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【実態経済の外観✨】インフレ目標政策の実現と消費者の動向:日経新聞解説📰 2023/10/09

日本経済新聞の記事で
注目したい内容がありましたので
記事にしたいと思います💖

長いですが、目次をご活用いただきまして
どうぞ最後までご覧ください!

インフレの展望と金融政策(上) 2%超でも引き締めは尚早 伊藤隆敏・コロンビア大学教授(経済教室)

 日本は1998年から2012年にかけて、緩やかではあるがデフレを経験した。13年1月に2%のインフレ目標政策を導入して以降、インフレ率はプラス圏に転じたが、22年までは2%を下回る状況が続いた。

 22年4月、インフレ率(生鮮食品除くコア)は2%を超え、23年1月には4%超の水準まで上昇した。
その後やや低下したが、7月は3.1%で、3%超の水準が11カ月続いている。10カ月以上続くのはバブル期の90~91年以来のことだ。

 超緩和維持については22年以降、批判も出るようになった。足元のインフレ率が2%を超えていること、欧米との金利差拡大で円安が進行していること、日銀の国債保有率が50%を超えて市場機能低下や財政規律の緩みを招きかねないことなどが理由に挙げられる。

 このうち為替レートの水準については、日銀の政策目的には入っていないことから、それを理由に政策を変更すべきではない。「安い日本」には、金融政策以外の理由(輸出産業の競争力低下など)もある。

 国債の市場機能低下に対しては、22年12月と23年7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の変動幅拡大(事実上の上限引き上げ)により対処した。
一方、財政規律については、長期金利が上がり始める前に、財政再建の道筋をつけるよう財政当局がアクションをとることが大切だ。
財政赤字に対する市場の警告を発するために、景気の腰折れにつながりかねない金融引き締めを進めるのは適切な政策とはいえないし、日銀の政策目的にも入っていない。

 超緩和継続に対する批判が当たるとすると、既に2%超のインフレ率が1年以上続いているのに、YCCの微修正以外の政策変更はないことだ。
だがこれまで日本のインフレ率の急上昇はエネルギー・食料価格の上昇が主因であり、一時的な要素が大きいと考えられてきた。その一方で、エネルギー・生鮮食品を除くインフレ率は7月に4.3%まで上昇しており、価格上昇は裾野を広げている。

 ただし金融政策を変更する場合、その効果が経済全体に波及するには時間がかかる点を考慮に入れねばならない。
平均2%のインフレ率を安定的に維持するという物価の安定を実現するには、足元のインフレ率でなく将来のインフレ率が2%に近づくように金融政策を運営することが必要だ。

 四半期ごとに公表する日銀の「展望リポート」に掲載されるインフレ率(コア消費者物価指数=CPI)の政策委員の見通しの中央値が、日銀の考える予測インフレ率と考えられる。
7月28日の予測によると、23年度は2.5%だが、24年度は1.9%、25年度は1.6%と将来には2%を下回る。これでは金融引き締めには踏み出せない。

 ただここでも批判の余地はある。インフレ率予測が必ずしも信頼できるわけではないということだ。
特に何らかの理由で予測が低めになるバイアス(ゆがみ)があれば、引き締めが遅れてインフレ率が2%を大きく超える可能性がある。

 23年度の予測についていえば、政策委員の見通しは過去1年間で1.4%から1.6%、1.8%、そして23年7月の2.5%へと上方修正を繰り返してきた。24年度、25年度も上方修正となる可能性がある。

 米国では消費者物価インフレ率(全品目、CPI―U)は21年夏に5%台まで上昇していたが、さらに上昇を続けるかについては意見が割れていた。
一時的と考える専門家と中央銀行関係者は辛抱強く金融緩和を継続し、コロナ不況からの回復を確かなものにすべきだと考えていた。一方、インフレ率の上昇は継続する可能性が高く、早く引き締めを開始すべきだとする専門家もいて論争となった。

 結果的には、最初の金利引き上げはインフレ率が8%程度まで上がった22年3月で、22年末までに計7回、4.25%の大幅な金利引き上げとなった。
22年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー・食料価格を高騰させたことは予測不可能だったとはいえ、引き締め開始や金利引き上げのテンポも遅かったと大きな批判を招いた。

 米国のインフレ率の高騰はコロナによる行動制限が緩和された21年春から始まっており、需要の急回復と供給制約(労働者の復帰の遅れ、サプライチェーン=供給網=の制約)の継続に起因していた。21年の超過需要インフレが発端だ。

