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ゼビウス総攻撃バグの話題と、同ゲームの伝説化に関する考察

先日ツイートした内容の転載です。

 発売から40年近く経つアーケード版『ゼビウス』に、今になって敵が総攻撃してくるバグが見つかったということで、ちょっとレトロゲーム界隈で話題になっています。少し検索してみたら、当時偶然これを体験した人もいたみたいですね。

 ナムコにいたときに『ゼビウスアレンジメント』というゲームのディレクションを担当しました。そのときオリジナル版も選択できる仕様だったので、プログラマがオリジナル版の解析をして、おおよそ有名なバグについてはわざわざバグフィックス版まで用意したのですが、このバグ技は記憶にないです(※)。

※追加情報ですが、このニュースを知った別の技術者が後日コードを解析したところ、本当にできることが確認できたという話を聞きました。

 思うに、『ゼビウス』のおもしろさってゲームとしての“不安定さ”にもあって、当時作者の遠藤雅伸さんがプログラマとしては初心者だったがゆえに、本来だったら残らないようなバグがたくさん残っているんですよね。

 で、『ゼビウス』はその世界観自体が神秘性を感じさせるもので、そもそもの仕様としても、いくつもの謎(隠し要素)が盛り込まれているので、プレイヤー視点では、それらとバグと誤情報、すべての境界が曖昧なまま混然となってフォークロア化して、伝説的なゲームとなった面もある気がします。

 それはゲーム文化幼年期にあって、プレイヤー側にも純粋さがあった時代だからこそ定着した伝説だった気がします。プログラムの集合体に過ぎないことがわかっているのに、いまだに当時の世代がこの話にときめくのは、たとえば昔の空飛ぶ円盤ミステリーに郷愁を感じるのに近いとでもいえばいいのか。

 元のゲームがおもしろくて、そこにバグもうまくハマったゲームってけっこうあると思うんですけど、『ゼビウス』のようにそれが半ばゲームの世界観にまでイメージとして取り込まれている作品ってきわめて珍しい気がします。当時の誤情報も含めて一体化したイメージが、ぼくらのなかにあるというか。

 で、おそらくそれを定着させたのは、制作者のやんちゃな性格(インタビューなどで想像の余地を残すような発言をする)と、あとは間違いなく、それらをミステリアスな切り口で載せた「マイコンBASICマガジン」などの記事によるところが大きいでしょうね。 了


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