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【介入利益の評価と概算💹】「日本の為替介入の分析」:経済論文解説💴No.25 2023/08/27


Introduction:卒業論文は早めに仕上げたい💛

私もいよいよ卒業論文の執筆に
取りかかる時期がやって参りました👍

何事もアウトプット前提のインプットが
大事であると、noteで毎日発信してきました

これは、どのような内容で
あっても当てはまります👍

論文を一概に読んでも
記憶に残っていなかったり
大切な観点を忘れてしまっていたりしたら
卒業論文の進捗は滞ってしまうと思います

だからこそ、この「note」をフル活用して
卒業論文を1%でも
完成に向けて進めていきたいと思います

私の卒論執筆への軌跡を
どうぞご愛読ください📖

今回の参考文献📚

今回、読み進めていく論文は
こちらのURLになります👍

『日本の為替介入の分析』 伊藤隆敏・著
経済研究 Vol.54 No.2 Apr. 2003

前回の内容📖


介入は利益を上げたのか?

今回の投稿では、先行研究の6章で述べられている「介入は利益を上げたのか?」というテーマでお話していきます

過去の投稿で、通貨当局の存在意義というテーマについて言及したことがありますので、お復習いにご活用ください👍

介入の方向を考えると、分析対象期間である10 年間で「ドル買い・円売り」は、168 回、合計 21 兆、1860 億円となっています

その一方で「ドル売り・円買い」は、32 回、合計 4 兆、8794 億円でありました
私が対象となるのは、この32回と、2022年9月後半に実施されたえ「円安是正」の為替介入操作になります

またドル買い(円高是))が、ドル売り(円安是正)よりもかなり巨額であったため、この10年間で、外貨準備は約700億ドル(1991年3月末)から約3640億ドル(2001 年3月末)へと、大きく増加したということが判明しています


市場介入でドルを購入する対価である円資金は、政府が為替介入のための政府短期証券 (正式名称、外国為替資金証券、通称、為券)を発行して調達されています

外国為替資金特別会計(以下、外為特会、と略す)は、この為券残高を負債として、介入で獲得した外貨資産を資産側にたてた勘定です📝

現在、為券は、原則、市中公募によって発行されています

したがって、外為特会は、円資金で借り入れて、外貨資産で運用するファンドのようなものだと考えていただけますとイメージしやすいのではないかと思います💖

当然のことながら、介入により、ドル資産を買ったり、売ったりするわけですから、為替差益・差損が売買益の結果として生じるのです

さらに、売買の結果、ドルを買い越せば、その在庫の未実現評価益・損が発生することになります📝

なぜならば、介入により保有する外貨資産は、市場為替レートが変動するにつれて、評価益や評価損(市場レートによる在庫外貨準備マイナス平均購入コスト)が生じるからです

さらに、円の調達金利をドルの資産運用金利の差である利子差益・差損が発生します
(このような、手法により、為替介入の利益を計算した先行研究に、深尾(2000)と伊牟田・桧森(2000)などがあるようですnのでしっかり確認したいと思います📝)

この先行研究における分析と、深尾、伊牟田・ 桧森の推計との違いは、以下の通りであると言及されています

第1に、彼らは実際の介入額が公表される前に、試算を行ってい るので、介入金額の正確な推計ができなかったこと

第2に、彼らは、各財務官ごとに、介入利益の計算をしているそうですが、引継ぎの外貨準備(累積介入額)の金額、平均コストによって、利益・損失が大きくことなることになること

3種類に分けられる通貨当局にとっての利益✨

次に、この介入による利益を、いくつかの仮定をおいて、計算してみることにしましょう👍

通貨当局にとっての利益には、次の3種類が挙げられると言及されています

(1)売買差益(損)
一定額のドルを購入し、売却するとき、購入時の円ドルレートと、 売却時の円ドルレートの差によって、利益が生じたり、損失が生じたりします
これを以下では、売買差益と呼ぶことにします

(2)最終期末評価益(損)
この研究のデータの最終時点(2001 年3月末)において保有する外貨準備(累積ネット介入額)の円建て時価と円建て購入コストの差を(2)とします

(3)利子率差益(損)
円で債券を発行して調達した資金で外貨準備を保有しているので、 保有債権(ドル)の金利受取額(の円換算)と調達資金(円)の金利支払い額との差が、利益となります

