企画書をつくるのが得意な人、苦手な人は何がちがうのか?
今日は「本屋の店主」としてではなく「UXプランナー」として日々考えている「考えるとは?」みたいなことをテーマにnoteを書いてみたいと思います。
以前、「考えるとは?」自分で考え、自分で話せる大人の育て方。という記事を書いたときにも
と書いたのですが、この「考えることが得意な人と苦手な人の違い」を考えることは、私のような、一人で考える仕事をしてご飯を食べている人間にとって「どうやったら自分の仕事を他の人にも手伝ってもらえるのか?(将来的に人を雇えるのか?)」に直結する重要な問題で、常日頃ぼんやりと思考を巡らせているテーマです。
最近はパートナーとして一緒に仕事をしている会社の若手の方と
みたいな流れで企画書作成をすることも多くなり、この「差分」がどこから生まれてくるのか?を考える機会も多いので、自分が出会ってきた「この人は企画書をつくるのがすごく上手だな…!」という人たちの共通点などを考えながら、その「差分」の元を探ってみたいと思います。
① 考えるタイミングがちがう
「企画書をつくるのが得意な人、苦手な人は何がちがうのか?」の①は「考えるタイミング」です。
「考えるタイミング」と言われてもあまりピンとこないと思うのですが、企画書をつくるのが得意な人=考えるのが得意な人」は何らかの情報に触れた時に常に「なんで?本当に?」と疑問を持つことが習慣になっています。
こういう思考の事を「批判的思考」と呼びますが
反対に「企画書をつくるのが苦手な人=考えるのが得意でない人」は、誰かから「こういう問題があります。解決策を考えて下さい。」と問題として明示されるまで考えることを始めない人が多いと感じています。
誰かに「これが問題ですよ。なのでこの問題を解いてくださいね。」と言われれば考えることができるのですが、自分から、自然に、勝手に考え始めるという脳の習慣は持っていない。という感じ。
これってよく言う「勉強ができる」と「仕事ができる」が必ずしもイコールでは無いというお話にも通じていて、学校に通っている時の勉強は常に先生や教科書が「これが問題です」と明示して、生徒である私たちは「その問題の解答を答える」ことができれば「勉強ができる=頭が良い」と評価されてきたのですが、社会に出ると誰も「これが問題です」と明示してはくれません。
勿論、入社したて、若い頃であれば先輩や上司、お客様が「これが問題だから解決策を考えてくれ」と言うことはありますが、それは若い頃だけのお話です。
それに、先輩や上司、お客様も「たぶんこれが問題だよな…?」と悩みながら問題設定を行っているのが現実で、誰も100%の自信を持って「これが問題です!」と言い切れるような人はいない。それくらい、企業活動、経済活動、社会活動における現象は原因と結果の因果関係が複雑で、どれかを特定の問題として定めていくのがとても難しいということです。
最近よく「答えを考えられる人はたくさんいる。問いを立てられる人は少ない。」みたいな話を見聞きすることがあると思いますが、その文脈にも通じるお話で、いつも「なんで?」と考える癖がある人は、問い自体を自分で立てることが得意という特徴があります。
② ストーリーの組立て方がちがう
「企画書をつくるのが得意な人、苦手な人は何がちがうのか?」の②は「ストーリーの組立て方」です。
まず、企画書づくりにおいて「どのようにストーリーを組み立てるか?」は圧倒的に重要です。
企画書を作っている側は、いろいろなことを調べ、考え、そこから企画書(A4横が多い)という限られた面積の中に重要なポイントを抜粋して書いていきます。
この時、常に"この企画について"「企画を考えている側の方が、企画を聞く側より情報量が多い」というギャップが発生します。(実務的な部分ではお客様側の方が持っている情報量が多いことがよくありますが "この企画について" に限定すると企画者側の方が情報量が多いという意味。)
このギャップを滑らかに埋めることができないと、聞いている側は「なんでAの話から突然Bの話になったんだ??」と、うまく頭の中にストーリーが組み立てられなくなってしまい、最終的には「よく分からなかった。あまり納得できなかった。」という結果になってしまいます。
ストーリーの組み立て超大事。
そして、企画書づくりが苦手な人は、企画書を全体のストーリーからではなく、今まで誰かがor自分が作ったことのある企画書のページやパートをコピペして組み合わせるような流れでつくる傾向があります。
いろんな企画書から「導入はAの企画書から、要件定義はCの企画書から、解決方法はBの企画書から持ってきて」みたいな感じです。
この手法を使うと短い時間で「なんとな~く企画書っぽいもの」ができるのですが、お客様が持っている課題感、疑問などを出発点に全体のストーリーを考えていないせいで、なんだかそれっぽいけど結局何が言いたいのかよく分からない、お客様の持つ課題に対して解決策を提示しきれていない企画書になってしまうことがとても多いので気を付けて下さい。
③ 「分かりづらい」に対する敏感さがちがう
「企画書をつくるのが得意な人、苦手な人は何がちがうのか?」の③は「”分かりづらい”に対する敏感さ」です。
