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データは有益だが「顧客の声」の代わりにはならない

#Harvadbusinessreview から『データは有益だが「顧客の声」の代わりにはならない』
顧客に関する真のインサイトを得るためには、ビッグデータをもとにした詳細な分析データではなく、一人一人の顧客に向き合うことが必要であるという論考です。

 まず筆者は、相関分析と回帰分析などの手法を用いて大量のデータを解析することには一定の意義を認めながらも、そうした分析手法に頼るあまり企業の経営幹部たちがオフィスに引きこもり、顧客を知るという手間のかかる仕事をIT部門に任せきりにしてしまうのではないかとの懸念を示しています。

 また、企業が顧客に対して行なうアンケート調査は、「企業側が顧客の関心事だと思っていること」について尋ねるものが多く、必ずしも顧客が本当に言いたいことを引き出すようにはできていないこと、そしてその結果、顧客のニーズを映し出さないデータが集まってしまう可能性があることを指摘しています。その結果をどれだけ精緻に分析したところで、顧客に関するインサイトが得られるはずがなく、それを筆者は「精密に不正確」と表現しています。

 一人一人の顧客と向き合うと言っても、何人の顧客から話を聴けばよいのか。筆者は18〜20人で充分だとしています。それだけの人に話を聴けば、もはやそれ以上聴いても同じ話しか出てこないという「飽和」の状態に達すると言うのです。

 現にトヨタは、米国市場向けの高級車の開発を行なう際、日本のオフィスで知恵を絞って「完璧なデザイン」をひねり出そうとも既存顧客のデータをひっくり返して正解を見つけようともせず、デザイナーとマネジャーをカリフォルニアに派遣してターゲットとする顧客層(高所得層の米国人男性)を観察し、聞き取り調査を行なったといいます。それを通じて得た知識と、同社のエンジニアリング面の強みが合わさって新しい方向性が切り開かれ、誕生したのがLEXUSです。

 筆者は、「真のインサイトは、他者の視点で世界を見ることによって得られる」として顧客との対話の重要性を示唆しています。
真のインサイトを得るには、適切な問いによって顧客の声を引き出すことができなければなりません。と同時に「だれが顧客なのか」という定義が明確でなければよい製品やサービスが産まれるはずがありません。

 大きく変化する我が国の労働市場において、私たち人材紹介会社に対する社会や顧客の期待も変化していきます。人材紹介各社は、自社の顧客が誰かということを明確にした上で、「答は相手の中にある」という前提に立って自社の方向性を定めるためのインサイトを得る必要があります。

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