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”ゴリラ”と自称はするけれど、他称はされたくない

小さい頃から活発でとにかくよく体を動かしていたと思う。

父方は生粋の体育会系で、祖父も祖母もバスケをやっていた人たち、父は幼少期から運動神経抜群で、走る系の競技会で優勝したこともあるらしい。高校大学社会人とラグビーもやっていたので、THE体育会系の家系だ。

母も運動部出身で運動神経が悪いわけではなかったそうだ。幼少期はよく球技を教えてくれた。


そんな両親を持って生まれた私は、幸いにも運動神経に恵まれて、習い事で始めた水泳でも地区の代表選手に選ばれたり、区の体育大会の1000m走で優勝したりした。

それでも、私より運動のできる子は他にもたくさんいると思っていたし、運動が特別できるという自覚はなかったように思う。


中学に上がって、「体力テスト」が実施されるようになった。

今まで自分の体力や身体能力を数値化されることなんてなかったから、中学1年生の時はテストを受けるのも楽しみだったし、それが学年で何番目なのかを知るのも楽しみだった。

結果。

握力:学年2位
反復横跳び:学年3位
上体起こし:学年3位

1学年は約250人。


中学1年生の時の衝撃は今でも忘れない。

「こんなに強い人間だったの…?」と、まるで漫画の主人公が自らの「内なる力に驚く」みたいな反応をしてしまったのを記憶している。


それからは、部活でクラリネットを吹き始め、安定した音を鳴らすために腹筋を鍛えたり、肺活量を増やすためにランニングをしたりペットボトルでスーハーして呼吸を鍛えたりするようになって、年々フィジカルが強くなっていった。


そして、高校2年生の体力テストでついに、右手握力が50kgに到達。

さらには、女子校出身者の年に数回の楽しみである「男子校の学園祭」で、知り合いが出店していた「体力テストカフェ」なるもので背筋と肺活量を測ったところ、どちらも成人男性平均値の1.5倍近い数値を叩き出し、男子たちをドン引きさせた。


こんなに強かったら、もはやゴリラじゃん…

内心そんなことを思ったりした。


女子校では、よく言われる通り「重い荷物も自分たちで運ぶ」ことが当たり前だったので、大学に入ってからも男子に頼ることなく重いものも平然と運んでいたし、実際、難なく運べていた。

ゼミで使う荷物を女子の代わりに持ってあげたり(私も女子ではある)、バイト先で重たい段ボールを平気で持ち上げたりしているうちに、一部の人から「ゴリラじゃん笑」と言われ、力持ちが発揮される場面では必ず「ゴリラ」と呼ばれるようになったのだ。


ゴリラと自覚はしていたけど!

それは相手に言っちゃダメな悪口では?!


と、当時かなり憤慨した。けれど若かった私は、そのコミュニティの輪を壊すことが怖くて「そうでしょ〜ゴリラだよ!うほ!」なんて、ちょけてふざけていたっけ。


それでも、「ゴリラ」と言われたのが何故だか悔しくて、それ以来重たいものを持つのを避けたり、挙動を女らしくしてみたりもした。



大学を出て、社会人になって、会社で重いものを運ぶ機会が久しぶりにあった。

配慮と気遣いに(私からの)定評がある職場の後輩が、私が平然と重たいものを持つ様子を見て「こんな重いの持てるんですか?!かっこいいっすね!」と言ってくれた。

重いものを持って褒められるなんて大学時代にはあり得なかったことで、うわ〜ゴリラって言われなかった〜となんだかやたらと嬉しくなってしまったのを覚えている。



確かに力持ちで、体が人よりは機敏に動く。
ゴリラみたいだな〜という自覚も、冗談半分本気半分で、ある。

でも、それは自分に対して自分が言うから成立するのであって、第三者が「ゴリラみたい」と私に向かって言うのは絶対に違う、と今でも思っている。

もちろん、中のいい友人同士で、お決まりのやり取りみたいな感じで「でた!ゴリラ!」とか言うこともある。それは私が望んでいるやり取りなので、全然気にしない。私がそのやりとりを受け入れていると言うことも言語化して友人には伝えているので問題ない。


仲間内のノリが通用しない第三者が、「◯◯みたいだね」と何かに例えて私のことを評価するのは、悪口に捉えられそうなワードではもちろんのこと、世間的に”良い”とされるものに例えられたとしても、私は好まない。

「石原さとみみたいに可愛いね」って言われたとしても、私は決して嬉しくない。(石原さとみさんのことは本当に大好きだけれど)



何かに例えるのではなく、その人の本質を捉えてコミュニケーションを取りたいし、そういう配慮のできる人間でありたいな〜と、大学時代のゴリラ呼びエピソードを思い出しては反面教師として、自戒している。


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