②のストーリーの話にも通じるのですが、普段、何気ないことに対して「なんで?本当に?」と疑問を持って生きている人たちは、自分が作っている企画書に対しても、これを読む人が「なんで?本当に?」と疑問に思ってしまうような分かりづらいところ、ストーリーが不自然なところが無いか?に対してとても敏感です。
一方、苦手な人は「なんで?本当に?」という思考を挟む回数が少ないので「なんとなくこんな感じで大丈夫だろう。分かってくれるだろう。(分かってくれるといいな…!)」という感じで「分かる」の部分を読む側に委ねてしまうようなところがあります。
たまたま読解力の高い人が読めばそれで通じることもあるかもしれませんが、作っている当人が、分かりやすさ、ストーリーに十分な自信を持てていない企画書は、当然のこととして読む人にとって「なんでAの話からBの話になったのかよく分からない」「自分が聞きたいと期待していた話と違う」となってしまい、的を外した企画書になってしまいます。
大事なことなのでもう一度書きますが、得意な人は「なんかこの文章とこの文章の繋がり、流れが分かりづらいな。読む人が置いてけぼりになってしまいそうだな。」という「分かりづらさ」に対して敏感なので、結果的に「分かりやすい」企画書をつくることができるということです。
④ アイデアのジャンプ力がちがう
「企画書をつくるのが得意な人、苦手な人は何がちがうのか?」の④は「アイデアのジャンプ力」です。
これは、いわゆる「クリエイティブ・ジャンプ」と呼ばれるものについてです。例えばデザイン思考みたいな手法を使って丁寧にユーザー調査、問題定義、アイデア創出みたいなプロセスを踏んでも、最終的にはこの「クリエイティブ・ジャンプ」が必要になります。
論理的に積み上げていって導き出せる「正しそうな答え」というのは、論理的思考が得意な人間であればみんな同じ答えに辿り着くはずで、競合との差別化が難しくなってしまいます。
この「アイデア創出」「クリエイティブジャンプ」については、一部の天才的な人たちだけでなくもっと多くの人が「ジャンプ」できるようにと、デザイン思考を始めとした○○思考、○○発想法が数多く生み出されてきています。ですが、これらの「アイデア創出のための手法」はあくまでも、ロジックで積み上げていける地点と、ジャンプしないと辿り着けない地点の距離を少しでも短くしようという創意工夫であり、ジャンプする必要が無くなるわけではありません。
このあたりについて興味がある方は、nendoの佐藤ナオキさんが話している
#02 『デザイン思考』では物足りない
を見るととても分かりやすいと思います。
そもそものこと&意外と忘れられがちなことだと思っているのですが、企画にはアイデアが必要です。「論理的に考えれば○○を実行する必要があります」というのはアイデアではありません。誰でもよく考えれば分かることは、お客様も分かっています。
限られた資源(人、お金、時間)の中で「○○」を実行する為にこんな工夫をしたらいいんじゃないか?
がアイデアであり、そのアイデアが新規性や意外性、合理性や実現可能性を持っているからこそ、それを見聞きしたお客様が「このアイデア(企画)を買いたい…!」と思ってお金を出してくれるわけです。
そして、このアイデア創出も、普段から「なんで?本当に?」と疑問を持って生きている人は自分の頭の中に今まで考えてきた「疑問&解決策としてのアイデア」を大量にストックしている状態で、そのストックの中から「題材は違うけど構造が似ているからあれが使えそうだな…!」と引っ張り出してこれているのでは?と考えています。
じゃあ、企画書をつくるのが苦手な人はどうしたら良いのか?
ここまで①~④を整理してみると、「企画書をつくるのが得意な人は普段から考える癖がついている」という結論になってしまい、苦手な人へのアドバイスが難しくなってしまうのですが、まずあなたの周りにいる企画書作りが上手い人の根っこにこういう特徴があるのでは?というのを意識して、普段の様子や仕事振りを観察してみて頂きたいです。
そして、この脳のクセ、思考習慣の違いがあることを理解したうえで、企画書作成時には「なんで?本当に?」スイッチを意識的にオンにしながら「お客様が抱えている問題の根っこにある "なんで?" "どうしたら?" に対する魅力的な解決策が考えられているか?」「そしてそれが分かりやすく伝えられているか?」をよくよく自己点検しながら企画書づくりを進める必要があります。
②のストーリーのところで書いた
については、経験が浅い時には誰もが通る道で成長のプロセスとして必要な工程ですが、ずっとこの「コピペして組み合わせる」をやっていても一流の企画者には成れないので、いつかこの手法から卒業する必要があるということを覚えておいて欲しいです。
それと、コピペをするにしても、あまり深く考えずに「なんとなく企画書っぽくなるからコピペしてくる」のではなく、そのページや内容を初めに考えた人がどういう思考を経てこのアウトプットに至ったのか?というのをなるべく想像しながら活用する。
というのもその後の成長に繋がる大切な考え方だと思いますので、是非そのあたりも意識しながら今後の企画書作りに挑戦してみることをおススメします。
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