BFF ベタ・フラッシュ・フォワード[1] 持田敦子 美術家【橋桁を抱く想像力】
*『建築ジャーナル』2019年1月号の転載です。
誌面デザイン 鈴木一誌デザイン/下田麻亜也
プラクティスとしての制作
持田敦子は日本画専攻の学部時代より、鑑賞者へ強く働きかけることを志向し空間介入する形式の作品を大小問わず発表している。
彼女は作品制作を指して「プラクティスベース 」❖ 1 であると語る。
表現したいこと・伝えたいことのために制作するのではなく、漠然とした予感のもとで制作がなされ、それが実際に世界とぶつけられることで起きる摩擦や溶け込みから何かを発見しようとする態度だ。
あくまで自身の発見のために制作していると彼女は語るが、物理的にも影響の大きい作品をつくることでそのプラクティスを多くの人へ開いているこれは参加型の作品を含むのはもちろんだが、受身の鑑賞体験であっても、否応なく迫ってくるような作品強度によって彼女はそのプラクティスを展開しようとしている。
これが東京で日々眺めてきた都市インフラの巨大さとどう向き合うかを考えてきた彼女なりの、公共空間への応え方なのだ。
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壁の話
彼女は巨大な壁を学部の卒業制作で発表した❖ 2。
校舎の非常階段を飲み込むように斜めにそそり立つ白いそれは一見抽象的な物体に見える。
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