手づくりこしらえの記[2] 坂口恭平
これは僕の気まぐれの変遷である。
つい何でもやってみようとする。
それが僕にとっては健康法なのだ。
この思いつきの人生をとことんやってみよう。
文・イラスト さかぐち・きょうへい
1978年生まれ 。熊本出身 。作家、建築家、踊り手、歌い手、画家。
*『建築ジャーナル』2019年1月号からの転載です。レイアウトは誌面と異なります。
第二回 ガラスの器
日課をつくりだしてからというもの、体調がすこぶるいい。❶毎日夜9時に寝て、朝4時半に起きる。❷そのまま原稿を20枚(8,000字)書く。❸その後、2時間散歩する。という3つの日課を毎日続けている。この原稿を書いている今日で81日目。
躁鬱病で苦しんでいた僕は、自分が病気であることを忘れるくらいに、日課を始めてからというもの一切感情の波に翻弄されることがなくなった。これはずっと続けていこうと思う。
さらに日課に付け足して、疲れていないときは毎日、料理もするようになった。料理をするようになると、盛り付けるものを揃えたくなる、というわけで、2時間散歩している間に、いろんなお店に行っては、どんな器がいいかなと物色するようになった。
こうやって多様な刺激を脳みそに入れていくという行為が躁鬱病には(もちろんこれは僕の場合だが)効果があるようだ。充実と平穏が両立するのである。
というわけで毎日どれを買いたいかと考えながら散歩するようになった。
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しかし、そこで買っても面白くない。じゃあどうするか。そう、つ
くるのである。
それこそこの連載の真骨頂、とにかくつくる、自分でつくる、欲しいと思ったものを全て自分でつくってみる、『権力は人々を「できなく」させる』と言ったのは哲学者のドゥルーズだが、確かにそうだ。
僕たちはいつの間にか自分では何にもできなくてなんでも買うことになっている、人の言うことを聞くことにしている。それじゃあいかん! ということで僕は今日も自分でつくる。
それで今回つくろうと思ったのは、先日見かけて気になったガラスの器である。
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