![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139206117/rectangle_large_type_2_88fb33bced0b3acb1b95acd467334b02.jpg?width=1200)
スペインのバスケット界の構造
さて、なんとか一回だけの投稿で終わらずに続きを書く気になりました。
今回はスペインのバスケットボール界の構造について日本と比較しながらお話をしていきましょう。
海外サッカーが好きな方だと、割と馴染みがあるかご存知の方も多いかも知れませんが、こちらのバスケットはサッカーと同じく基本的(年代別のカテゴリもある事にはあるので後述)には年齢は関係なく全てのクラブがACB Liga Endesa(サッカーでいう所のリーガエスパニョーラ)を頂点として毎シーズンを戦い抜き昇降格を経ながら切磋琢磨をしています。
ここでまずは日本とスペインの各国の状況を簡単に羅列して説明して行きましょうか。
・現在の日本の構造設計
プロリーグ【B League】のB1、B2、B3,その下に現在は直接的な昇格制度はないですが地域リーグと呼ばれるものがあります(所謂サッカーでいうところのJFL)。
それ以外は大きく分けると一般(社会人)、大学、高校、中学とそれぞれのカテゴリが存在をしています。この4つのカテゴリ達はそれぞれのカテゴリ内のみで日本一を争うものであってどれほど強くてもカテゴリが変わったり、プロと他カテゴリと天皇杯以外で対戦することはありません(天皇杯にしてもほんの僅かな限られたチームのみがその機会を得られます)。
内訳としては、
B1 24クラブ
B2 14クラブ
B3 18クラブ
〜ここまでが完全プロリーグ〜(最後の企業チームが今季脱退したので)
地域リーグ およそ60チーム程(2024年から地域リーグも1部と2部に階層分けするという話もあるようですが詳しくは不明)
大学生 200-300チーム程
高校 4000以上
中学と一般は話の主軸にあまり関係がないので割愛します。
※数字はchatgpt調べなので間違ってたら機械のせいです。俺じゃない。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139206130/picture_pc_f08428b5650eb066c9697c37e237db0b.png?width=1200)
・スペインの構造設計
対してスペインの構造を比較すると、
ACB リーガEndesa 18クラブ
LEB Oro(Gold) 18クラブ
LEB Plata(Silver)28クラブ
Liga EBA 109クラブ程
〜ここまでがいわゆるプロクラブが存在するリーグ〜
以下 Nacional なんたらって名前のカテゴリがズラズラと永遠に続く。
別枠で年代別や学校ごとの大会やリーグも存在するので後述します。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139206140/picture_pc_8ec67fe946dcba191240d22ceb96fc5d.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139206137/picture_pc_115424de6cd524f9461a1f127a615c35.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139206138/picture_pc_df5d66848b44ba1e18f2753677308d92.png?width=1200)
登竜門リーグLEB plata
経営規模としてはまだ小さいクラブも多い。
EBAは良い画像がなかったのだけど、ほぼ全てのACBとLEB oroクラブのセカンド(サテライト)チームがここにチームを持っています。理由としてカンファレンスがわりかし狭いので移動費を節約できる割にレベル自体はかなり高い為。正直LEB plataの下位のクラブよりEBAの上のクラブの方が強かったりもします。なんでそんな歪みが発生するかというと全てのEBAチームが昇格を目指してるわけではない背景もあったりします。
蛇足ですが、3部や4部以下のカテゴリになると街から受けられる支援もマチマチなので、そもそも2部や3部に上がっても経営面で弾かれるもしくやっていく体力がクラブやレアルやバルサ、バスコニアなどの強豪チームのセカンドチームは勝とうが負けようが自クラブの選手さえ育てばあとの結果はあくまでオマケみたいなのものなので昇格権を得られても譲渡したり売ったりするケースが多く発生します。なのでEBAのチームでも17歳で204cmくらいの子が普通にDFの上からダンクかましたり、3Pをバシャバシャ沈める208cmのシューターみたいのが、たまに出てきますし。LEB plataのベンチのはじの方の出てくるか出てこないかよく分からないような子だと、B3でもボール運べないんじゃないかみたいな子もたまにいます(流石に試合に出てる子は上手な子がほとんどです)。
2カ国の比較と在り方
一番大きな違いはスペインでは各リーグの全てに昇降格の制度がついていることでしょうかね。
一応年代別の大会はあるのですが、育成や選手発掘の要素が強く(とはいえ育成への熱量も凄まじいのだが)、あくまで主軸はACBを頂点として長い長いピラミッドになります。
では、何が一番大きく影響を生んでいるか?
