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人材紹介会社のSDGs

「米国のESG投資残高が半減」!?
年末に大和総研が発表したレポートによると、米国のESG投資支援団体が行なった調査で米国のESG投資残高が2020年調査の17.1兆ドルから、8.4兆ドルに半減したということです。
 レポートは、「ESG投資適正化政策の影響によって実体の疑わしいESG投資が残高にカウントされなくなった」ことが原因であると推察しており、決して投資家がサスティナビリティに対する問題意識を捨て去ったわけでも景気後退や利上げなどによるものではなさそうです。

 社会の関心が高まっていくにつれて"ESG(SDGs)ウォッシュ"と呼ばれる、自社の取り組みを実態よりも"盛って"宣伝する企業が問題視されていました。
 私たち消費者も本物を見極める確かな目を持たなければ無意識のうちにサスティナビリティの足を引っ張る行動をすることになりかねません。

 さて、私が身を置く人材紹介業界各社も積極的にSDGsへの貢献をアピールするようになっています。
 サービスによって直接的に貢献できるのは、17の目標のうち⑤ジェンダー平等、⑧働きがいも経済成長も、といったところですが、循環社会や世界中の衛生、健康、教育の増進などに貢献する企業、よりフェアなサプライチェーンの構築に努める企業に対し、それらの取組みに共鳴する優れた人材を紹介することは、産業と技術革新の基盤を創る(⑨)ことに大いに寄与します。

 私が、人材紹介事業者がSDGsに高い関心と知識を持つべきだと考える理由は次の5つです。

1)より難しい採用への貢献(取引先企業の視点)
脱炭素やそれを可視化するITなど、ESGを推進するために必要なのは先端分野のスキルや専門知識であるため、それらを有する人材はまだ市場に少ない分だけ採用は難航します。

2)サスティナビリティへの貢献機会の提供(登録人材の視点)
各社の取組みは必ずしもその全てが外部から見えるわけではなく、求人企業と求職者の間には埋めるべき"情報の非対称性"があります。より高次な欲求を満たしたいと考える優秀な人材に貢献する上でESGの視点は欠かせません。

3)より資金力のある企業へのフォーカス(ビジネスの視点)
ESG投資がさらに増加するとESGに積極的な企業に資金が集中します。多くの人材を高い報酬で雇用し、その確保のためには高額な手数料をも許容する、、まさに人材紹介会社にとっての有望顧客となるのです。

4)従業員のやりがい・家族の共感(組織拡大の視点)
比較的労働集約性の高い人材紹介会社は、成長を続けるためには人を増やし続けるほかありません。従業員がやりがいをもって働くことはもちろん、共感する仲間を増やし続ける必要があります。

5)投資家の共感(財務の視点)
組織の拡大に加え、より多くの優秀な人材を紹介 するためにはITやマーケティングに投資をすることが必要で、そのためには投資家による支えが不可欠です。

 すなわち、私たちのビジネスの持続性が問われていると言っても過言ではないほど重要なアジェンダなのであり、単なる営業テーマの一つと軽視するコンサルタントは、早晩淘汰されても不思議ではありません。

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