五十肩note用

よくある不調なのによく分かられていない四十肩・五十肩。(後編)

前回、四十肩五十肩のよくある認識の間違いについて書きました。
今回は、この病理的な部分について触れていきたいと思います。
ついでに私の臨床経験の中での考察や所見も入れていきます。

さてこの四十肩五十肩、正式名称でないのならば実際にはどのような状態で、診断名としてはどうなのかという事が気になりますよね。
実はこれ、いっぱいあります。いくつか挙げてみましょう。
・肩関節周囲炎
・石灰沈着性腱盤炎(腱炎)
・インピンジメント症候群
・腱癒着
・腱板断裂
・サブラクセーション(サブラクセーション=亜脱臼:カイロプラクティック用語、日本ではまだ医学的には認められていません)

それぞれ解説していきます。

肩関節周囲炎
四十肩五十肩においては一番多く診断される診断名のようです。これは読んで字のごとく、肩関節周囲の組織のどこかに炎症が発生している(だろう)という事です。
あー、なるほど!と思いがちですが、よくよく考えてみるとどこがなんでという部分の説明力に欠けています。要するに、こう診断された時点では医学的にはよく分かんないという事です。
経験上、この診断の方は速攻で改善したりする事が多いです。数か月から長い方では2年程もの間、整形外科や接骨院に通ってるけど治らないという人でも、5分くらいで改善する事もあります。
肩の炎症という所にフォーカスしていると気づかないのかもしれないのですが、原因筋を見極めた上で、直接肩ではなく筋膜連鎖などを考慮して施術をかけると、嘘みたいに動くようになったりします。

石灰沈着性腱板炎(腱炎)
これはかなり具体的で分かり安いですよね。詳しくはまだ解明されていないようですが、体液循環状態の悪さなどから体内の石灰成分が肩関節周囲の組織(主にローテータカフ=回旋筋腱板や腱組織にできる事が多い)に沈着し、それが動作時に干渉する事で炎症が発生するという状態です。ちなみに石灰といっても石のような結晶化したものではなく、ぶよぶよしたゼリー状の状態で沈着しています。
ただ、私の経験上、画像診断でこれが確認できていても、四十肩五十肩の直接的な原因とは関係なかったりする事もしばしばあります。椎間板ヘルニアの症状関与性に似たものがありますね。
そう考える理由として、施術をすると肩関節周囲炎の方と同じようにすぐ改善して、しばらくして画像診断してもらったら石灰沈着がなくなっていたという事例があったりします。

インピンジメント症候群
インピンジメントとは組織の挟み込みの事です。肩関節の外転動作時、上腕骨と肩峰(鎖骨の端っこ)の間に関節包(関節を包む膜組織)などが狭まってしまい、炎症を起こすというものです。体の内部からつねられているようなものですので、想像しただけで痛そうですね。
これについてははっきり診断を受けた人の施術経験がないのでなんとも言えないのですが、後述のサブラクセーションと関連性があるのではないかなあと個人的に考えています。
サブラクセーションにより関節の安定性が悪い状態で肩を動かすことにより、本来は挟まらない構造になっている組織が挟みこまれてしまうのではないかと思います。

腱癒着
これも文字通りで、腱組織が癒着してしまっているという状態です。
腱組織がなんらかの理由で損傷したり強い炎症が起きると、修復の過程でその周囲の組織に癒着してしまう事があります。
本来干渉せずに動く部分がくっついてしまっている事で、その癒着している部分ごと引っ張って動いてしまうので、癒着の程度にもよりますが激しく痛む事が多いです。
体のどこにでも起きる可能性がありますが、肩の場合は構造上の関係で上腕二頭筋の長頭腱に起きる事が多いようです。
これについては、医学の治療を受けるのが最も適切だと思われます。
癒着という現象は外傷を放置した結果の状況だと考えられますので、いくら手技療法で周囲の筋肉を緩めたり骨格を調整しようと、その周囲組織の弛緩による症状緩和以上の事はできません。根治するには癒着した部分を外科的に切り離すのが一番適切だと思われます。

腱板断裂
腱板断裂とは、これも字のごとく回旋筋腱板のどこかが断裂してしまっている状態です。肩に急激な負荷をかけたり、酷使し続けたりする事で起こります。いわゆる野球肩やテニス肩の人がなっている事も多いです。
完全断裂と不完全断裂がありますが、いづれにせよこれは完全な外傷ですので、医学治療が最も適切だと思われます。

サブラクセーション
サブラクセーションとは、日本では医学的な診断ではありませんが、カイロプラクティックが医学の一分野とされているアメリカでは認められている状態です。意訳すると亜脱臼という事になります。
外傷である脱臼のように関節が外れてしまっているわけではなく、安定性が悪くなっており完全にはまっていない状態という事になります。
経験上、この状態は肩関節の骨格調整で改善する事例が多々あります。



このように、四十肩五十肩と一口に言ってもその状態には様々なものがあります。
理由として、肩関節がその動きの自由さを得る代償として構造的に不安定であり、またその不安定さを補填する為に複雑な構造になっているという事が挙げられます。
そのため、安易に決めつけてしまうと誤認してしまったり、上記に挙げたものが複合した状況であったりする事もあり、しっかりと構造を理解している者でないと判断が非常に難しいとも言えます。

もし四十肩五十肩かもしれない!という状況になったら、まずはしっかりと診てくれる病院で原因を調べてもらい、状態を把握した上で自分に最も適切だと思われる治療法や改善方法を選ぶという知識を持つようにすれば、必要以上に苦しんだり機会を損失するという事態を避けられるでしょう。

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