ここでいくつかの仮定を置くことにします
第1に、1990年代の介入の利益を対象としますので、それ以前に購入されたドル建て資産の評価はしない、ということです

よって、1991年4月(公表されている介入データの開始時点)以降の円・ドル市場における介入によって生ずるドル建て売買からの利益のみを考えることになります

第2に、売買差益の計算にあたり、ドル売りとドル買いは、10年間の介入のドル買い平均レートとドル売り平均レートを計算し、そのレートの差に、実際の売り介入(これが、買い介入よりも額が少ない)の額を乗じたものとみなすということです👍

第3に、買い介入額から、売り介入額を引いたものが、介入から生じた外貨準備の期末残高とみなすということです

すなわち、2001年3月最終営業日のニューヨーク終値(126.15円)と買い介入平均レート(104円)の差に、期末残高に乗じたものが、期末評価益であると認識することです

第4に、四半期ごとに、ドル残高に米TB レート(3ヶ月もの)を乗じたものを受け取り、介入残高(円建て)に日本の政府短期証券利回りを掛けたものを支払っていたを考えて、金利収入を計算するということを仮定します

10 年間の介入を、介入が行なわれた日の東京市場の中心値で分布に表すと、介入の方向が1ドル125円を境に反対になることは、前回の投稿でご紹介したとおりです

世界経済のネタ帳より:過去の為替レートの変動

過去の介入パターンから考察すると、円売り・ドル買い介入は必ず1ドル125円よりも円高の水準で行なわれ、円買い・ドル売りの介入は必ず1ドル125円よりも円安の水準で実施されていたことがわかります

通貨当局は、少なくとも1991年4月以降は、ドルを安く買って、高く売っていたこともあり、大きな通貨の売買差益が発生していたと分析できます

ミルトン・フリードマンの論法に従えば、利益を出すような投機者は、相場の安定化に寄与していたという視点から、1990 年代の日本の通貨当局は、円ドルレートの過度の振れを防いでいたと分析できます📝


より厳密に、この売買益を以下のようにして、計算することにします
それぞれについて、 介入日のレートで公表されている円建ての介入額をドル建てに換算します

この先行研究では、これを分析対象期間である10年間にわたり、介入をドル売り介入とドル買い介入それぞれについて集計しています
なお、月別の円建て介入額と、そのドル換算額の推移が表にまとめられています

1991~月別の円建て介入額・ドル換算額の推移
1996~月別の円建て介入額・ドル換算額の推移

上記の推計結果より、円買い・ドル売り介入は、4兆8793億円、同介入のドル換算額は、374億ドルであったことが判明します

その一方で、円売り・ドル買い介入は、21兆1861億円、同介入のドル換算額は、2034億ドルにのぼることが読み取れますね

表②:実現益と未実現益の計算

表②を参照した結果、10年間を平均すると円買い・ドル売り介入の平均レートは、1ドル130.38円(=48793÷374)であり、円売り・ドル買い介入の平均レートは、1ドル104.17円(=211861÷2034)であったことがわかります

したがって、ドルの売買による利益は374億ドルを130.38円で売り、104.17円で買い戻した、ということによる利益です

つまりこれが、9810億円であるということです

期末評価益は計算式に基づいて、ドル残高がドル買い介入からドル売り介入を引き、126.15-104.17)を乗じたもので、合計3兆6652億円となります

金利差益は、毎四半期の金利差益を計算することで求まります

それを10年間にわたって合計する毎四半期ごとに、その期に介入により生じていたドル資産(マイナスの場合は債務)と円資産(マイナスの場合は債務)を計算すると言及されています

これは前期の資産にその期の介入額を加えたものです

例えば、t期に置けるドル買い・円売り介入は、t-1期に比較したt期末のドル資産を増加させ、円債務(マイナスの資産)を増加させることになります

ドル金利は、アメリカの3ヶ月もの財務省証券(TreasuryBill)利回りを、円金利は3ヶ月もの政府短期証券(為券)の利回りを用いています

シンプルな計算となりますが、t期の金利収入は、t期の残高にt期の金利を掛けたものである

ドル資産にドル金利を掛けたドル建ての金利収入には、t期の平均為替レートを乗じて円建てに変換し、円の金利収入(マイナスの場合は金利コスト)と合計します

もし合計がプラスならば、外貨準備という資産の生む利子が介入のために発行した政府短期証券の残高を維持するために支払っている円債務の利子支払いを上回っていることを示唆しているといえます📝

単純に考えると、低い金利で借り、高い金利収入を得ていたことになるとイメージいただけるのはないでしょうか?