 しかしインフレ率は22年夏に9%程度でピークを打った後、徐々に下落し、23年7月には3.2%となった。
この間、2%インフレ目標によりインフレ期待はアンカー(つなぎ留め)されていた(長期インフレ率予想はそれほど上がらなかった)といえる。インフレ目標政策による期待アンカー効果はあった。

 一方、日本ではコアCPIインフレ率が2%を超えたのは22年4月であり、エネルギー・コモディティー(商品)価格全般の急騰など供給ショックが主因だ。
それまでゼロインフレの期待(デフレマインド)が頑強で、強力な金融緩和によっても需要がなかなか喚起されなかった。インフレ率が2%を超えたからといって急激な金融引き締めを進めれば、需要に負の影響が起きてスタグフレーションに陥ってしまう。これは間違った政策だ。

 そこで23年の春季労使交渉では、高い賃上げを実現するよう政府も強力に働きかけた。日本の場合は、供給サイドの要因によるインフレを、賃上げを契機とする消費喚起で需要サイドの要因によるインフレに転化させようとしている。

 日銀の政策委員によるインフレ予想は民間のインフレ予想とどの程度乖離(かいり)しているのか。
日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」では、民間エコノミストにインフレ率の年度ごとの予測値を月次で尋ねている。

 日銀と民間の1年後の予測の系列を作成して比べると、政策委員の方がわずかに高いインフレ率を示しているが、大きな乖離や乖離の拡大・縮小のトレンドはない。
また日銀短観による1年後の物価見通しは、政策委員の予測よりも高い。これは企業が直面するインフレ率がCPIとは異なることが理由だが、その乖離の程度が特に大きくなっているわけではない。

 同じことは、内閣府の「消費動向調査」に含まれる消費者のインフレ予想の系列との比較でもいえる。
消費者の予想するインフレ率は頻繁に購入するもの、つまりガソリンや食料品の価格により大きな影響を受けるので、現在はCPIよりも水準が高めに出るが、乖離幅は落ち着いている。

 政策委員の1年先のインフレ率予測はこの2年間で着実に上昇して2%に近付いてきている。これは日銀がインフレ目標政策の実現に自信を深めている表れかもしれない。
供給ショックでデフレマインドが壊れたのを機会に、需要喚起により2%が持続的に維持されるようにすることで、期待を2%にアンカーし直すことが当面の目標となる。

<ポイント>
○予測は2%超えておらず当面緩和維持を
○日米ではインフレもたらした要因異なる
○日銀と民間の予測の間に大きな乖離ない
いとう・たかとし 50年生まれ。ハーバード大博士。専門は国際金融。兼政策研究大学院

2022/11/30 日本経済新聞 朝刊 36ページ

記事に対するコメント📝

このような記事をしっかり読んで、卒業論文を進めていきたいです

一年前の記事になりますが、当時の経済状況をしっかりと考察することが大切なように思います

なぜ、このようなインフレが発生しているのか?
為替介入が実施されるまで円安が進んだ要因は何か?
なぜ、財政まで懸念する必要があるのか?
など、包括的な視点が何より大切になるような気がしますね

また消費者物価指数(CPI)の動向などは以下のサイトからご確認ください💗

円相場の大幅変動は特に目新しい現象ではありません
1998年に起きた日本の金融危機のさなかには1ドル=147円台まで円安が進んだときに、円安是正の介入は実施されています

2023/09/28 10:52閲覧

円相場のこうした大幅変動の背景には2つの重要な要因があるとされます
長期的にみると、日米の生産性の伸びに差が出て両国の相対賃金に大幅な格差が生じたこと、こうした状況が米国は何でも日本よりも高いという感覚を助長していること、と記事で述べられています

加えて2つの短期的要因で日米格差はここ数カ月で一段と拡大したことであると思います
一つはウクライナでの戦争、もう一つは日銀と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の違いですね

22年に入ってからFRBは大幅利上げを継続する一方で、日銀は政策金利をゼロ近傍に据え置いています

政策に違いが出たのは、ウクライナでの戦争により食料・エネルギー価格が全世界で同じように急騰しても、日米が直面するインフレは全く違うから、という視点は大切です

経済のメガネで世の中を考察する際には、どのような視点や立場をベースに考えていくのか、ということが非常に大切なように思います
そして、理論だけを鵜呑みにするのではなく、政治的な動きや社会情勢を踏まえて理解できるように努めていきたいです

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最後までご愛読いただき誠に有難うございます!

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まとめさせていただいてますが
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