのか? -ポアソン分布編

【第28回】数撃てば当たるのか? -ポアソン分布編

確率0.0007%の事象は、何回繰り返せば起こることが期待されるか?

情報の授業における生徒とのやりとりから前回は上記のことを考えてみました。よろしければ、前回記事もご覧ください。

ここでは「ある試行を繰り返し行ったとき、ある事象が初めて起こるまでの試行回数」に注目し、幾何分布についてまとめてみました。

個人的に興味深い話題でしたので、もう少し深掘りし、別の視点で記事を書いてみることにしまし

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【第27回】数撃てば当たるのか? - 幾何分布編

【第27回】数撃てば当たるのか? - 幾何分布編

今回は、ある日の高等学校情報の授業のエピソードからです。

シミュレーションサイコロを100回投げて1の目が35回以上出ることがいかに珍しいのかという話をしていました(「シミュレーション」を学ぶ回)。
これを実際に体験してもらおうと、Pythonで次のようなプログラムを生徒に作ってもらい実行するような実習です。

import numpy as npdice = np.random.randint

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【第26回】仮説検定の理解の壁 -授業実践から-

【第26回】仮説検定の理解の壁 -授業実践から-

本記事は2021年度の高校1年生の情報の授業において、情報Iの「データの活用」と数学Iの「仮説検定の考え方」の内容を一部取り入れて授業を行った実践のご報告になります。

至らぬ点も多々ありましたが、実際に授業をしたことで得られたことが多くありました。

高校生が仮説検定のどういうところに躓きやすいのか、どのような所が指導上の留意点だったのを振り返りつつ、ポジティブな気持ちで次年度に向けた課題を整理

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【第25回】独立性の検定-後編

【第25回】独立性の検定-後編

今回も、アンケート調査におけるクロス集計において、一方の回答が他方の回答と関係があると言えるかの判断を行う仮説検定を考えます。
前回は、表計算ソフトを使ってカイ2乗検定を行いましたが、今回はPythonを使います。
クロス集計表ができれば、数行のコードで簡単にできて感動です。

今回考える問題前回と同じように、スマートフォンを所持している高校生100名に「性別」と「メインで使っているスマートフォン

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【第24回】独立性の検定-前編

【第24回】独立性の検定-前編

今回考えるのは、アンケート調査におけるクロス集計において、一方の回答が他方の回答と関係があると言えるかの判断を行う仮説検定を行います。
具体的な問題で考えてみましょう。

今回考える問題スマートフォンを所持している高校生100名に「性別」と「メインで使っているスマートフォンのOS」を調査し、これらの回答をクロス集計したところ、下記の表のようになったとします。

男子と女子で、利用しているスマートフ

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【第23回】クロス集計-後編

【第23回】クロス集計-後編

今回もアンケート調査でよく用いられるクロス集計についてまとめます。
高等学校の情報Iの授業で扱いたい、集計に使う手法として下記3つを順に考えているという内容です。

表計算ソフトのCOUNTIFS関数・複合参照

表計算ソフトのピボットテーブル

Pandasのcrosstabメソッド

前回は1.の方法についてまとめました。
よろしければ、前回の記事をご覧ください。

今回は2.と3.についてま

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【第22回】クロス集計-前編

【第22回】クロス集計-前編

今回はアンケート調査でよく用いられるクロス集計についてまとめます。
高等学校の情報Iの授業では、その意義の説明とともに、集計方法の実習をきちんと行いたいところです。
そこで悩むのが、集計に使う手法として何を選択するかです。次の3つが代表的なところです。

表計算ソフトのCOUNTIFS関数・複合参照

表計算ソフトのピボットテーブル

Pandasのcrosstabメソッド

正直に言うと、「どれ

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【第21回】 z検定とt検定 まとめ

【第21回】 z検定とt検定 まとめ

ここまでの記事ではPythonを利用して母平均の検定(z検定・t検定)を行う方法をまとめてきました。
今回はこれまでの内容をまとめつつ、表計算ソフトを利用した方法について整理していきたいと思います。

表計算ソフトを使った方法もPythonを使った方法と同じように、多くの学びがあります。数学Iや情報Iの授業では、学習目標や生徒の習熟度に合わせてツールを選択し、仮説検定の考え方について学びを深められ

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【第20回】母平均の差の検定

【第20回】母平均の差の検定

高等学校における統計教育と情報教育を考える本シリーズも今回で20回目の投稿となりました。これまで多くのみなさまに読んでいただき、感謝申し上げます。これからもよろしくお願いいたします。

今回は教育効果や新薬の効果などを検証する方法を学んでいきたいと思います。

本論の前にさて突然ですが、みなさまはタイピングはお得意でしょうか。私は、パソコンを使い始めたときの変な癖がなかなか抜けず、タッチタイピング

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【第19回】母平均の検定-後編

【第19回】母平均の検定-後編

母集団から無作為に抽出した標本をもとに、母集団の平均に関する仮説が正しいかどうかを判断する母平均の検定について考えていきます。
情報Iの授業でPythonを活用しながら学んでいく方法を今回も考えてみたいと思います。

前回考えておりましたz検定は、母集団の特徴量である母平均を推測する仮説検定を行っていながら、母分散が既知のものとして検定を行っていた点が不自然でした。
そこで、より現実的な問題を考え

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【第18回】母平均の検定-前編

【第18回】母平均の検定-前編

今回から数回に分けて、母集団から無作為に抽出した標本をもとに、母集団の平均に関する仮説が正しいかどうかを判断する「母平均の検定」がテーマに書いていきます。

正規分布に関するまとめまずは、今回の記事に関わる正規分布に関するいくつかの内容の整理をここで行っておきます。

正規分布は自然現象や社会現象でみられる確率分布(値と確率の対応関係)で、その分布を表した曲線は平均値をピークとした左右対称の山型に

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