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1980年代のeスポーツ~ベーマガ “チャレハイ” の思い出~

ゲームセンターでハイスコアを申請すると雑誌に名前が載るという文化

以前、別のところでも少し話したことがあるのですが、『マイコンBASICマガジン(通称ベーマガ)』の「チャレンジ!ハイスコア」(通称チャレハイ)の思い出を書きます。 ※最近のツイートの転載です

チャレハイとはベーマガの1コーナーで、全国のゲームセンター約100店舗で出された各種ゲームのハイスコアを毎月集計し、ゲーム毎に全国トップを掲載するというもので、主に1980年代から90年代にかけてゲームセンター向けのゲームが上手な人たちに大変注目されていました。

現在のeスポーツはその多くがPvP型ですが、80年代、とくにアーケードは大半のゲームがPvE型で、1人でプレイした際の「スコア(得点)」が個人記録として残りました(2人協力プレイの合計スコアが表示されるものもありました)。記録を出した際に、お店にそのスコアを申請するわけです。

現在のeスポ―ツが主にサッカーやテニスのような直接対戦型の競技であるのに対し、当時のアーケードゲームは走り高跳びや重量挙げのような個人競技、いわば間接対戦型の競技でした。

ゲームセンターにおけるこうしたハイスコア競争の元祖を辿るのは難しいのですが(自然発生的に各地で行われていたので)、日本国内の雑誌掲載による競争に限っていえば『月刊TVガイド ビデオコレクション』、そして『アミューズメントライフ』辺りが最初だと言われています。

ベーマガ“チャレハイ”の誕生

これらの雑誌に続いてベーマガのチャレハイを立ち上げたのが、同誌のゲームライターうる星あんず氏と、当時の編集長だった大橋太郎氏です。

チャレハイ開始時には、ナムコ社(現・バンダイナムコ)の直営店舗が集計店に選ばれました。

当時のゲームセンターは不良も集まるガラのよくないお店もあったのですが(一部ですよ)、その中でナムコは比較でいうと健全な店舗ばかりだったことと、ゲームメーカーとしてナムコが作っていた製品がゲームファンから高く評価されていた、ということも主な理由だと思われます。

ベーマガを刊行していた電波新聞社が費用を負担して、それらの店舗に巨大なハイスコアボードも設置されました。

ベーマガはそもそもプログラムの学習誌なのですが、併載のゲーム情報のページとともにチャレハイもゲーマーから注目されるようになりました。現代のeスポーツと異なり、賞金はおろかネット配信もない時代でしたが、誌面で讃えてもらえるだけでもとても嬉しかったのです。

徐々に仕組みが作られていった黎明期

その後、あんず氏が同誌から卒業したために、しばらく同コーナーは担当者不在の時期があり、たしか編集部から直接依頼があったと記憶してるのですが、ぼくがこのコーナーを担当することになりました。あんず氏に続いての二代目ということになります。以後、数年間担当しました。

ぼくが担当になってから、各店舗へ送る記入用紙に、そのスコアがどんな設定(持ちキャラ数や難易度ランク等)で出された記録かを書いてもらうための備考欄を設けました。この欄を活用して各店舗がいろいろな情報を追記してくれるようになりました(たとえば連射装置を用いて出した記録か等)。

それから、毎月の申請の締切日も設定しました。締切日がなかった時期は、他のお店で申請を締め切られた後に、締め切り日の遅い他店舗でその記録を抜くことを目標にしてプレイするような、ちょっとズルい駆け引きがあったんですね。

他にも、扉ページに記録の解説や補足のためのリード文や、各店舗からのお知らせコーナーなどを追加しました。ページを充実させていく手直しはやっててとても楽しかったですね。「そうだ、あれもやろう、これもやろう」って感じで。

各店舗の記録は電波新聞社で電算処理されてゲームタイトル順かつスコアの高い順にソートされてプリントアウトされてくるのですが、難易度ランクの異なる記録が混ざっていたり、タイトルが間違って入力されたりすることがしばしばあったので、最後は目で見て集計する必要がありました。

当時は真偽の怪しい記録もありました。店員がちゃんと確認していなかったり、場合によっては、店員さん自身が自分のスコアとして偽りの記録を申請するようなこともあったんです。この辺はある程度仕方なかったと思います。ゲームセンターはeスポーツのために運営されてるわけではないので。

頭の痛い問題だったのが、永久パターンが見つかったゲーム。ゲームを先へ進めることなく同じ箇所で半永久的にスコアを稼ぐことのできる抜け道のことです。記録に意味がなくなるため、そのゲームのハイスコアを狙ってたプレイヤーが心底ガッカリすることに。プレイ時間を簡単に延ばせるのでお店も困る。

ただ、これはまさにゲームセンターだからこそ“悪”と捉えられていた抜け道でもあって、スーパーマリオの無限1UPなんてゲームを面白くする技として大半のプレイヤーから肯定的に受け入れられていたわけで、どういう環境向けに作られたどういうゲームかで見え方が変わってくる興味深い例ですね。

他にも印象に残ってる思い出で、アウトラン(コースが分岐するドライブゲーム)で、コース(ゴール)別にタイムを集計したところ「コースの選択を含めて戦略なのだから別々に集計するのはおかしいのでは?」という意見をもらったことがありました。今でも面白い視点だと思っています。

数年前のツイートを貼っておきます。『月刊TVガイド ビデオコレクション』誌のハイスコアコーナーのスキャン画像です。 了


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