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アンチエイジング・サイエンティスト

予想所要時間:10分

目次
1. はじめに
2. コラム
3. 老化を科学するひと
4. おわりに

1. はじめに

はじめましての方もそうじゃない方も、こんにちは。みずけんこと水谷健です。
これまでnoteには、主に漫画やイラストを載せて楽しんでいましたが、実験的に学問的テーマを真面目に取り上げる記事を連続投稿していきます。
実は私は、科学や研究が大好きな人間なのです。加えて、哲学おたくでもあります。

さて、第一回のテーマは、#老化を科学すること。

老化の科学だなんていきなりマッドだなと感じられる方もいるかもしれませんが、その実像は如何なものでしょうか・・・。

ふとしたきっかけから老化や死のテーマを真剣に調べるに至り、その科学的事実はもちろん、取り組んでいる人の姿に大変心を打たれました。今回は、「人」に注目して書いていきたいと思います。

読む内にあなたも、信念を持って科学的に老化や死に向き合う人々がいることに心動かされ、またその知見から生命の神秘について思いを馳せることになるかもしれません。

2. コラム

ごく個人的な話をします。私は、小さい頃から、自分の意識が無くなることに対して、納得が行かない日々を送っています。じつは眠るのも怖ければ、お酒で意識が飛ぶ人の話を聞くだけで怖い。死後に意識が消失することに至っては言いようのない不安を感じます。

茂木健一郎先生の「生きて死ぬ私」(ちくま文庫)によると、
「死に関して怖いのは次のどちらか。A- 死ぬときの痛み B-死後の自己の不在」
というアンケートを日本人に対して行うと、Aを答える人が大多数なのだそうです。

私は迷いなくBと答えますが・・・皆さんはどうですか?

らくがき4コマ「小さいときのぼく、生死になやむ。」

3. 老化を科学するひと

【オーブリー・デグレイ博士、ビル・アンドリュー博士】

まずご紹介したいのは、オーブリー・デグレイ博士。以下は博士によるTEDスピーチです。

博士は熱心にこう語ります。
「老いに対して、若返り化が追いつくのならば、それはあなたが死なないことを意味する」

既存の権威からは、出てこない台詞かもしれません。デグレイ博士は、コンピュータ科学の専攻から医学の専攻に転身した経歴があるそうです。

そんなデグレイ博士と共に研究しているのが、ビル・アンドリュー博士。

二人が出演しているドキュメンタリー映画があります。その名も、"The immortalists (不老不死の人たち)"。以下の動画は、そのダイジェストです(英語)。

彼らが注目しているのは、「テロメア」。

我々の細胞には、染色体という遺伝子をふくむ物質がありますが、その端を保護しているのがテロメアです。細胞分裂時に、テロメアはどんどん短くなり、それがある一定の長さになると細胞が分裂できないようになっているそうです。

アンドリュー博士は、積極的にテロメアを伸ばして細胞分裂を永久に繰り返せば、人は老いないだろうと考えています。そこで、テロメア伸長に役立つ物質を薬として販売しているそうです。

ですが、話はそう簡単ではありません。以下に続きます。

【エリザベス・H・ブラックバーン博士】

テロメア伸長に関わるテロメラーゼの発見でノーベル賞を受賞した、エリザベス・ブラックバーン博士をご紹介します。
(下の動画は英語版しかないようです。)

ブラックバーン博士の主張はこうです。
「テロメアを無理に伸長しては、通常滅ぶはずだったガン細胞まで生き残ってしまい、ガンになるリスクが高まる。それよりもまずできることは、過食を控える、ダイエットをする、瞑想するなど、健康に日常を過ごすことです」

ちなみに瞑想のことをマインドフルネスと言い換える人もいますが、健康法として近年大変注目されています。マインドフルネスについては別の記事で書きたいと思います。

テロメアに関しては、NHKで取り上げられた時のWebページがあり、大変わかりやすいです。

しかし、細胞の老化以外にも、実は個体の老化に関わるものは沢山あります。

【ローラ・デミング CEO】

広く個体の老化現象を調べている人物について紹介します。
ローラ・デミングさん。(こちらも動画は、英語版のみです。)