①各クラブへの年齢制限が厳しくない事
②クラブ間の移籍の制度がかなり活用されている事
この2点が特に大きい要素だと考えてます。
詳しく解説をして行きましょう。
①ひとつ目の年齢制限がないという点に関しては才能やポテンシャルがある選手が日本の学校のカテゴリのように少なくとも3年間同じ年代でプレーしなければいけないという縛りから解放される為、より成長が得られやすい能力や技術の高い相手との対戦やチームメイト(コレ大事)との日々を過ごす事ができるようになります。
実際に日本で起こる例を見てましょう。
例:地方高校で中学校で既に190cmを超え、線も細くない選手がいても、彼は基本的には同年代のおそらくは180cmを超えないのが大多数の選手達と日々を過ごさなければいけない。
上記の例は小さい選手がバスケットに向いてないとか、そういった類の話ではなく、その選手が将来どのレベルまで登り詰める可能性があるか、仮にプロなどにトライできるレベルのポテンシャルだった場合にプロに行った際にはかなりの高い確率でフィジカルだけで相手を圧倒するようなプレイができなくなるはずである。
であれば、本来は若いうちから体格が互角or劣る状態でも状況を打破する為の経験値を増やさなければいけないのに、ほぼ3年間をそれらの経験を出来ずに終えてしまう可能性があるのは非常に危ういと言わざるを得ない。
スポーツにおいて様々な状況や負荷を乗り越える試行回数はなによりも大事なのに、それをほぼ得られない。
事実、私自身も中学で190cm、高校で196cmあり、多くの試合では労せずに大量得点を得られたし、日々のチーム練習は物足りないと言わざるを得なかった。
わかりやすく言えば調子に乗ります。有頂天も良いとこです。
高校卒業後に渡米し、米国の大学バスケットにてプレーしたが、蓋を開ければむちゃくちゃ下手だったし、ほぼ全てのプレーを止められ何もできなくて泣きべそかくまでコテンパンにやられてました。
もっと早い時期に体格が同じ選手達と多くやりたかったですし、本当の『頭を使うバスケット』をもっと早く経験したかった。
これに対してスペインのシステムでは年齢ではなく純粋にクラブがスペイン国内のどこに所属しているかで対戦相手が変わる為、優れたタレントやポテンシャルのある選手、サイズのある選手は中学生だろうが高校生だろうがバンバン上のカテゴリに送り込まれる。
上記のEBAやLEB plataにはアンダー世代の代表だらけの名門クラブのサテライトチームやこれからトップを目指してガッツリ投資してくる本気で昇格を目指してる新興クラブ(日本だと一時期の長崎やアルティーリみたいなクラブ)やなどが混在してる為、若い選手はかなり揉まれます。相当揉まれます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139315756/picture_pc_11b3b1dcaa33d8796220e377021f6983.png)
プロデビューはなんと14歳
(写真はジョベントゥットバダロナ時)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139315780/picture_pc_1ed3959481b7ef8b9ed99ad76c607cd6.png)
スロベニア代表でNBAスターのルカ・ドンチッチ
13歳にしてレアルマドリードと5年契約を結んだ
だって想像してみて下さいよ!15歳くらいの中学で無双してる小僧がいきなりマットボンズや狩俣(両者共、B3時代に長崎でプレー)なんかとマッチアップするんですよ?
そりゃ流石に通用しないし、コテンパンにやられて自チームに帰ってむちゃくちゃ練習するじゃないですか。
大きい選手ならもっと鍛えて、もっとスキルつけて。
小さい選手なら自分より大きい選手が自分より運動量があったりスキルがあるのを許せないはずじゃないですか。
それがスペインでは常に起こってる。
少しでもいいなと思われればすぐに上のカテゴリの選手と対戦させられる。
『クラブ側に適正レベルを常に模索されてる』とでも言いましょうか。
そこで次の大きな日本との違いを説明するのですが、
②クラブ間の移籍の制度がかなり活用されている事
これに関してはそのまんまなのですが、少し詳しく紐解いていきましょう。
まず、そもそも論として95%の選手がクラブと契約を結びます。
そして有望な選手は10代でも平気で6年契約とかを結びます。先日、私が所属をしていたLEB plataの選手にU-18スペイン代表に入っていたインサイドのJorge Carotという選手がいるのですが、先日2029年の終わりまでという6年契約の長期契約を更新しました。日本では中々考えられないですね。サッカーでは近いものは見かけたことはありますが。
なので、すごく乱暴な言い方をするとここからの6年間は売ろうが飼い殺しにしようが自由なわけです。とはいえ大事な選手だから6年の契約を結んだのであってしっかりとトップチームで活躍できる選手にする為に、あの手この手で選手の育成をします。
なのであえて上のカテゴリで揉まれるように送り込んだり、下のカテゴリでしっかりと出場時間を得られるようにそこまで大きな予算のないクラブに貸し出したりします。
そして他地方のクラブだけでなく自クラブが複数カテゴリにチームを持つ場合もあります。
これが結構面白いシステムで同じ組織であれば選手を自由に入れ替えられます。例えばバルセロナのセカンドで活躍する選手がいて、そろそろ上のカテゴリで試したいor経験を積ませたいといった状況の時に1試合だけとかでも平気でバンバン送り込みます。
