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英語論文の読み方③ 英語論文を効果的に読むために必要不可欠なスキルである「能動的な論文の読み方」を伝授します

「時間をかけて丁寧に論文を読んだはずなのにいまいち理解できていない気がする」なんてことはありませんか? そんなあなたにおすすめしたいのが「能動的な論文の読み方」です。

今回は、現役の人間栄養学者・村上健太郎が、英語論文を効果的に読むために必要不可欠なスキルである「能動的な論文の読み方」を伝授します。「能動的な論文の読み方」とは、①明確な意図をもったうえで、②気になることを書き込みながら、③知らない単語をその都度調べつつ、④分からないところにこだわりすぎないで、⑤毎日時間を見つけて論文を読むことです。

それではこれら5つのポイントを順番に見ていきましょう。なおこの記事は、人間栄養学・栄養疫学分野の論文を想定して書かれています。

1. 明確な意図をもって読む

ひとつめのポイントは「明確な意図をもって読む」です。これは5つのポイントの中で最も重要です。この先の人生で論文を読むときには常にこのことを忘れないでください。そのくらい重要です。重要なので別の記事として独立にまとめてあるのでぜひご覧ください。

ここでは簡単に紹介するにとどめますが「明確な意図をもって読む」ためのポイントは以下の5つです。

明確な意図をもって読むための5つのポイント

  • 余計なことを考えずにインプットに専念する

  • 集めたい情報を明確にする

  • 必要な箇所だけを飛ばし読みする

  • 著者の意図を読みとる意識をもつ

  • 前から順番に読むことにこだわらない

論文を読むときには常にこれらのことを意識しましょう。

2. 気になることを書き込みながら読む

二つめのポイントは「気になることを書き込みながら読む」です。書き込みながら読もうとすると自然と頭を使って読むことになります。そうすると、自分の問いに対する答えを見逃しにくくなります。また、書き込んだ内容は格段に印象に残りやすくなります。さらに、書き込みはそれ自体が自分にとっての財産になり、あとで見返したりするとたいへん役に立ちます。読むときに用いるのは紙でも電子ファイルでもどちらでもよいですが、必ず書き込みながら読むのが大切です。ちなみにぼくは、しっかり読むときは紙、情報をさらっと探したいときは電子ファイルという形で使い分けています。

いちばん簡単な書き込みは「大事だと思う単語や文章に印をつける」ということです。たとえば研究デザインを探しているときなら「this cross-sectional study」や「the present case-control study」という箇所にアンダーラインをつければよいでしょう。また「どうして女性のみを対象としたのだろう?」とか「運動を交絡因子として扱っていないのはなぜ?」など、読んでいる途中で疑問に思ったことをメモしておくのもよいでしょう。難しく考えずに知的好奇心の赴くままに気楽にやりましょう。ちなみにぼくの場合は、文字や文章の書き込みはあまりせず、気になった文章や重要な項目を蛍光マーカーで印をつけるのが多いです。

落とし穴:書き込みすぎてしまう

書き込みすぎてしまうのは問題です。たとえば全文にマーカーをつけるということはどこにもマーカーをつけないのと同じことです。本当に大事なところについてのみ書き込むようにしましょう。最初は、自分が求めている情報に対する答えに印をつけるのがよいでしょう。

3. 知らない単語をその都度調べながら読む

三つめのポイントは「知らない単語の意味をその都度調べながら読む」です。調べればすぐに解決することを後回しにしておいてもよいことは何もありません。たいていの単語の意味は辞書やネットで調べればすぐにわかります。ぼくはGoogleで検索することが多いです。そのくらいの手間はどんどんかけましょう。

調べた単語の意味はどんどん書き込んでいきましょう。書き込み用のスペースを確保するために、論文を拡大印刷するのもよいかもしれませんし、ノートの左側に論文を貼り、右側全部を書き込みスペースにするのもよいでしょう。自分に合ったやり方を見つけましょう。

落とし穴:単語の意味を覚えようとする

単語の意味を覚えようと努力するのはやめましょう。あなたの目的は論文を読むこと(理解すること)であって、単語の意味を覚えることではないはずです。単語は何度も何度も触れることによって自然に身についてしまうものだと考えましょう。

4. 分からないところにこだわりすぎずに読み進める

四つめのポイントは「分からないところにこだわりすぎずに読み進める」です。論文を読んでいるときに、書かれている内容のすべてをその時点のあなたが理解できるという保証はどこにもありません。また、論文自体に不備や不明瞭な点があるせいで、あなたに限らず誰もが理解できない、という可能性も常にあります。いずれの場合でも、完全に理解できるまで遮二無二がんばり続けるというのは、最適な選択肢ではありません。ある程度がんばってそれでも理解できないなら、あきらめて先に進むべきです。

ひとつの論文を完璧に理解できていないせいで発生してしまうような問題は、通常はありません。また、そのときは理解できなくても、他の論文を読んでいて分かるようになるということもよくあります。完璧主義に陥らないように注意しましょう

落とし穴:自分に甘くなりすぎる


「分からないけれど先に進もう」と判断する基準が低くなりすぎるのは問題です。けれども、基準をどこに設定すべきかは人それぞれです。自分なりの基準を見つけていきましょう。最初は単純にタイムリミットを設定するのもよいかもしれません。ちなみにぼくの場合は「自分が自分に対してよくそこまでがんばったなと思えるかどうか」を基準にしています。

5. 毎日時間を見つけて読む

五つめのポイントは「毎日時間を見つけて読む」です。読むという行為はコミュニケーションの一種です。円滑なコミュニケーションのためには知識だけでは不十分で、練習を繰り返して慣れていった末に会得するものです。そのためには、たとえ短い時間でも毎日休みなく続けるのが最も効果的です。目的意識を明確にして読む方法であれば、隙間時間を使って少しずつ論文を読み進めることも可能です。

落とし穴:まとまった時間を作ろうとする

「まとまった時間がないと論文が読めない」と考えるのはやめましょう。そもそも、今日まとまった時間がないとしたら、明日もそんな時間は作れないものです。そうだとすれば「まとまっていない時間」を使って論文を読むしかないはずです。目的意識を明確にしてさえいれば、たいていの状況で論文を読むことが可能です。ぼくはたいてい通勤電車の中で紙の論文を読みますが、混雑しているときは次善の策としてスマホを使って論文のPDFファイルに目を通します。やらないための言い訳ではなく、やるための手段を探していきましょう。

まとめ

能動的に論文を読むためのポイントは以下の5つです。

能動的に論文を読むための5つのポイント

  • 目的意識を明確にして読む

  • 気になることを書き込みながら読む

  • 知らない単語をその都度調べながら読む

  • 分からないところにこだわりすぎずに読み進める

  • 毎日時間を見つけて読む

これらのことを意識して論文を読み続けていけば、あなたも必ず論文が読めるようになります。ぜひがんばってみてください!

補足:読んだ論文にIDをつけよう


読み終わった論文の数が増えてくると、それらをどう管理していくかが切実な問題になります。ぼくは1万以上の論文を読んできましたが、すべての論文にIDをつけています。そして、著者名、タイトル、雑誌名などで検索できるようにデータベース化しています。加えて、すべての論文のPDFファイルを保管しています。これだけで十分に管理できます。ちなみに、論文をテーマごとに分類したくなるかもしれませんが、おすすめしません(ぼくはやっていません)。たいていの疫学論文はひとつのカテゴリに収まらないからです。ぜひ参考にして、自分なりのやり方を見つけてください。

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『論文の読み方② 英語論文を効果的に読むために必要不可欠なスキルである「能動的な論文の読み方」を伝授します』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。


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