彼女は幼い頃から、人の老化と死に疑問を抱きながら成長します。
「どうして、死ぬなんて、そんな恐ろしいことが現実に起こるというの?」と。

そして運と知恵を駆使して、12歳の頃から大学で老化に関わる研究を始めました。
しかし、基礎研究と応用との間に壁を感じるようになるまでに時間はかかりませんでした。

いつしか、こう思うようになります。
「皆が全力で取り組むべきはずのこの課題に、あまりにも力を入れている人が少ないのはなぜ?」

彼女は、天才投資家ピーター・ティール氏のもとを訪れ、この悩みを相談しました。
彼女の才能を見出したティール氏は、彼女を助成金という形で支援することに決めました。ただし、条件が一つ。

「大学をやめなさい。そして、事業を行いなさい」

彼女は即決します。通っていたMITを中退し、Longevityというファンドを立ち上げました。Longevityとは、長寿という意味。それは文字通り、人体の長寿化に貢献する企業の活動を支援するファンドです。
Longevity Fund

彼女は大学の研究より今はむしろ、企業の力を最大限に引き出して、老化の問題を解決しようと考えているようです。

そんな彼女のインタビュー記事が日本語で存在します。

またTwitterアカウントも活用しているようです。多忙につき、なかなか連絡はつかないようですが、自身のメールアドレスも公開しています。

彼女に心動かされるのは、その科学的な知恵に対してだけではありません。
疑問に思い、取り組んで解明すると決めたことに対する一途さや、周囲に働きかける積極性は、何か大切なことを思い出させてくれるようです。

デミングさんの個人ページには、いま老化研究で著しく注目に値するトピックがまとめられています。ただしこちらも全て英語です。ご希望があれば、和訳と解説をしてみますね。


【今井眞一郎博士】

最後に、この分野で活躍する日本人研究者を紹介します。
今井眞一郎先生。

今井先生は、おおまかに言えば、体の健康をキープする働きをもつ「サーチュイン遺伝子」を活性化させるための物質に着目し、外部からその物質「NMN」を供給するというアイデアを形にしています。

実業家の堀江貴文さんとの対談で一番わかりやすく語られていますので、その記事をご紹介します。

NMNの供給薬を、堀江さんは服用中とのこと。しかし、効果はいまはっきりと分かっているわけではないようです。そのことが書かれてある記事が、有料記事ですが、こちらです。

先生の研究成果は世界的に注目されていますが、時には「リーダーシップ」に関する講演をされているなど、活動は多岐に渡ります。気になる方は、先生のお名前で検索してみてくださいね。

また冒頭でご紹介したデグレイ博士との決定的な違いとして、今井先生は「死を免れるために研究しているわけではなく、生きている時間をより健康に過ごすために研究しているのだ」と明言されています。

4.最後に

いかがでしたか?

死や老化に正面から向き合うのは、二つの文脈がありますね。
死を受け入れる精神的な準備と、もう一つは、今回紹介した方々のように、科学的に問題解決を試みるということ。

この話に続きがあるとすれば、3つの方向性があります。

1つは、先ほども書いたように、ヒトの抗老化の科学についての具体的・詳細な話。

また1つは、社会学的な話。つまり、「人が老いない社会になったとき、それは安全で幸せな社会と言えるのか?」という話です。

最後の1つは、すこしポップに、「ヒト以外の生物の寿命の話」です。有名なところとしては、冷凍されると半永久的に生きるクマムシの話が面白いですね。

実は、「老化を食い止める」という名目の研究予算は、国からのものは大変少ないです。それは、日本であれ海外であれ傾向としては同じです。個人的にはこの研究の重要性を認識した者が協力して研究費のファンドを運営していくのがよいと思っています。



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著者プロフィール
水谷健
1992年11月生まれ、三重県桑名市出身。
名古屋工業大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究科卒。
さまざまなタッチで漫画を描くことを好む。
研究家と漫画家と事業家の三本の矢で進むことを夢見る。
養老孟司氏、茂木健一郎氏、堀江貴文氏、伊藤穰一氏、イーロン・マスク氏の話題が好き。
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Photo credit: S. N. instagram

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