この先行研究では金利収入(損失)の10年間の合計にあたり、毎四半期ごとに得られる金利収入(損失)は、その期の終わりには、一般会計に振り替えられていた、と仮定しています

つまり、金利収入(損失)を累積するのにあたり、金利収入がさらに金利を生む(孫利子)ような累積の方法をとらず、単純に毎期の利益を合計しているということです📝

しかし、現実には、毎年、 介入利益の一部が、一般会計に振り替えられるものの、いくらかは外為特会に準備金として積まれているので、その意味で、利子収入の計算は、過小評価であるということになってしまうのです

このようにして計算された利子収入の合計が、なんと3兆9748億円に上ったというのです✨

当時の経済状勢などから考察すると、1990年代後半の日本の低金利を反映して、円で借りドルで運用する戦略により多額の利益を生んだという考察できると言及されています

また多くの発展途上国における外貨準備運用では、国内金利が運用先(多くの場合アメリカ) 金利よりも高く、外貨準備の保有から生ずる利子収入よりもその調達コストが高くなるケ ースが多いと言われています

その意味では、国内金利が調達先の金利よりも低かった、日本の 1990 年代 の経験は異例かもしれないのです📝

売買益(9810億円)未実現期末評価益(3兆6652億円)利子収入(3兆9748 億円)の合計で、介入による利益は、8兆6210億円に上ったことが判明します

このように、巨額の介入、およびその結果としての巨額の外貨準備も、資産運用の観点からも成功であったという結論を得ることができたのです

すなわち、日本の通貨当局は、ミルトン・フリードマンの提唱した"安定的投機者"であったことになる

ただし、巨額の利益を生んでいたにしても「外貨準備という大きなポジションを保有し続けることの潜在的なリスクを考慮すべきである」という見解も見逃してはなりません

つまり、リスクに晒されるポジションがどれ位(Value at Risk)であり、生み出される利益がそのリスクをとるに値するだけ大きなものであったか、という評価をしよう、というスタンスになります

このような立場に対して、この先行研究ではごく大雑把なリスク評価をいますので、ご紹介します

10年間の介入によるドル・ポジションは1660 億ドルです
もし1年間に 20 円の円高に振れたとすると、このポジションは、3兆3000億円の評価損を発生させることになります
(逆にいうと、上記の計算でドル買い介入の平均コスト104 円に近づくことで、未実現利益3兆6000億円が一気に吹き飛ぶことになるのです💦)

ただし、 1年間に逆方向 20 円円安に振れる可能性も想定されますので、その場合には、円安阻止の介入を行い、売買益を発生することも可能となりますが、介入が無くとも未実現利益が3兆 6000億円増えることになるという結論になるのです👍

本日の解説は、ここまでとします
このような歴史や先行研究をしっかり理解した上で、卒業論文執筆に取り組んでいきたいです

今回、私が卒業論文執筆において取り上げる
24年ぶりの「円安是正」介入は本当にレアな経済政策
ということを再認識できたような気がします💖

私の研究テーマについて🔖

私は「為替介入の実証分析」をテーマに
卒業論文を執筆しようと考えています📝

日本経済を考えたときに、為替レートによって
貿易取引や経常収支が変化したり
株や証券、債権といった金融資産の収益率が
変化したりと日本経済と為替レートとは
切っても切れない縁があるのです💝
(円💴だけに・・・)

経済ショックによって
為替レートが変化すると
その影響は私たちの生活に大きく影響します

だからこそ、為替レートの安定性を
担保するような為替介入はマクロ経済政策に
おいても非常に重要な意義を持っていると
推測しています

決して学部生が楽して執筆できる
簡単なテーマを選択しているわけでは無いと信じています

ただ、この卒業論文をやり切ることが
私の学生生活の集大成となることは事実なので
最後までコツコツと取り組んで参ります🔥

本日の解説は、以上とします📝

今後も経済学理論集ならびに
社会課題に対する経済学的視点による説明など
有意義な内容を発信できるように
努めてまいりますので
今後とも宜しくお願いします🥺

マガジンのご紹介🔔

こちらのマガジンにて
卒業論文執筆への軌跡
エッセンシャル経済学理論集、ならびに
【国際経済学🌏】の基礎理論をまとめています

今後、さらにコンテンツを拡充できるように努めて参りますので
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます📚

最後までご愛読いただき誠に有難うございました!

あくまで、私の見解や思ったことを
まとめさせていただいてますが
その点に関しまして、ご了承ください🙏

この投稿をみてくださった方が
ほんの小さな事でも学びがあった!
考え方の引き出しが増えた!
読書から学べることが多い!
などなど、プラスの収穫があったのであれば

大変嬉しく思いますし、投稿作成の冥利に尽きます!!
お気軽にコメント、いいね「スキ」💖
そして、お差し支えなければ
フォロー&シェアをお願いしたいです👍

今後とも何卒よろしくお願いいたします!

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