これだけだと日本でもすぐに実現できそうなものなのですが、面白いのはもう一つのシステム、自組織外でも他クラブと提携してリーグに申請すれば、そのチームのロスターから4選手を指定して、その4選手に関してシーズン中に自由に入れ替えができるのです。
なので、例えば、バルサやレアル、僕のいたバレンシア(正確には僕はGodellaの所属でした)みたいなチームでなくとも近隣の他カテゴリのクラブと提携して育成や勝利などのお互いの需要を求めていくことができるのです。
※NBAとG leagueの関係性に少し似てますね。
例えば、僕のいたバレンシアバスケットはバレンシア中心部から20分程離れたGodellaという町のチームと提携をしています。
バレンシアバスケットは大組織なのでEBAにもチームを持っていますが、EBAだけだと私が所属していたGodellaにはスペインやアルゼンチンのアンダー世代代表の子達は物足りない、もしくは伸び代を活かしきれないとクラブが判断したので、Godellaと提携をして有望選手達を育成します(正確にはもう少し細かいのですが割愛)。
シーズン中の入れ替えだけでなく、1年や2年単位でレンタルに選手を出すケースもザラにあります。
以上2点が大きく日本と違う点で、日本で発生しがちな有望な才能の機会損失や上の目指すクラブや育成を目指すクラブ、地域にクラブが存在する事自体に価値を見出すクラブなどが選手を適正レベルや環境に配置しやすい点が世界でもNBAに次いでスペインが競技レベルでは成功している理由でしょう。
その他のポイント
・U-18やU-15の大会等はもちろんあります。同世代の中でどこのクラブが成功しているかや有望の選手の発掘など、これはこれで大きな意義とそれぞれのプライドを懸けた戦いではあるのですが、ACBからなる主軸のピラミッドとは別軸で並行して行われているという事がポイントです。あくまで主軸はメインのピラミッド。
・学校ごとの大会やチームは基本的にはレクリエーションです。あるにはあるが、プロを目指す子達は基本的には関わらないです。
・日本でいうところの社会人、クラブチームなどは大体がEBAの下のNacionalの1部や2部、3部などにいます。(僕的にはこのおじさん達が昇格過程の新興クラブの若い10代の選手達に粉々にされるてるのはまあまあ痛快で面白いです)
私の見解
さて、こんな所ですかね。
もちろんスポーツそのものの本質として万人が楽しむ権利があり、老若男女アマチュアからプロまでどちらが偉いとか価値があるといった差をつけるものではないと私は考えてます。
ですが、競技力の向上を考えるとやはり、上を目指すクラブや選手達とそうではない純粋にスポーツを「楽しむ」だけの選手やクラブは同じ場所には配置しなくても良いのではないかとは常々思っています。
優勝やプロ輩出が現実的ではないチーム達にも適正レベルのカテゴリに配置される事のメリットは多くあります。
わかりやすく言えば高校の時に一回戦から強豪校に当たり100点差で負けて高校バスケ生活を終えるのは子供達の経験値から、本来、仲間やコーチと時には苦しみ、時にはお互い熱くなったり、嬉しさのあまり抱き合って喜んだり、それが彼らを成長させ、本当の意味でのスポーツによる人間力の向上や生活の豊かさを得られるのではないでしょうか?
上を目指す選手達にとっても適正レベルではない100点差のゲームはハッキリ言いますが一つもメリットがありません。誤解を恐れずに言えば、ジムにあるバイクに40分乗ってるのと変わらないです。体格差によってお互いに怪我をする可能性がある分デメリットの方が大きいとまで言えます。
日本とアメリカ、スペインで選手やコーチをしてきて思うのは、圧倒的な日本人選手の引き出しの少なさや武器の少なさです。個人技やチームプレイ、戦術の理解など国によって違いはありますが、力の近い相手と対峙した経験から、それを乗り越える為の工夫や努力、試行回数は遥かに日本の方が少ないです。アメリカは欧州のように階層制ではないですが、それを補ってあまりうる才能のと良質なコーチ達のプールがあります(ついでに言えばお金も)。
今では日本も各世代にどうすればより良い影響を与えられるかを工夫するようになり非常に喜ばしい限りですし、関係各所や日本協会の努力の賜物と言えると思います。
ただ、いつの時代も国も『子は宝』なので育成世代にフォーカスしたルールの発案や設計をしていますが(そしてそれは正解だとも思うが)、純粋にバスケットも楽しみたい人達も満足できるようになる日まではもう少し時間がかかるかもしれませんね。
個人的にはトップなどで活躍した選手達が現役時代にもう少しバスケット以外で蜘蛛の巣貼り散らかしてる脳みそを使って勉強や経験値を貯めて引退後に協会などの制度を作る側に回ってくれる日が来るといいななんて考えてます。
ちょっとは無料にしては割と良いクオリティの文章を提供できたのではないでしょうか?笑
疲れた笑
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139315856/picture_pc_07417747abb613a8327c6326fe38bed7.png?width=1200)
CB L’horta Godella
選手達は代表経験者だらけ
さてさて次回はいかに。
次回はスペインコーチライセンスかスペインのお食事事情の事でも書こうかな(次回のテーマを今あらかた決めないともう2度と書かない恐れがある為)
ではでは。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?