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麻衣とずん太の「知財コソコソ噂話」第4回(with/afterコロナ時代のロボットの知財)

麻衣: ずん太くん、コロナ禍が長期化する中、人同士の接触を避けるために、無人レジやロボットのニーズが増えているわね。

ずん太: うん。『ロボジョ!』に出てくる食材移動ロボット「ベラリオン」が、実際に世の中で活躍するようになるかもしれないね。

麻衣: 今回はロボットに関する特許権について少し深堀してみましょう。

ずん太: 特許権ねえ…。たとえば、コロナ禍の巣ごもり生活に役立つロボットで、実際に特許になっている例とかはあるのかな?

麻衣: いい質問ね。ひとつ例を挙げてみましょう。ソニーの友達ロボット「ヒコエモン」(仮称)よ。先月22日に登録されて、特許公報が今月13日に特許公報が発行されたばかりなの。

【特許番号】特許第6814089号
【登録日】令和2年12月22日
【発行日】令和3年1月13日
【発明の名称】オブジェクト制御システムおよびオブジェクト制御方法

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ずん太: これが「ヒコエモン」? まるで「くもじい」みたいだね。

麻衣: 何、それ? ソニーの特許公報には次のように書かれているわ。

本発明者はロボットをユーザの共視体験者として活用する可能性に注目した。たとえばユーザによるゲームプレイ中、ロボットがユーザの横でゲームプレイを観戦し、ユーザと一緒に喜んだり悲しんだりすることで、ユーザのロボットに対する親近感が高まり、またゲームをプレイすることへのモチベーションが向上することが期待される。またゲームに限らず、映画やテレビ番組等に関しても、ユーザはロボットと一緒に視聴することで、一人で視聴する場合と比較して、コンテンツをより楽しめることも期待される。

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ずん太: たしかに、巣ごもり生活で孤独に陥りそうな人に対して、癒しを与えてくれそうだね。でも、こんな内容で特許が取れるものなの? 特許を取るためには特許庁の審査官による審査が必要なんだよね。

麻衣: 特許を取るための要件は色々あるんだけど、ポイントになることが多いのは「進歩性」ね。進歩性は「これまで知られた発明から容易に発明されたものではないこと」を意味するわ。じつはこの出願、いったんは「進歩性なし」の拒絶理由を通知されたのよ。ユーザに対する好感度に応じてロボットの感情をコントロールする技術は以前から知られていたからね。でも、ソニーが「意見書」で次のように反論したら、「ヒコエモン」には進歩性があると判断されたのよ。

 本願発明は、ユーザに対する好感度がポジティブであれば、オブジェクトの感情をユーザの感情と共感するように決定し、ユーザに対する好感度がネガティブであれば、オブジェクトの感情をユーザの感情と共感しないように決定します。特に、ユーザに対する好感度がネガティブであるときに、オブジェクトの感情をユーザの感情と共感しないように決定することで、たとえば「ユーザは、以前は一緒に喜んでくれていたのに、今回は一緒に喜んでくれていないことに気付く。ユーザは自身のこれまでの態度を振り返り、ロボット20に冷たく接していたことで、一緒に喜んでもらえないことを認識する。ロボット20が、あえて反発する反応をすることで、ユーザがこれからロボット20に優しく接することを心がけるきっかけを与えられる」という効果を実現できます。

ずん太: なるほど。ユーザに対する好感度によって、ロボットがユーザの感情と共感したり、しなかったりするわけだね。『風の谷のナウシカ』に出てきた巨神兵はクシャナ殿下の感情と共感して、従順に言うことを聞いていたけど、「ヒコエモン」だったらクシャナ殿下の感情と共感しないで、反発するのは間違いなかっただろうね。

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麻衣: まあ、それはクシャナ殿下に対する好感度によるでしょうから、何とも言えないわ。

ずん太: ところで、ロボットって、特許権以外には、どんな知的財産権で保護されるのかな?

麻衣: そうね。市場に出す際の商品名は商標登録することで商標権で保護できるし、筐体のデザインは意匠登録することで意匠権で保護できるわ。それと、そのロボットの技術が創作性のあるコンピュータ・プログラムで実現されたものであれば、そのプログラムは著作権の保護対象となるわ。さらに、営業秘密に該当するノウハウについては不正競争防止法による保護が可能よ。

ずん太: なるほど。色々な知的財産権で保護される可能性があるということだね。それぞれの権利の関わり方がわかってきたような気がするよ。

麻衣: 徐々にマスターしていきましょう。次回は『ロボジョ!』にも登場した仮面の怪人物「黄金仮面」を題材に著作権とその保護期間についてコソコソ噂話をしてみるわね。



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